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<山本敦のAV進化論 第177回>

ソニーは「Xperia 1」で“未開の感動画質”に踏み込んだ。「もう後には引けない」レベルのこだわりとは?

2019/07/19 山本 敦
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ソニーの最新スマートフォン「Xperia 1」が、発売以来好調のようだ。

Xperia 1は世界で初めてアスペクト比21対9の4K/HDR有機ELディスプレイを採用したスマホであり、ソニーモバイルコミュニケーションズとソニーの業務用映像機器の開発者がチームを組んで、「クリエイターの意図」を正確に再現できる映像を獲得したところが注目に値する。今回はXperiaシリーズの新しい高画質の基準が誕生した背景をキーパーソンに訊ねた。

アスペクト比21対9のソニー「Xperia 1」

インタビューに答えてくれたのはソニーモバイルコミュニケーションズで、新製品のXperia 1をはじめとするシリーズ上位機種の高画質ディスプレイを設計・開発してきた松原直樹氏と、4Kプロジェクターなど、ソニーのデジタルシネマ上映システムを中心とした各種高画質映像ソリューションの開発に深く携わるエキスパートであるソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの岡野正氏だ。

インタビューに応えてくれたのは松原直樹氏(左)と岡野正氏(右)

Xperia 1の画質探求における先進性を際立たせる「クリエイターモード」

Xperia 1のディスプレイには注目すべき3つのポイントがある。ひとつが先ほども触れた4K/HDR対応有機ELディスプレイを世界で初めて搭載したことだ。21対9のアスペクト比としたこともスマホとして初のチャレンジになる。

4K/HDR対応の有機ELディスプレイを採用

もうひとつはソニーのテレビ “ブラビア” シリーズの開発により培った高画質化技術「X1 for mobile」だ。SDR映像をHDR相当の画質にエンハンスして表示する「HDRリマスター」の技術をベースにしている。従来は1画面単位で行ってきた映像の色調とコントラストの調整を、画面内を複数エリアに分割して処理をかけることによって映像のリアリティを高める新しい試みを現実のものにした。

ブラビアで培われた高画質化エンジン「X1 for mobile」を投入

そして3つめのポイントが、これもやはりX1 for mobileと深く関わっている新設の映像モードである「クリエイターモード」だ。4K/HDR対応の有機ELディスプレイの実力をフルに引き出すために、映像制作に関わるクリエイターの意図を忠実に再現する画づくりを徹底してきた。今回のインタビューではクリエイターモードが開発された経緯を中心に、松原氏と岡野氏に振り返ってもらった。

ソニー厚木チームとのコラボレーションはこうして始まった

国内で展開されてきたXperiaシリーズの上位機種は、初めて4K/HDRディスプレイを搭載した「Xperia XZ Premium」(2017年発売)の頃からソニーのブラビアの開発チームと連携しながら、またソニー・ピクチャーズ エンタテインメントにおいて映像コンテンツの制作に携わるクリエイターの見解を吸い上げつつ、画づくりの印象をブラビアシリーズに近付けてきた。さらにXperia 1では初めてソニーのプロフェッショナル向け映像機器の開発チームと連携した。

コラボレーションが生まれたきっかけを松原氏と岡野氏が次のように語っている。

「昨年夏に当社の副社長として槙 公雄が就任した際、槙は私ともう1名ソニーモバイルのエンジニアを引き連れて、当時都内で開催されたスポーツイベントの8Kパブリックビューイングに足を運びました。その場で岡野をはじめ、神奈川県の厚木市に拠点を構えるソニーのプロフェッショナル向け業務用機器の担当に会うことができて、有機ELディスプレイを搭載するXperia XZ3のプロトタイプの映像を視聴してもらいました」(松原氏)

「ブラビアの画面をそのまま小さくした、お手本のような画質でした。ただ、私は当時、槙からクリエイターが本当に見せたい映像をXperiaで再現したいという意図を聞いていたので、『ならばこのままでは不十分』であるとお伝えしました。そこからXperia次世代機の画づくりを一緒に始めました」(岡野氏)

当時は将来の「Xperia 1」に4K/HDR対応有機ELディスプレイが載ることと、アスペクト比を21対9とすることだけが決まっている中で、新たに「クリエイターの意図を再現する映像」がもう一つの目標として加わった。

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