ケーブルブランド探訪記(AUDIOQUEST編その1「DBS技術」)

2003/08/15
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DBSの要となる電池パック(左)、ビル・ロウ氏(右)
●オーディオブランド探訪記は今年から日本での取り扱いが日本マランツ(株)となった米国のハイエンドブランド、AUDIOQUEST(オーディオクエスト)社のラインナップをご紹介する。同社のケーブルはこの度、DBSと呼ばれる技術を導入し、オーディオ再生における新たなステージへと向かっていくこととなった。今回の探訪記はそのDBSを搭載したラインナップを中心にご紹介していくこととする。
 
まず第1目は同技術の解説をお送りすることとする。この度、オーディオクエスト社が開発した新技術DBSとはダイエレクトリック・バイアス・システム(誘電体バイアス・システム)の略称であり、同社が特許出願中の全く新しいケーブルテクノロジーである。
 
同技術の最大のポイントについて開発者であり、同ブランドの総帥ビル・ロウ氏はこう語る。以下は同氏のコメントである。

●ビル・ロウ氏によるDBSに関する解説

ケーブルに電池を搭載!

絶縁体がケーブルのパフォーマンスに及ぼす影響については一応誰もが知っています。真空以外のどんな絶縁体も完全ではなく、「誘電体」といえます。絶縁体はすべて電界中にあれば誘電体となります。理想的で完全な絶縁体と誘電体の違いは、歪みと損失です。
「誘電体の使用」によって生じる最も大きな問題は、誘電体が安定するのに十分な電圧を十分な時間加えていない場合に起こります。電子機器やケーブルは、最大のパフォーマンスを出せるようになるまでは2週間は連続して電源を投入しておかなければならないのですが、この理由を説明するために「ブレークイン」という間違った用語がよく用いられています。 「ブレークイン」とは、正確にはモーターやスピーカー・サスペンションなどの機械的現象に用いる用語です。ケーブルやコンデンサーは「ブレークイン」しません。そうではなく、その「誘電体の形態」において誘電体物質が帯電状態に適応するのに時間がかかるということなのです。
たまにしか音楽を聴かない「頭の固い」エンジニアから、暗闇の中で聴きまくる熱狂的音楽愛好家まで、AudioQuestの特許出願中のダイエレクトリック・バイアス・システム (DBS) は、ケーブルを端末処理してから連続して、ケーブルのすべての誘電体を比較的高いDC電圧の場に置きます。非常にシンプルなこの設計では、陽極用のワイヤーをケーブルの中心に入れてあり、このワイヤーはDBS電池パックのプラス (+) 側に接続されています。このワイヤーは信号経路と独立しているので、信号と相互干渉し合うことはありません。
インターコネクト(アナログまたはデジタル)ケーブルやスピーカーケーブルでは、既存のシールドや導体の外部スパイラル部分をDBS電池パックのマイナス (-) に接続して、DBS陰極として使用します。ケーブルの種類によっては外部導電層のないものもあるので、その場合にはDBSシステムのグラウンド層として使用するためにシールドのような導体を追加します。外部導体があるケーブルでは、これらの導体がDBS陰極、および通常の機能としてのシールドまたはマイナス導体として同時に機能するので、コストの節減にもなります。電池は誘電体にDC電圧を加えているだけです。したがって、信号フローとの相互干渉は全くなく、また、信号経路にDC阻止用のコンデンサーなど余分な接続を行う必要はありません。電池(1つまたは複数)自体は電流が流れないので、保存ケースに置いてある電池と同じぐらい長持ちします。もっとも、DBSパックにはボタンとLEDがあるので、電池の状態を確認することもできます。
通常使用される電圧よりもかなり高い電圧で誘電体のバイアスを維持することにより、大きな利点が得られます。最大音量で使用のオーディオ用ケーブルやピンクノイズが常に流れているケーブルでも、完全に安定した誘電体を形成することはできません。新品の製品と使用中の製品、あるいは購入してから2週間使わなかった製品と購入直後から使った製品の、2週間後のパフォーマンスの大きな違いを体験したことがおありでしょうか?・・・想像してください。これと同じようにパフォーマンスは2倍にも3倍にも向上するのです。
この現象を説明する新しい言葉はありません。これは従来のパフォーマンス向上を超えるものです。AudioQuestの DBSケーブルを使用する機会があれば、その時の皆さんの反応は、私が最初の試作品を自分のシステムで試したときと同じものになるでしょう。「すごい!」・・・極めて効果的

8月21日発売のAA110号にて
詳細な音質レポートを掲載

さて、このDBS、具体的にどのような装備がなされているのだろうか。使用される電池は扱う信号レベルの大きさに応じて、小型12Vのものをラインケーブルで1個(12V)、スピーカーケーブルで2個(24V)搭載している。

電池の接続状態については、音楽信号が通らないセンターとドレーン(外周)のコンダクターにそれぞれ、電池+−の電極が接続される。+と−は、ショートしないため電流は流れず、12V(若しくは24Vの)電圧場のみがケーブル中に存在することになる。従って、電池の寿命は、「自然放電」による寿命と同等の長さであると考えていい。
DBSシステムのオン・オフは、電池ケースより、プラグを抜き差しすることで可能である。絶縁体(誘電体)のコンディションは緩やかに変化させるため、「オン・オフ」による急速・急激な変化は発生しないが、高度にチューニングされたシステムでは、「オン・オフ」による変化が、はっきり確認できる。また、DBSシステムのラインナップは、スピーカーケーブル、ラインケーブルに加え、映像ケーブルにも対応がなされる予定となっている。

さて、肝心の音質であるが、8月21日発売の『オーディオアクセサリー110号』にて井上千岳氏、林正儀氏、福田雅光氏による詳細なレポートを掲載している。ぜひともご参照いただきたい。次回からはDBS搭載の新ラインナップをご紹介していく。ぜひともお楽しみいただきたい。(季刊・オーディオアクセサリー編集部)

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