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いい環境でいい音を楽しむ喜び

ASKA、渾身のニューアルバム『Breath of Bless』を語る

2020/03/06 山本 昇
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ASKAのニューアルバム『Breath of Bless』が、本日e-onkyo musicにて先行発売された。シングル「歌になりたい/Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ〜」などを含む全15曲を、96kHz/24bitのハイレゾフォーマットと、44.1kHz/16bitのCDクオリティで同時配信している。

『Breath of Bless』/ASKA

昨年3月から8月まで、月1回のペースで「ハイレゾシングル」をリリースするなど、高い品質でリスナーに音楽を届けることにこだわり続けるASKA。歌詞の世界観も含め、ASKAの音楽が出来上がるまでの背景を語っていただいた。

【Breath of Bless アルバム詳細】
発売日:2020年3月20日(金) (本日3月6日よりデジタル先行配信)
価格:4,000円(税抜)
レーベル:DADA label
収録曲目:1.憲兵も王様も居ない城 2.修羅を行く 3.どうしたの? 4.未来の人よ 5.忘れ物はあったかい 6.百花繚乱 7.イイ天気 8.虹の花 9.じゃんがじゃんがりん 10.歌になりたい 11.消えても忘れられても 12.青い海になる 13.星は何でも知っている 14.We Love Music 15.Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ



■アルバムはあえてノーコンセプト

−−このところの着実なリリースに、ASKAさんの旺盛な創作意欲を感じます。

ASKA そうですね。曲はいくらでもできるという気持ちです。時間があればあるだけ、楽曲制作を続けていられます。

−−そうした気持ちや体力を維持するために心掛けていることはありますか。昔は剣道をやっていらっしゃいましたよね。

ASKA 剣道はまた再開しましてね。ライブの前に稽古に行くと、周りからは心配されますが、“体幹” が鍛えられるので身体のウォーミングアップにもなるんです。

−−では早速、ニューアルバムについて伺います。フォーク、ポップス、パワーロック、エレクトロニカ、そしてクラシックまで、実に多彩なバリエーションを持つ『Breath of Bless』は、現代の生き辛さや未来への不安感といった状況設定も印象的ですが、その一方、優しげな感触のノスタルジーも用意されているようで……。曲それぞれが一遍の映画を思わせるようなメッセージを持ったアルバムと感じました。全体を貫くテーマやアルバムとしてのコンセプトについて、作者としてのお考えがありましたらお聞かせください。

ASKA アルバムについて、僕にはテーマもコンセプトもないんですよ。その昔、アナログレコードの時代に「ジャケ買い」という言葉をよく耳にしていました。ジャケットに釣られてアルバムを買ってみて、その1枚の中に1〜2曲でもいいと思える曲があれば「当たり」だと。僕はこの感覚に当時から否定的でした。作り手として、例えば10曲の中でいい曲が1-2曲しかなくて「当たり」と思われるのは情けない。本来は10曲全部がいいと感じてもらわないと気が済まないはずでしょう。そこで僕はある時期から、アルバムとしてのテーマは設定していません。ただ、聴いてもらった楽曲全部が「いいね」って言われるものであってほしい。そのためだけにアルバムを作っています。この方針はこれからもずっと変わらないと思います。

−−丹精込めて作ったシングルの集合体がアルバムだということですね。

ASKA そのつもりです。僕は自分の持ち味はバリエーションだと思っていますから。

■ファンとの幸せなキャッチボール

−−『Breath of Bless』には、e-onkyo musicで2018年の3月から8月にかけて月代わりにリリースされた6曲(「虹の花」「未来の人よ」「修羅を行く」「イイ天気」「憲兵も王様も居ない城」「星は何でも知っている」)が収録されています。ハイレゾでのシングルリリースという発表の仕方には、どんな手応えがありましたか。

ASKA 昔は作品を世に出しても、フィードバックに時間がかかりましたよね。聴いてくれた方からいただくお手紙だったり、ラジオのパーソナリティのコメントだったり。しかもパーソナリティの方たちはなかなか本心を語らないから、その心の内を読む必要があったり(笑)。でも今は、例えば午後11時に配信を開始すると、その10分後にはコメントが返ってきます。僕は音楽のプロモーションも、旧態依然としたやり方を続けるのは無意味だと感じていて、このようにすぐにリアクションが返ってくるようなネットの仕組みはもっと活用すべきだと思います。

e-onkyo musicでの一昨年の連続リリースも、曲ごとの反応を見るのが面白かったですね。こちらとしても、「次はこうくるだろう」と予想されるところを「あえて別のコースから球を投げてみよう」とかね。そんなことを楽しませてもらった半年間でした。

−−リスナーの方たちとのいいキャッチボールがあったというわけですね。しかもそれが、ハイレゾでなされたことも特筆すべきですが、ASKAさんのファンの皆さんは、そのあたりをどう受け止めていたのでしょうか。

ASKA 日本の中ではおそらく、ハイレゾで聴いてくれる方の割合は僕のリスナーが高いのではないでしょうか。まぁ、僕ほどハイレゾを推奨しているアーティストさんもいないと思いますのでね。それくらいハイレゾは素晴らしいですから。

−−そのメリットはリスナーにもしっかり伝わっていると。

ASKA 音の深みや温かさというものがハイレゾによってどう表現されるか。作った本人はそのポイントも分かっているから違いもよく分かるのですが、一般の方々にはどうかなと当初は思っていたんです。でも、ブログなどでみんなのコメントを読んでみると、「ハイレゾを一度聴いてしまうと、戻れない」という声がすごく多かったんです。誰でも明確に分かるんだなと思いました。

−−好みの音楽をいい音で聴く喜びが広まるのは嬉しいことですね。

ASKA 音質にこだわらなければ、ストリーミングで大量の曲が聴き放題になっています。それで満足するならそれもいいでしょう。でも一方で、ものすごくいい環境でいい音を楽しむことに喜びを感じることも大切だと思うんです。

■作詞をする際に心掛けていること

−−印象に残る歌詞もASKAさんの歌の特徴です。不躾な質問かもしれませんが、その「言葉の感覚」はどのようにして培われたのでしょうか。

ASKA 歌詞については自分で語ることではないと思っているんですが、そのうえであえてお話しさせてもらうとすれば、とても普通に当たり前の言葉で伝えるべきだと思っています。そして、ここで使っちゃいけない言葉というものとの区別は意識しているつもりで、例えば「ここは比喩でいくべきだ」と思えば必ずそうします。その意図について、リスナーが「あ、そうか」とあとで気付いてくれればいいことですし、気が付かなくてもそれはそれでかまいません。聴いてくれる方の受け取り方によって楽曲がイメージされれば、僕はそれで十分だと思っています。

−−ありがとうございます。歌詞について、不作法ついでにもう一つ伺わせてください。「未来の人よ」の歌詞には鋭い問題提起と言いますか、哲学的なテーマを感じました。この歌詞が投げかけている大きな問いはどこから来たのでしょう。

ASKA 現在を生きている人にとっては、過去も未来もロマンだと思うんですよ。なぜならば、現在は常に過酷だから。もちろん「古の人」が迎えていた“現在”も過酷だったことでしょう。今の自分の現実を見て、過去に対して想いを馳せることにロマンがあるわけです。そして同時に、今の現実を生きているからこそ、未来に対してもロマンを持てる。曲の中では「どちらに浪漫を感じればいい?」と歌っていますけれど、自分の中では、両方がロマンなんです。ロマンは現代人が感じればいいことで、そのときそのときの瞬間が生み出すものがロマンだと思っています。

<このインタビューのフルバージョンは【e-onkyo music】にてお読みいただけます>

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