作り手の意図を余さず伝えきることを実現してこそパイオニアである
パイオニアマーケティング(株)
代表取締役社長
校條亮治氏
Ryoji Menjou

プラズマテレビ
“PUREVISION”ADVANCED SERIES
PDP-A507HX
PDP-A427HX
※写真はPDP-A507HX


「コンテンツの作者の意図を伝えきれなければ、商品を出す意味がない」とのスタンスで、こだわりぬいた商品を提案し続けるパイオニア。圧倒的な映像再生能力を誇るプラズマディスプレイ PDP-5000EX を皮切りに、価値創造を推進する同社の思いが結実した新たなる商品が、ビジュアルグランプリ 2007 サマーにおいて数々の受賞を果たした。商品、そして販売のチャネル展開においても新たなる一歩を踏み出したパイオニアの意気込みを伺った。

インタビュアー:音元出版社長 和田光征


―― まずは、金賞受賞おめでとうございます

校條 今回金賞をいただきましたことには、大変勇気づけられました。

アドバンスモデルは、ここから全く別の世界をつくる意図でやってきました。私どもは、いわゆる通常のテレビではない世界をつくろうと当初プラズマを発売して、大型化、フラットディスプレイ化と世に先駆けた商品を提案してきました。これが消費者の皆様に認知され、大手のメーカーさんが参入され、我々が予測した以上に業界進度が加速しました。しかしその後は、本来パイオニアがやるべきところが足踏み状態だったと思います。私どもの考えた時間軸と世の中の時間軸がマッチせず、価格下落の波にのまれたということです。

今回金賞をいただいたプラズマテレビのアドバンスモデルは、新しい世界をつくるためのチャレンジでした。アメリカとヨーロッパで当月から順次発売を開始する第8世代に対して、国内は違う角度で、リソースを徹底的に見直しました。パネルの素材は第七世代のものを踏襲していますが、ダイレクトカラーフィルターは、第8世代のものと基本的に同じ設計をした、新素材のものを使っております。それに各回路をファインチューニングして出しました。

パネルに「新ダイレクトフィルター」を搭載し、明るい環境下でも高画質な映像を楽しむことができる。フルデジタル高画質回路 “新 P.U.R.E. Drive II ”を前モデルに引き続き採用、パネルの持つ高い発光効率、色の再現能力を、余すところなく引き出す 50V 型プラズマディスプレイとして初めて 1,920×1,080 のフル HD 解像度を実現。圧倒的な再生能力を誇るプラズマモニター「PDP-5000EX」

アドバンスモデルは、テレビを情報発信源としてながら的に見るのでなく、もっとポジティブにアクティブに楽しみたいお客様に向け、新しい世界観、生活感を提案するものです。 BDのソフトや、さらに品位の高い放送波といった新しいソースをいかに的確に映し出すか。それは画がきれいというところからもう一歩前へ出て、作り手がどういう意図でそのコンテンツをつくったかを追求することです。それを表現できるようなものでないと、新しい世界を提案できません。

アドバンスの狙いはそこです。スペック的ではない、トータルな視点。作者や演技者、あるものの質感がそのまま伝わるもの。それが私どもの基本的なスタンスです。そこにパイオニアとして次のステップを持っていきたいのです。

こういうことに先鞭をつけたのは 5000EX で、これはややもするとスペックのところだけを論じられがちな商品ですが、この画はきわめてナチュラルで、作者の意図が伝わるところまで追求したものです。我々としては、スペックでは追求できないものを表現することで AVの世界が拡がると思いますし、それがパイオニアの役割だと思っております。そう言う意味でも、今回の受賞は非常に嬉しいですね。

――  そしていよいよピュアオーディオに着手され、 TADやS-3EX といったすばらしいスピーカーがビジュアルグランプリを受賞しています。

校條 私どもは 2チャンネルだけでなくAVで、ポジティブにアクティブにビジュアルを十分表現できるような「A(オーディオ)」の世界があっていいと思っています。VSAのアンプをはじめ、我々がこれから提唱しようとしているサラウンドシステムもご評価いただき、心強い限りです。

私どもが提案していくのは、技術をベースにした商品を通じ、どんな新しい価値を世に先駆けて表現するのかということなのです。それがパイオニアの仕事であろうと思います。だからテレビにあってテレビにあらず、 2チャンネルだけでない AVの音場空間、そう言う世界をつくっていきたいと思っています。まさに私どもが狙っているところを的確に評価していただいたという気持ちです。

TAD Reference One S-3EX

ver.1.3aのHDMI端子を搭載、次世代のデコーダーを搭載し、各音声フォーマットのビットストリーム入力に対応するAVアンプ


―― 
また今回は、御社の BD プレーヤー BDP-LX70 が批評家大賞を受賞しました。これは大変大きな意味を持っています。

校條 BDの商品化については時間をかけました。しかしそれもやはり、作者の意図を本当に伝えきる機器になり得るのかというところを追求したからです。もちろん次はフォーマット競争もありますから、さらに進化させなくてはなりません。

我々が全社で目指しているのは、もう一度原点に帰ろうということです。原点とは、何度も言いましたように、コンテンツの作者の意図が本当に伝え切れるのかというところです。作者の意図を伝えきったときに、新しい世界をお客様にお届けできなければ何の意味もありません。 BDレコーダーについては、まだ商品発表の具体的な予定はありませんが、時期を見て検討して参ります。

――  今回の BD プレーヤーは、暗い所の表現力も素晴らしいですね。

BDP-LX70

校條 階調度というものは、本来無限でなければいけません。アナログであれば無限であるものを、デジタル信号になったばかりに階調「度」となってしまうわけです。

空の色には自然のグラデーションがあるだけであって「度」があるわけではありません。 100%自然に達するのは不可能なデジタルという手段を使って我々がやる場合、まず作者の意図がどこにあるのか、それを表現することに徹底的にこだわろうと。そうなると、基本的にすべて人間の目が見たもの、アナログで見たものが、自然なものとして表現できるところに必然的につながる。それが我々のこだわりです。

そんなことで我々も、技術陣でようやく、この作品の作者の意図は何かということを論議できるようになりました。技術陣はどうしてもテクノロジーやスペック、測定データを求めるようになってしまいます。でも最後はそうでないのです。作者の意図、それは絶対的なものであり、そこを理解しないでどうやってお客様に伝えることができるのかと。もともとパイオニアとはそういう企業だったのです。ようやくそこに戻ろうというところにきたのです。

TADのスピーカーについてもそうです。TADのリファレンスというのは、電源や接続するプレーヤーといった要素ひとつで音が変わります。それは、スピーカーに色づけをしていないからです。

本来、作者の意図を限りなく表現するには、スピーカーのところで音の変化があってはならないのです。リファレンスとして、入ってきた信号を 100%に近い状態でアナログの音に変える。そうでなければスピーカーの命はなくなってしまいます。スピーカーによって特色があるというのも、楽しみ方としてあると思います。しかし私どもの姿勢は演じ手の意図をどこまで伝えきるかというところですから、変化してはおかしいということになります。オーディオの演じ手といえば演奏家だけでなく、録音エンジニアがいたり、ディレクターがいたり、それぞれ演奏家や演奏に対して聞かせたいものがあるのです。それを徹底的にこだわって出したいと思います。

――  審査会でも、作者の意図を伝えきるというところ、そこがあらためて評価されていました。

校條
 このように評価していただいて、あとはどうやってそれをお客様に伝えるかというところです。商品については今申し上げたとおりですが、問題はそれを市場に間違いなく伝えられるのか、私どもの思いが AV市場の再活性化につながるのか、そしてそれが本当にお客様のためになるのかということです。

昨年から私自身、量販店の経営トップの方々とお会いして、いろいろとお話をさせていただきました。今店頭では商品をたくさん並べていただいており、あらゆる商品を比較することができて素晴らしいことだと思います。しかし問題があるとすると、本当にその状態で、コンテンツの作者の意図をお客様に伝え切るような売り方、提案の仕方になっているのかということです。それを私は、問題点として投げかけてきました。

そういうことが確立されていないために、結果的に価格訴求が中心になってくるわけです。価格だけがクローズアップされてしまって、コンテンツの作者の意図をお伝えすることができない、またメーカーとしてもっと違うところ、クローズアップしてほしいところを伝えきれないとすると、何のために我々は機器をつくっているのか、新しい提案をしているのかということになります。

今回のプラズマテレビ、アドバンスモデルから、全国の販売店様にご相談させていただいた結果、お取り扱いいただくお店の数を絞り込むことになりました。なぜかといいますと、私どもの意図しない、価値提案ができていない現状では、消費者の皆様の意に沿わないお買い物をさせていることになるからです。商品が本来持っている価値を十分ご理解いただけないまま、購入を働きかけているに過ぎない。これが AV市場の健全な活性化につながるかというと私は違うと思っています。これは、パイオニアらしいビジネスモデルを提起したということです。

こんな時代にこうしたお話をするのは、国内営業の責任者として二律相反するところはもちろんあります。しかしこういう姿勢は、必ずすべてのステークホルダーの満足になるというのが私の信念です。デジタル家電業界の中で、今多くのメーカーが 1番手以外では生き残れないというような状態にいますが、それはまったく違うと思います。いろいろな価値を提案する企業があってこそ、本来の資本主義のあるべき姿ではないでしょうか。価値の提案というのがなければ、消費者のためにならない、株主やステークホルダーのためにならないというところが私の真意です。

――  パイオニアというブランドの強さを、あらためて感じられたのではないですか。

校條 今回こういった話をさせていただき、有り難いことですがかなり多くの方にご賛同いただきました。逆に「やっと気づかれましたか」という言葉もいただいたほどです。そして今回のアドバンスモデルから、店頭のお客様に対する提案の仕方として、単なるテレビではなく作者の意図をきちんと表現できる体感の場所を目指したパイオニアのコーナーをご提案しました。

今回たくさんのご賛同をいただけたのは、パイオニアのブランドの強さというか、パイオニアはそういう会社だと見ていただいたからかもしれません。また新しい流通形態として、次へステップアップするためのキーととっていただいたこともあるかもしれません。お客様や諸先輩によってつくられたパイオニアというブランドは、まだまだ必要とされ、認知されていると思いました。

今回は大きな方向転換をしましたが、当然のことながら私どもの目的はお店を絞るということではなく、価値をお伝えするためのご提案をするということです。次のステップでもう一段、年末に向けてお客様にも明確にわかるようなかたちにしていきたいと思っています。

また流通さんにはいろいろな形態があって、たとえば非家電店によるAV市場の拡大も有り得ると思っています。家ですばらしい AVが聴きたいといったときのさまざまな問題について、ハウスメーカーさんと一緒に話し合いをさせていただいているところです。いろいろなところで事業の業際の壁が低くなり、さまざまな業態が重なり合ってくる時代に来ていると思います。

販売店政策については、既存のチャネル政策では対応しきれないところにきています。お客様の志向はどこにあるかということをきちんと踏まえて、合意の上で進めていくのが必要だと思います。 AV専門を生業とする方々といかにパートナーシップを構築していくかということです。メーカーのエゴをチャネルに押しつけては、市場の活性化やお客様のために、何もならないというのが私のスタンスです。

そうできたのも、メーカーとしてのコンセプトを明快にしたことと、それをベースに世に問う商品がたくさんの方々から評価いただいたからこそで、それが心強いのです。商品に対して賞をいただいたのは大変嬉しいですが、それ以上にパイオニアの姿勢に対して着目いただけたとしたら、この上ない嬉しさです。このことは、日本のAV市場の発展や、お客様のベネフィットに絶対叶うはずだと思います。

――  今回は素晴らしいお話を伺うことができました。今後も期待しております。ありがとうございました。

校條亮治氏 プロフィール

1947年11月22日生まれ。岐阜県出身。 66年パイオニア(株)入社後、パイオニア労働組合中央執行委員長(専従)兼 パイオニア関連労働組合協議会議長、パイオニア(株)CS経営推進室長を経て04年6月パイオニア(株)執行役員CS経営推進室室長に。05年7月パイオニアマーケティング(株)代表取締役社長に就任、パイオニアの原点に立ち返り改革を推進。趣味は、旅行、音楽、歴史。

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