今年の「音の匠」は東京都水道局 − 地表面から漏水音を聴きわける音聴法が評価

2007/12/07
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12月6日は、トーマス・エジソンがフォノグラフを発明したのが1877年12月6日だったことにちなみ、(社)日本オーディオ協会と日本音楽スタジオ協会などが協調し「音の日」として制定している。昨日都内で行われた「音の日」行事(関連ニュース)において、第12回目となる「音の匠」顕彰式が行われた。

「音の匠」は、音を通じて文化や生活に貢献した人々を顕彰するもので「“音”そのものに対する感性のある人」(日本オーディオ協会 会長の鹿井信雄氏)を毎年選出している。本年は地表面から漏水音を検出する業績が評価され、東京都水道局が「音の匠」に選ばれた。

今回「音の匠」を受賞した代表者の面々

鹿井会長から顕彰状と盾、記念メダルが渡された

検査は騒音の少ない深夜に行われる。検出器・増幅器・ヘッドホンから成る電子式漏水発見器を用い、地表面に検出器をあて、普通に歩く速度の二倍以上の時間をかけてゆっくりと歩きながら漏水音を探し出す。検出器は自動販売機や電柱のコンデンサー、突風など漏水以外のさまざまな音も拾ってしまうため、それらの中から水の漏れる音を注意深く聞き分けなければならない。作業は非常に神経を研ぎ澄ませて行うため、1日わずか800mの範囲を検査するのが限界なのだという。

検査は騒音の少ない深夜に行われる

夜間は電子式漏水発見器を用い、漏水の大まかな場所を探る

昼間は棒状音聴器を用い、漏水場所を絞り込む

しかしこのような作業を行うことにより、1940年代には20%近かった東京都の漏水率は、2006年度には約3%にまで低減。これはロンドンやパリなど世界の主要都市の漏水率が10%前後であるのと比較すると、非常に少ない数字であることが分かる。現在東京都では漏水調査の専門職員を養成する研修所を設け、発見器を用い耳で聴くだけで漏水箇所を判別する職人技の伝承にも力を注いでいる。

顕彰式会場では実際に器械を使用してデモが行われた

棒状音聴器を使用しているところ


東京都水道局 森田健次氏
受賞者を代表して挨拶した給水部給水課技術係 係長の森田健次氏は「お話を頂いた時は『こんな当たり前の仕事を表彰していただいていいものか』という戸惑いがあったが、『“音の匠”は音を通じて暮らしに関わる人々に贈る賞であり、まさしく相応しい仕事だ』とのお言葉をいただき、有り難く頂戴することにした。水道保全は日々漏水と戦い。漏水発見作業は、漏水音を聴き分けるべく全神経を聴力に集中させるため、精神的にも肉体的にも非常にきつい仕事だ。しかし都民の暮らしに貢献できていると思うとやりがいを感じる。今回の受賞は、漏水防止に関わる全職員の業績を評価していただけたことであり、本当に嬉しく思う。これからも都民の生活のため頑張っていきたい」と述べた。

(Phile-web編集部)

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