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【特別企画】小原由夫氏によるインプレッションも

サエク北澤氏インタビュー。最上位ラインケーブル「STRATOSPHERE SL-1」で目指した“音の成層圏”

公開日 2017/04/11 10:00 構成:編集部/レビュー:小原由夫
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突き詰められた無色透明なサウンド。原信号をありのままに伝送する

それでSL-10で狙ったサウンドはどのようなものなのか。北澤氏はその音を「まさに純粋伝送の音」と表現する。これは原信号の減衰を最小化すると共に、原信号にないものは何ひとつ足さないというSTRATOSPHEREの思想を体現するものと言えよう。狙いはまさに“無色透明”である。

また、圧倒的な静寂感やノイズの少なさも長所だと北澤氏。これらの特徴により、優れた空間再現力が実感できるはずだと語る。「ステージの奥行きや広さ、そして高さが表現できるのです。倍音の美しさにも耳を傾けてほしいですね」。

SL-1で実現したサウンドについて説明する北澤氏

北澤氏はSTRATOSPHEREの今後の展開についても語ってくれた。まずは、スピーカーケーブル「SP-10」について、バイワイヤリング専用モデルを予定しているという。これは前述のスーパーストラタム構造における中心導体を中低域用、周辺導体を高域用として用いるというものだ。SP-10のスーパーストラタム構造は、このようなバイワイヤリング用途まで想定して、中心導体と周辺導体の断面積が同一になるように設計されているのだという。

さらに今後は、SL-1のXLR端子バージョンも予定。こちらとSP-10のバイワイヤリングモデルは、2017年夏頃までにリリースできる見込みだという。

また様々な検証を通して、スーパーストラタム構造とPC-Triple C/EXによる導体が、デジタル伝送にも大きな効果を発揮することがわかってきたという。デジタルケーブルも手がけることになるだろうと北澤氏は含みを持たせた。



サエクが長年培った技術を結集して完成させたSTRATOSPHERE。そして、そこにハイレゾを想定した最新音響導体PC-Triple C/EXを組み合わせた「SL-1」。現代のオーディオ再生を担うケーブル群のサウンドを、ぜひご自身の耳で確かめてほしい。


STRATOSPHERE「SL-1」インプレッション
取材・執筆/小原由夫

お世辞抜きで、この10年で出会ったケーブルの中で最も感動したもの

「SL-1」

忠実伝送への飽くなき探求を続けるサエクコマースのケーブル。スウェーデンに拠点を置く欧州有数のメーカーSUPRAの輸入代理店でもある同社が、自社ブランド製ケーブルで打ち出すスタンスは、導体の素性をストレートに活かすこと。新製品SL-1の特徴は、最新のPC-Triple C/EX導体の使用と、スーパーストラタム構造の採用だ。

この導体は、5N銀パイプにPC-Triple C銅を挿入し、そのまま鋳造した複合素材。銀メッキとは根本的に異なる構造で、銀の高伝導性能がもたらす可聴帯域外の超高域信号伝送に期待したものである。このメリットが、外周部の絶縁導体の表面積増大に伴うスーパーストラタム構造特有の高周波特性の良好さと相まって、現代のハイレゾ音源ならではの広帯域/高解像度にマッチするのではないかという着想によるコンセプトである。

小原由夫氏

チャッキング機構を備えたプラグ部は、確実な勘合が可能。ケーブルそのものも決して固過ぎず、取り回しはやりやすい。一聴して驚かされたのは、ローレベルの情報の圧倒的なリニアリティ。微細な音のニュアンス、質感がこれほど明瞭に再現されるケーブルは、かつて経験がない。それに伴ってステレオイメージの空間再現が図抜けている。ダイナミックレンジの拡大と共に、再現できるキャンバスが圧倒的に広いのである。

ヴォーカルの質感は、生々しいという表現を通り越し、怖いと形容したくなるスーパーリアリズム。オーケストラでは分厚い壁が聳え立ち、それが何層も折り重なっているかのよう。使い古された表現だが、聴き慣れた耳タコのコンテンツから新たな気付きが多々あった。

お世辞抜きで、この10年で出会ったケーブルの中で最も感動したものと断言しよう。いい意味でウェルバランスだが、アピールが乏しいと言われてきたサエクのケーブルが、ひとつ突き抜けるどころか、とてつもない次元に達したのだ。

(小原由夫)

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