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【特別企画】「TE-BD21f-pnk」大ヒットの裏側を聞いた

ピエール中野×AVIOTコラボ完全ワイヤレス開発秘話。「音楽をより楽しむため」目指した“音”の全貌

公開日 2019/11/08 06:00 インタビュー:高橋 敦
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高品質と手頃な価格を両立したハイコスパなワイヤレスイヤホンを次々と展開するオーディオブランド「AVIOT」。同社ラインナップの中でもひときわ話題となっているモデルが、 “ピヤホン” こと、凛として時雨のドラマー・ピエール中野氏とコラボレーションした完全ワイヤレスイヤホン「TE-BD21f-pnk」だ。

AVIOT×ピエール中野コラボ完全ワイヤレスイヤホン「TE-BD21f-pnk」についてインタビュー

完全ワイヤレスでは世界初となる、ハイブリッド・トリプルドライバーを搭載したフラグシップイヤホン「TE-BD21f」をベースにした “ピヤホン” は、当初の想定を大きく上回る予約が殺到し、発売するやいなや秒速で完売。その後も注文がまるで途切れない人気ぶりだ。

今回、イヤホン好きとしても有名なピエール中野氏がデザインのみならず、音質監修も担当したという異例のコラボモデルについて、本人にインタビューを実施。開発の経緯、込められた思いやこだわりなど、大ヒットの裏側を語ってもらった。

「音楽をもっと楽しむ選択肢の一つとして、良いイヤホンを広めたい」

イヤホン好きとしても有名なピエール中野氏。そのきっかけとは?

── 遂にコラボモデルを出すまでに至った中野さんですが、まず最初にイヤホンを好きになったきっかけから教えてください。

ピエール中野氏(以下、中野氏) 音楽をやっていることもあって、ある時期に自分が音楽を聴く環境をもっと良くしたいと思ったんですよ。それで最初は、アンプやスピーカーなどのコンポーネントを揃えて部屋にセッティングして聴く、というオーディオスタイルの、いわゆる「ピュアオーディオ」の世界を調べてみたんです。

そうしたら良いと言われるアンプとかスピーカーが、とてもじゃないけど手が届く金額じゃなくて。しかもその先も果てしないみたいだぞっていうことが分かったんです。たとえばオーディオのことを考えて家を作るとか、電源環境のために自宅に専用の電柱を立てたりとか。

ちょっと今の自分が触れられる領域ではないなと思って、改めて現在の自分がいちばん音楽を聴いている、楽しんでいる環境を見直してみたんです。そうしたら、移動中とかにイヤホンで聴いている時間がいちばん長いことに気づいて。だったら、そのイヤホンを良いものにしたらいいんじゃないかって探し始めたのが、イヤホンを好きになる最初ですね。

── 合理的で効率的、経済的にもコスパのよさそうな判断!と思います。

中野氏 そう思ったんですけど…。イヤホンについて調べてみたら、今度はこの世界には「イヤホンスパイラル」というものが存在して、そこには「沼」がある、と。良いイヤホンにたどり着いても、さらに良いものに仕上げるためのイヤーチップ、ケーブルだとかを考えているうちに、また新製品が出てくる。そういうのが延々続いて…

── 果しない頂を目指す “ピュアオーディオ” の世界を回避するためにイヤホンの世界を調べ始めたのに、そちらには底のない沼が待っていたんですね…

中野氏 でも根気よく調べ続けていたら、Ultimate earsのテンプロ(Triple.fi 10 Pro)という機種を買えば「沼は一旦おさまる」って、わりと多くの人が言っていたんですね。「まずはこれを知っておけ。それで一回落ち着くから」って。それで最初にテンプロを買いました。

たしか4万とか5万円くらいして、当時は買う時かなり思い切ったんですけど、やっぱりすごい感動しました。これはすごい世界だ!ってすぐ実感できましたね。でも、そこでふと「そういえばリケーブルとかイヤーチップって話もあったな」っていうのも思い出しちゃって。試し始めたら、アンプをつなげるともっと良くなるって話も聞いて、小さくてかわいかったし「pico」っていうポタアン(HeadAmp「pico」)を海外通販で買って色々やりました。

── テンプロはたしかに決定打ともいうべき名機でした。が、沼を避けたいって話はどこに……?

中野氏 そうやって色々と試しているうちに、純粋にイヤホンというものが好きになって、すごい可能性を持っているツールだなって思うようになったんです。十分に調べてから踏み込んだ世界だったけど、実際にやってみたら「ここまでとは思わなかった!」っていうほどの実感を得られた。それで「これからイヤホンは良いものを使い続けていこう!」と思うようになって、今に至る感じですね。

── なるほど。元々、音楽機材とかガジェット的なものにはハマりやすいタイプですか?

中野氏 だと思います。ドラムっていう楽器自体が、追求しようと思えばどこまでも追求できる楽器なので。元々そういう気質があるところに、自分は音楽を生み出す側で、それを世の中に届けてくれる人たちがいて、それを受け取って聴いてくれる人がいるということをより深く考えるようになって。

「自分の音楽を聴く環境を突き詰めることで、音楽を作る者として、受け取って聴いてくれる側の環境も考えるように」

それまで聴いてもらう環境については、聴いてくれるみなさんに任せっきりだったんですよ。でも自分がイヤホンの世界に出会ったことで、聴いてくれる人たちにも「良いイヤホンで聴くっていう選択肢、面白さもあるよ!」っていう提案ができるんじゃないかと思って。それで気がついたら、Twitterとかでイヤホンについて発信するようになってたんです。

── 作り手としてはやはり、より良い音で聴いてほしいものですか?

中野氏 聴いて「ほしい」というわけではないんです。でも「こういう聴き方もあるよ」という選択肢としては知ってもらいたいなと。そしたら僕がハマったみたいにハマって、これまで以上に音楽を楽しんでくれる人も出てくるんじゃないかって思うんで。「音楽をもっと楽しむには、良いイヤホンで聴くという選択肢もあるよ。それだけで音楽体験が変わることもあるんだよ」って伝えたいんです。

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