音質を優先し、さらなるブラッシュアップを図った意欲作
DAPでも音に妥協したくないというユーザーから安定した支持を得ているケンウッドのHDD搭載DAPシリーズの最新モデル。DAPの新製品というと動画再生などの付加機能が売りになっていることが多いが、さすがと言うか当然と言うか、本機の場合はさらなる音質向上が売り。前機種「HD30GA9」から、大きなところではデジタルアンプ「Clear
Digital Amp」と帯域補間技術「Supreme」がそれぞれ「EX」バージョンに強化されている。
「Clear Digital Amp EX」は従来1チップ構成となっていたデジタルアンプ部のプリ段/パワー段を独立させたもの。それぞれの仕様が高められ、さらに低ノイズ・低歪率となった。
「Supreme EX」は従来22kHzまでが補間の適用範囲だったところを44.1kHzにまで拡大。これによって、そもそもはMP3/WMAなどの圧縮で失われた高域成分を補間するものだったはずが、WAVやKenwood
LosslessといったCDクオリティのファイルの音質をCD以上の音質にまで持ち上げるというところにまで発展している。
その他、非磁性体ステンレス合金によるfホールグランドシャーシに代表される、構造やパーツレベルでの音質対策は従来機からそのまま引き継ぐ。
高域を補間するSupremeが搭載されていることもあり高域再現性がポイントかと思っていたのだが、実際聴いてインパクトが強かったのは低域だ。力感や密度感は強いが人工的なブースト感はない。ウッドベースの生々しい重さは、前機種HD30GA9も含めて既存DAPからは聴かされたことのないもの。明らかなレベルアップが実現されている。中域から高域にかけての滑らかさを伴うクリアさも文句なし。クリアではあるがクールな音色ではなく、コクのある暖色系だ。
注目のSupreme EXだが、オンとオフでの変化は明確というほどではない。CDに記録されていない音をあまり派手に作り出されても違和感があるだろうから、このさじ加減でよいだろう。騒音下の屋外では効果を聴き取れないだろうからオフにして連続再生時間を延ばし、静かな環境で聴くときにはオンにするなど、使い分けるのがよさそうだ。
さて、実は本機は従来機より連続再生時間が短くなっている。アンプをワンチップからセパレート構成に変更したことが大きな要因と思われる。「何よりも音質を優先する」という姿勢が表れているところであり、そういった姿勢に共感できるユーザーに向けた製品ということであろう。