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6BAドライバー搭載の最新モデル

「ミュージシャンの声に背中押された」− FenderがマルチBAの最上位機「FXA9」を作った理由

公開日 2017/05/30 11:45 ファイルウェブ編集部
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3Dプリンティング技術があってこそ実現した緻密なドライバー配置

―― Fenderイヤホンの特長のひとつである3Dプリント成形のハウジングを用いていますが、6ドライバー搭載とは思えないほどコンパクトで、装着感も良いです。このサイズのハウジングに6ドライバーを納めるためには工夫が必要だったのではないでしょうか。

デール氏 まさにその通りです。これはFenderが培ってきた3Dプリンティング技術がなければできなかったことです。

FXA9ではサブウーファーのみポートを設けましたが、この小さなハウジングの内部にサブウーファーのための独立したチャンバー(小部屋)が用意されています。これは3Dプリンターを駆使した成形技術なくしては実現できなかったことです。この部分の作り込みには、例えるなら外科医がマイクロスコープを使って手術を行うようなレベルの精度が必要になります。結果として、正確かつ無駄なくユニットを配置することができ、ハウジングもコンパクトになりました。

後述するように、熟練したビルダーの技術が、緻密なドライバー配置を実現している

ジム氏 金型で成形する場合は、このような細かな作り込みはできません。金型によるごくわずかな隙間や位置のずれが、ドライバーに悪影響を与えてしまうのです。3Dプリンターによる成形ではこうした問題が一切解決でき、1つ1つのドライバーをそれぞれ最適な位置に配置することができます。3Dプリンター成形を用いる大きな利点ですね。

金型成形ハウジングのイヤホンにおけるドライバーの配置というのは、例えればホームシアターの中でスピーカーやサブウーファーを配置するようなものです。“部屋”という曖昧な空間には不確実な要素が多いので、スピーカーの最適な位置を導き出すのが難しいのです。これに比べたら、3Dプリンター成形ハウジングのイヤホンは、スピーカーにおけるドライバー配置のようなものです。限定されたボックスの中の空間であれば、計算もチューニングも楽である。そういう発想のちがいがあるということです。

ジム氏は、3Dプリンターによる精密な成形技術があってこそドライバー配置の最適化が可能になると語る


ノズルが金メッキ・ベリリウム製である理由。ケーブルにもこだわる

―― 本機のノズルはベリリウム銅製で、さらに24K金メッキが施されています。ノズルに金メッキを施すというのは珍しいと思います。

デール氏イヤホンは体に直接触れるものですから、使い続けていくと汚れや腐食が起こります。これらは音にも見栄えにも悪い影響を及ぼします。これを防ぐために、ベリリウム銅に24Kメッキを施すという方法を採用したのです。音の面だけでいえば、この組み合わせは剛性を高めることができるので、不要な響きが加わることなく、音のエネルギーを素直に耳へ伝えることができます。

―― これは従来モデルにも言えることですが、FXA9は見た目にも美しイヤホンですよね。

ジム氏 イヤホンとしてのファッション性ももちろん重要視しています。クリア・ハウジングで内部の構造を美しく見せつつ、ゴールドのノズルやコネクターをアクセントに加えています。同様にクリアのケーブルとイヤーピースも本体と調和しますし、ハウジングの表側は3色のカラーから好みに合わせて選ぶことができます。ハイエンドモデルとしての美しさは、しっかりと演出したかったのです。

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