<山之内正のIFA2007レポート(1)>ベテラン音楽ファンの耳を引きつけるヤマハの新2chシステム

2007/09/03
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今年のIFAはひとあし早い秋の訪れとともに幕を開けた。肌寒い屋外から一歩足を踏み入れると会場の熱気がありがたく感じられるほど、今年のベルリンは夏が駆け足で去ってしまった。

会場を包む熱気の原因は、各社が揃えた豊富な新製品群への注目度の高さにある。ベルリン市民はこのイベントを昔から楽しみにしていて、特に会期中の週末は家族連れで会場を訪れる姿を多く目にする。前回から開催頻度が年1回に増えたことを歓迎する声が多いのは、最新の映像機器やオーディオ装置を介して映画や音楽を存分に楽しめるIFAの面白さをよく知っているからだろう。近年はビジネス色が強まってきた面もあるが、やはり他の見本市にはない、お祭りのような雰囲気がIFAの会場には健在だ。



シルバー仕上げのS2000シリーズ
ヤマハのブースで同社が久々に取り組んだ本格オーディオのSACDプレーヤー「CD-S2000」とプリメインアンプ「A-S2000」を撮影していたら、初老の男性来場者から声をかけられた。試聴ブースで私を見かけたのだろう。「どう思うか」と訊ねてくるので、「いい音だと思う」と答えたら、安心した表情で「とても感動した」と話し始める。ヤマハが久々に取り組んだこのステレオコンポーネントの音が気に入り、試聴室で組み合わせていた「Soavo-2」も手に入れたいと語ってくれた。特にボーカルが素晴らしいという点で意見が一致したのだが、実際にこの会場で鳴っていたS2000シリーズとSoavo-2の組み合わせは、声の再現性の高さが際立っていた。

ある年齢以上のオーディオファンなら、この2機種のデザインに懐かしさを感じるはずだ。特にウッド調サイドパネルを組み合わせたシルバー仕上げのCD-S2000とA-S2000は、操作ノブの形状、ヘアライン仕上げの質感がかつてのヤマハのオーディオコンポーネントを髣髴とさせる。


フロントパネルの操作ノブの形状など、随所に往年の銘機を髣髴とさせる意匠が組み込まれている(A-S2000)

フローティング・バランスド回路を積むA-S2000の内部構造
SACDプレーヤーが1299ユーロ、アンプが1549ユーロという価格は欧州ではハイエンドのカテゴリーに入るが、仕上げはもちろん、音のクオリティの点でも、その価格に見合う価値を有していると思う。会場には透明なトップカバーを配した製品が用意されており、プレーヤー、アンプともに内部を見ることができた。CD-S2000は新開発ドライブメカやデジタルとアナログで独立した電源トランスを積み、A-S2000は独立巻線の電源トランスと大型ケミコンなど、ピュアオーディオならではのこだわりが随所に見られた。S-A2000のパワーアンプブロックは完全に左右独立構造になっている。物量を投じた贅沢さに加えて、細部の作り込みの良さや、パーツを吟味していることも伝わってきた。

ボーカルは高い音域まで音にきつさがなく、純度も非常に高い。Soavo-2のレスポンスの良さをストレートに引き出すアンプの素性の良さにも感心した。会場での限られた時間の試聴だったが、ベテランの音楽ファンの耳を引きつける良さを持っていることはたしかだ。



DSP-Z11の強固なシャーシはラーメン構造の採用に起因する
IFAのブースで初公開されたもう一つの話題作はAVアンプの新しいフラグシップ、DSP-Z11である。型名と同じく11チャンネルのアンプを内蔵する本機は、3D仕様に拡張されたシネマDSPモードで4本のプレゼンススピーカーを駆使し、高さ方向の音の広がりを実現するという。本機のデモンストレーションはその可能性を十分に伝える効果的なものだったが、それ以上に筆者が感心したのはAVアンプとしては別格といってよい音の純度の高さである。なかでもS/Nの良さと音像のフォーカス精度の高さには際立ったものがあった。強固な枠組みを組み合わせたラーメン構造の新設計シャーシが功を奏していると思われる。


(山之内正)

[IFA2007REPORT]

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