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プロダクトレビュー

JVC Accessory
新設計ウッドドームユニットを搭載したハイクラスモデル
インナーイヤーヘッドホン
HA-FX700
¥OPEN(予想実売価格30,000円前後)
TEXT.高橋敦
デュアルハイブリッド構造の採用によりサウンドがレベルアップした
2008年初頭に発売されたHP-FX500のインパクトは強かった。木製振動板のウッドドームユニットという最大の特徴。そして筐体にも木材を採用し、その質感や色合いから、カナル型イヤホンのファンの間では「どんぐり」の愛称で親しまれている。要所への木材の採用は、その「音の伝達速度が速く、適度な振動吸収性を持ち、響きは自然で美しい」という音響特性のためだ。そして「どんぐり」は実際にそのような音を生み出し、音質面でも高い評価を得ている。

その人気モデルの上位機として追加されたのがこの「HA-FX700」だ。ウッドドームユニット&ウッドハウジングを踏襲した上で新技術も投入し、さらなる高音質化を達成している。

大きなポイントはハイブリッド構造の進化である。ウッドドームユニットの背面に比重の大きなブラスリングを配置することで、ユニットの振動ロスを低減するのがこの「ハイブリッド構造」だ。本機ではブラスリングをユニットの前面にも配置した「デュアルハイブリッド構造」に進化させている。これにより振動ロスの低減に加えて、振動板の歪みを抑えて振幅を安定化させる効果がもたらされるとのことだ。その進化に合わせて、改めて全体の綿密なチューニングが行われたであろうことも想像できる。

ヘルゲ・リエン・トリオ冒頭のドラムスのソロではタムやバスドラムの響きが、驚くほど太く深く豊か。しかもその響きはぼんやりとしたものではなく、クリア。一方でクリアなのだが、過度に先鋭的とは感じさせない、自然さがある。そして、それに続いて入ってくるウッドベースときたら、楽器の大柄さとその木材の感触を伝えてくる、素晴らしい感触だ。ゴリゴリのアタック感は押し出してこないが、“ブォン”と唸る胴の響きの迫真さにはもう、感嘆するしかない。

ピアノやシンバルは、硬質さ鋭さは弱まるが、音色の芯の粘りや表面の艶やかさを高め、にんまりとさせてくれる。俯瞰すると、音場全体を包み込む空気感の存在に気がつく。そういえば音場の濃さ、一体感も抜群だ。

矢野顕子の「すばらしい日々」は、さらに見事だ。楽器の再現力は冷静に見ても、僕の好みを加味しても、完璧に近い。特にアコギはエッジ感を軽く出しつつ優しく弾け、演奏者の素晴らしいピッキングを想像させる。歌声は、安っぽい言葉を使ってしまうが“完璧”だ。声質や歌い回しの柔らかさと、凛とした強さも感じさせる。他にも聴いてみたが、女性ボーカルの描写はいずれもついつい完璧と言ってしまう高みに達している。

ある程度以上の価格帯のイヤホンはモニター志向の製品が多い。それとは異なる方向性、しなやかな音楽性を備える本機は独自のポジションを確立し、またHP-FX500に続いて各所で高評価を得るのではないだろうか。
前モデルFX500との比較で約2倍の表面積としたウッドドーム振動板。物性の良さを考慮して「樺材」を採用している

【SPEC】●型式:密閉ダイナミック型 ●再生周波数帯域:6Hz〜26kHz ●出力音圧レベル:104dB/1mW ●インピーダンス:16Ω ●最大許容入力:200mW(IEC) ●コード:0.8m(Y型)+延長0.7m ●質量(コード含まず):9.6g