クリプトンHQM STOREに新タイトル − BDオーディオで発売された「四季」の192/24配信など

2013/07/26 ファイル・ウェブ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クリプトンは、同社が運営するハイレゾ音源配信サイト「KRIPTON HQM STORE」にて新たな2タイトルを近日中に配信開始する。

このたび配信されるのは、先日BDオーディオ(BDにハイレゾ音源を収めたもの)としてリリースされた『ヴィヴァルディ:四季』(カメラータ)と同じ音源。もうひとつは、新日本フィルなどのソリスト4名で結成された弦楽四重奏団「Virtuosi del canto」の弾くロッシーニ弦楽ソナタ全曲集。


ヴィヴァルディ:四季
/パオロ・フランチェスキーニ(ヴァイオリン独奏)、イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ 他
192kHz/24bit ¥3,500(税込)
http://www.hqm-store.com/store/item.php?album_no=HQMD-10033

今年2月にBDオーディオとして発売された『ヴィヴァルディ:四季』(関連ニュース)に収められた音源のみが配信されるかたち。本作は2012年10月にイタリア・ウンベルティーデの聖クローチェ美術館(教会)で録音されたもので、カメラータとして初の192kHz/24bit録音音源となる。プロデューサーは井阪 紘氏。

独奏ヴァイオリンを担当したパオロ・フランチェスキーニは、日本で「四季」を大ヒットさせたイ・ムジチ合奏団のリーダー ピーナ・カルミレッリの愛弟子。今回の録音にはカルミレッリが愛用していたヴァイオリンで演奏を行った。弦楽合奏はペルージャ音楽院の教授等で構成された室内オーケストラ。オルガンとチェンバロを一体化させた楽器「クラヴィオルガン」を演奏するクラウディオ・ブリツィが全体をまとめた。

録音が行われた聖クローチェ美術館

オルガンとチェンバロが一体化した楽器「クラヴィオルガン」を使用した

ヴィヴァルディの「四季」は多くの人によく知られる名曲だが、この録音がユニークなのは、鳥のさえずりや雷鳴、や鐘の音などを模した“効果音”を入れていること。「春」には鳥のさえずり(オルガンのパイプ下に水の入ったバケツを置いて表現)、「夏」には雷鳴、「秋」には猟銃の銃声(スラップスティックを使用)、「冬」には鐘の音(パイプオルガンのストップを使用)に加え、凍った氷の上を歩く様子をヴァイオリンの弦の高い位置を鋭敏に硬く弾く方法で表現したという。創意工夫に溢れた“効果音”は、決してイロモノ的なものではなく、四季という楽曲の持つ彩りをより豊かにしてくれている。

録音を行った聖クローチェ美術館は残響が長め(聴感で4秒以上)で、録音マイクの配置は試行錯誤したとのこと。マイクは基本ワインポイントで、各パートに近接マイクは置くものの、メインマイクの位相や周波数特性に影響がないよう、距離感を揃える程度の最小限のミックスを行ったのみだったという。なお、使用したマイクはショップスの「CMC-52SU」(メインマイク)2本。「ショップスのマイクはCMC-6Uが主流になっているが、5Uの方が音楽的な音が録れる」(井阪氏)そうだ。

今回使用された録音システム。メインマイク(写真左)にはショップスの「CMC-52SU」を2本使用。


演奏者はメインマイクを取り囲むように円形に並んで演奏した
カメラータ・トウキョウの中野浩明 取締役社長は「今回の録音には効果音が入っているが、これがCDだといまひとつ伝わりづらかった。今後は新録も織り交ぜつつ、月1くらいのペースでコンスタントに配信音源をリリースしていきたい」と語っていた。

カメラータ・トウキョウ 中野浩明氏

▼プロデューサー・ノートはこちら(PDF)
http://www.hqm-store.com/pdf/HQMD-10033_producer.pdf

▼レコーディング・レポートはこちら(PDF)
http://www.hqm-store.com/pdf/HQMD-10033_recording.pdf



ロッシーニ:『弦楽のためのソナタ』全集
/Virtuosi del canto(ヴィルトゥオージ・デル・カント)
(Vn:辻井淳、森園ゆり、Vc:宇田川元子、Cb:森園康一)
176.4kHz/24bit、88.2kHz/24bit ¥2,500(税込)
http://www.hqm-store.com/store/item.php?album_no=IEHQ-5001

ロッシーニ『弦楽のためのソナタ』第1番〜第6番は、ヴィオラが入らない珍しい編成の弦楽四重奏曲。演奏機会も少なく、この全集アルバムはたいへん貴重なものとのこと。すでにCDにて発売されていたものを「HQM GREEN」システム(関連ニュース)により176.4kHz/24bit、88.2kHz/24bit音源化したという。

Virtuosi del cantoのメンバーも発表会に駆けつけた。左から森園康一氏、辻井淳氏、宇田川元子氏

メンバーの辻井氏(ヴァイオリン)は「毎日食べるご飯のように、毎日でも、何度でも聴けるアルバムを作りたいと思っていた」と語る。ヴァイオリンからコントラバスまで4本の楽器で基本的な奏法をおおまかに統一したほか、使用する松ヤニやその塗り方を全員で揃えたり、楽器の調整を同じ職人に依頼。弦も全員で傾向の似たものを使ったという。

「弦と弓のいちばん最初の接触点は松ヤニなので、これをどう捉えるかは非常に重要。松ヤニや弦、楽器の調整を揃えることで、倍音が揃う。我々は弦楽器の最大の特性は“音色”だと考えているが、倍音が揃うことにより、音量をあまり上げなくても聞こえやすくなる。無理に大きな音を出そうとするのではなく、楽に良い音が出るボリュームで演奏することで、音色のコントロールが容易になる」(辻井氏)

さらに、敢えて合図を出さず、お互いの“気配”を感じてアンサンブルする方法を採った。「録音のためのセッティングはアンサンブルをする上で必ずしもやりやすいものではなかった。そのため、我々は気配を嗅ぎ分けることに力を注いだ。これは楽器に対する共通認識、倍音に対する共通の聴感覚、音楽づくりをする上での共通の価値観などがないと成立し得ないものではないかと思う」(辻井氏)

また、コントラバスの森園氏は「ヴァイオリンからチェロまでは音色が統一しやすいが、コントラバスが入ると難しくなる。それに、普通録音をする際コントラバスには専用マイクを使うことが多いが、それだと音色が変わってしまうので、全ての楽器で同じマイクを使おうということになった。音のスピードやデシベルが違うのでとても難しいことだが、エンジニアの方々が頑張ってくださった。おかげで非常に自然で、毎日聴いても体にスッと入ってくる音楽になったと思う」と語っていた。


パッケージ/配信/ハードまであらゆる環境に対応めざす(濱田社長)

本日行われた発表会にて、クリプトンの濱田社長は同社の取り組みについて説明。「我々が『KRIPTON HQM STORE』をオープンしたのは2009年だが、今やハイレゾが当たり前の世界になっていると感じている。配信に取り組むとともに、USB-DAC搭載スピーカーといったハード面のラインナップも提供。“CDライクな聴き方もできるように”と、『ブルーレイディスクオーディオ』の販売も開始した。こちらは様々なメーカーからも登場し、着々と環境が整ってきている。今後クリプトンは、新コンテンツの追加や“HQM GREEN”などの技術開発、音楽的に優れたコンテンツの用意、そしてピュアオーディオ寄りの新ハード開発などに取り組んでいく予定。ハイレゾ音源配信のためのあらゆる環境に対応を目指したい」と述べた。

クリプトン 濱田社長

また同社の渡辺氏がRIAJ調べによる近年の音楽販売形態について説明。CDは1989年をピークに右肩下がり。配信は2005年から盛り上がりを見せ、2009年がピーク。ただしこの時はモバイル向けの圧縮音源がメインだった。2012年は売上金額は落ちてきているものの、33%がインターネットで購入したハイレゾ音源に。ハイレゾ音源が占める割合は年々上がってきているとの説明を行った。

クリプトン 渡辺氏

ネットでの音楽配信が占める割合は年々上がっていることを説明した

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク