お客様の使い勝手を徹底追求
業界に一石を投じられる商品を作る
松下電器産業(株)
パナソニックマーケティング本部本部長 西口史郎氏

プラズマテレビ
VIERA PZ700シリーズ
TH-50PZ700SK
TH-50PZ700
TH-42PZ700SK
TH-42PZ700
※写真はTH-42PZ700SK


プラズマテレビ初の42V型フルハイビジョンモデルの商品化で、栄えある特別金賞に輝いたPZ700シリーズ。さらに、液晶テレビの動画性能を大幅に高めたLX75シリーズ、そしてSDビデオカメラとして初めてフルハイビジョン化を果たしたHDC-SD3も金賞を受賞。ビエラを中心とした積極果敢な戦略で、快走し続けるパナソニックマーケティング本部の本部長として、同ブランドの指揮をとる西口氏に、受賞の感想とヒット作の連打を続けるポイントを聞いた。

インタビュアー:音元出版社長 和田光征

世界で初めて42V型フルハイビジョンプラズマパネルを搭載した「VIERA」PZ700シリーズ。写真は世界初、42V型のフルハイビジョンプラズマモデル「TH-42PZ700SK」
―― 最初に、特別金賞に輝いたプラズマテレビPZ700シリーズの受賞の感想からお聞かせください。

西口 プラズマテレビは松下電器にとっての最重点プロジェクトです。さらに大きく言えば、プラズマテレビ事業は、松下電器だけでなく日本が引っ張っていかなければいけない分野です。そのためには、まず商品が評価されないと絵に描いた餅に終わってしまいます。そこで当社では、商品力の向上に徹底的に取り組んできました。

今回特別金賞をいただいたPZ700シリーズは、42インチも含めてフルHDを楽しんでいただこうということで気合を入れて作った商品です。それをこのような形でご評価いただくことができて、本当にありがたいと思っています。

―― 薄型テレビの登場によって高まったテレビの付加価値が、大画面化とHD化の進展でさらに高まってきています。

西口 日本市場は海外に比べて画面の大型化が少し遅れていましたが、今年は37V型から42V型へ、また42V型から50V型へと大型化が進んでいます。

HD化による高画質化も、テレビの高付加価値化に大きく貢献しています。従来のアナログ放送に比べて、格段にきれいな地上デジタル放送の広がりと、画質の差がはっきり表れる大画面化の進展によって、テレビの画質に対するお客様の要望が強まってきています。

―― PZ700シリーズは、他社に先駆けて42V型のプラズマテレビでフルハイビジョン化を実現したことが、高く評価されました。

西口 テレビに繋がる商品がどんどん増えてきています。しかもそれらがどんどん高画質化してきています。当社では42V型以上をリビングのテレビの標準サイズにしたい、そして、そのテレビを中心に様々な周辺商品とリンクさせていきたいというストーリーを進めてきました。

その意味で、今回のフルHD化は当初の予定通りです。プラズマ陣営の他社さんも42V型のフルHD化に取り組まれていると思いますが、その中でたまたま私たちが初めてだったということだと思います。

―― PZ700シリーズではガラスの反射光を抑える工夫をされています。

西口 パナソニックではマーケットインの思想で商品企画をしています。反射を抑えるというテーマも従来商品のいろいろな課題を市場からお聞きする中で出てきたものです。

店頭だけでなく一般の家庭でも、日本人は欧米諸国に比べて明るい環境を好まれます。これは日本市場の固有の環境です。

プラズマ事業をグローバルに見た場合に、それぞれの市場によって明かりの環境が違うので、市場からの反応も異なります。例えば、米国では間接照明を中心にした非常に暗い室内で食事をしたりテレビを見たりしているので、テレビの画面の反射が問題になることはありません。

ところが日本では明るい照明のもとで見られる場合が多いので、反射を抑えて欲しいという要望がありました。そこでPZ700シリーズではフィルターを開発して、市場からの要望に応えました。

「Wスピード」搭載により、全方向に動く映像に動画ボケが少ない映像を実現した液晶テレビ「VIERA」LX75シリーズ。写真は32V型の「TH-32LX75S」

―― プラズマテレビに加えて液晶テレビのLX75シリーズも金賞を受賞しました。

西口 私はつい最近まで液晶テレビ事業を担当していましたが、それ以前はテレビ全体の商品企画を担当していました。その時に薄型テレビのディバイス戦略をどうするかということを決めるに当たって、テレビにとって大事な性能は何かを徹底的に検討しました。

テレビでは動画のシーンがほとんどです。ですから動きに強いということは、絶対的に必要な要素です。そこで大型はプラズマでいくことにしました。一方で、32インチ以下の小型では、コスト力も含めて総合的に判断して液晶でと、プラズマと液晶を使い分けることにしました。

―― その時に液晶の強みと弱みを十分検討した結果が、現在の商品に活かされているわけですね。

西口 そうです。当社の液晶テレビは、従来から倍速の技術やIPS方式などに高い評価をいただいてきました。倍速については液晶テレビでも動画に強いものができないかということで、当初から技術開発を進めてきました。難点はコストでした。そこでコストダウンの努力を積み重ねて、まずは90Hzをやり、そして今回、120Hzにしました。

商品化にあたっては120Hz駆動や倍速という言葉だけにとらわれてはいけません。単に横に流したテロップがきれいに見えるということだけでは不十分だからです。実際の映像は縦にも横にも斜めにも動きます。そこで、今回のLX75シリーズでは、あらゆる方向に対応できるような商品に仕上げました。

―― パナソニックはデジタルディバイドの解消とイージーネットワークの実現に意欲的に取り組んできました。今回、金賞を受賞したフルハイビジョンビデオカメラHDC-SD3でも、使いやすさへのこだわりが強く表れているように思います。

西口 当社ではどうすればお客様にとって使い勝手が一番良くなるかという発想で、商品作りを進めています。ハイビジョンビデオカメラでは、高画質に加えて、小さくて軽く、しかも立ち上がりも早いということが求められます。圧倒的に小さく、しかもメカを必要としないSDカードは、メディアとして最も優れています。

ビデオカメラで撮ったSDをテレビに差し込むだけで、簡単に楽しむことができます。SDカードはいまや完全にデファクト化しています。おかげさまで販売も好調です。ハイビジョンのSDカードのビデオカメラ単体としての魅力に加えて、テレビに簡単に繋がるということにお客様からの支持をいただいています。

当社のテレビではSDスロットを装備してきました。SDカードでの動画再生機能を搭載したモデルを増やしていきたいと思っています。

1920×1080画素のフルHD撮影が可能なSDメモリーカードムービー デザインと質感にこだわったFXシリーズ最上位機種。世界で初めて1,220万画素CCDを搭載

―― 昨年発売されたブルーレイディスク(BD)レコーダーのBW200がロングラン賞を受賞しました。BD市場についてどのように見ていますか。

西口 BDをどう普及させるか、業界全体にとって非常に大きなテーマです。DVD市場は順調に成長しています。地デジチューナーの内蔵で、DVDの世界がさらに進化しました。その次のステップはBDということになりますが、そこへのトランジッションをどのようなスピードと形で導いていくのかがお客様にとっていちばんいいかを内部で検討しています。

BDを普及させるためには、ソフトとの関係もあります。価格も大きなポイントです。BDについては最重要検討項目のひとつです。なるべく早く、BDの高画質を多くの人に楽しんでもらいたいと思っていますので、ご期待ください。

―― 大画面化と地上デジタル放送の普及に伴って、お客様の音に対する興味が高まっています。

西口 今回のVGPでホームシアター大賞をいただいた3.1chラックシアターのSC-HTR300と200は、市場でも当初の予想した以上の反響をいただいています。大画面になって画質も良くなると、次は、いい音に対する欲求が出てきます。簡単な操作でそれを実現したのが、SC-HTR300と200です。新たな商品カテゴリーとして、ぜひこの市場を大きく育てていきたいと思います。

―― 最近のパナソニックの戦略を見ていると、お客様へのきめ細かい対応や、一夜城作戦から始まった世界同時立上げなど、経営のスタイルが以前と大きく変わってきたように思われます。

西口 国内で一夜城作戦と呼んでいますが、パナソニックでは基本的に新製品の世界同時立上げを展開しています。多くの機種を世界で同時に立ち上げるためには、物作り側の仕組みや態勢をそれに耐えられるように変えていくことが必要です。

品質問題が発生すると、それも世界同時垂直立上げしてしまうことになります。そうならないようにするのに4〜5年かかりましたが、その過程で物作り側の経営改革も合わせて進めてきました。単なるマーケティング改革ということではなくて、メーカーとしての全体の改革にまでつなげてきたということです。

―― 社内全体がそれを当たり前に考えるようになってきたという点がすごいですね。

西口 5月1日にあるモデルを世界で同時に発表するというゴールを合わせたら、何があってもそれは変えられません。そこでは、失敗できないことが当たり前という感覚で全員が取り組まないとできません。万が一何かあっても絶対にバックアップできるような態勢にしておくことが必要です。相撲で言うなら、2枚腰、3枚腰という感じです。

全世界で同時に展示・販売するために必要なトラックの準備など、物流だけでも大変です。これはまさに企業の体力そのものです。一朝一夕にできるものではありません。毎年、毎年、積み上げてきて、ようやく足腰に力がついてきたという感じです。

―― 初めて一夜城作戦を展開した2003年と比較して、商品が格段に増えているので、さらに大変なことですね。

西口 そのとおりです。経営的に言うと、フィックスされたターゲットに向けて、それぞれの部門が事前に管理をしていくための仕組み作りということになります。これが新たな企業風土作りに役立って、経営改革に繋がっているように思います。

すべての起点になるのは商品企画です。そこで、モノ作り側はどういう商品を作るかイメージし、マーケティング側は売り方を思い描きながら商品の企画に入ります。先ほど物流の話をしましたが、販売台数を増やすにはどんな準備が必要か、一斉に展示するためにはどうしたらいいかなど、かなり前もってそれぞれの部署で準備がなされるところまで、ようやく来たように思います。

■妥協せずに業界に一石を投じられる商品作りを展開

―― 商品を企画する段階から、導入や販売にいたるまでのすべてのプロセスを考えていこうということですね。

西口 どのような商品を作るかを考える時に、妥協をしないで、業界に一石を投じられるようなポイントを持った商品になっているかどうかということを、いろいろな部門の様々な階層の人が吟味した上で、商品化を決定します。商品企画を決めるプロセスの中できつめに議論しながら決めていくというやり方をとっていますので、開発陣のハードルもかなり高くなったと思います。

―― 来年は北京オリンピックがあります。今回、VGPを受賞された商品には、そこに向けての前哨戦の始まりを感じさせられます。

西口 非常に期待しています。間違いなくAVの需要は伸びます。日本の場合は、2011年に地上アナログ放送が停波されるということもあります。薄型テレビを中心としたデジタルAV機器の普及が急速に進んでいる中で、さらにこれらの相乗効果が現れると思います。

―― 今後の展開がますます楽しみですね。

西口 私たちパナソニックだけでなく、世界の電機業界を引っ張っているのは間違いなく日本です。その背景にあるのは、日本のお客様の目が肥えていることです。その日本のお客様にわれわれ日本のメーカーが鍛えてもらっています。

日本で商品を鍛え、それを海外に広げていく。商品とマーケティングの施策のパッケージを日本で例を作って、それをグローバルに広げていくということが、当社も含めた日本メーカーにとって非常に重要です。日本メーカー、日本市場のお客様、それから出版界の方も含めて、AV関係に関わっている方は世界を引っ張っていく責任を持っています。

お客様からお聞きする様々な要望やわれわれが思いつくものをビジネスユニットにぶつけて、ビジネスユニットと一緒になってもっともっとお客様に喜ばれる商品を送り出していきたいと考えています。

―― 本日は誠にありがとうございました。


西口史郎氏 プロフィール

1957年1月6日生まれ。三重県出身。1980年4月 一橋大学商学部卒。昭和55年松下電器産業(株)入社。その後アメリカ松下出向、テレビ事業部国際部部長、テレビ事業部商品企画部部長、LCDテレビビジネスユニット長を経て、今年4月より、パナソニックマーケティング本部本部長に就任。趣味はハイキング。


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