HOME > インタビュー > <IFA>試聴レポ有:ソニー開発者に聞く“ウォークマン”新フラグシップ「WM1」誕生の背景

WM1ZとWM1Aは異なるコンセプトが起点

<IFA>試聴レポ有:ソニー開発者に聞く“ウォークマン”新フラグシップ「WM1」誕生の背景

公開日 2016/09/02 11:23 山本 敦
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エントリーモデルのA35には多彩なイコライザーのプリセットが搭載されているが、WM1シリーズはソースを忠実に再現することに重きを置いたプレーヤーであることから、そもそもイコライザープリセットが用意されていない。その代わりにユーザーが10バンドイコライザーを使ってカスタマイズした設定値が3件までストアできる。ハイエンド志向のプレーヤーとしては正しい割り切りだ。

10バンドのイコライザー機能を内蔵した

ソニーのAVアンプやHiFiコンポーネント製品に採用されてきたデジタルアンプ「S-Master PRO」が搭載する「DCフェーズリニアライザー」は、アナログ方式のパワーアンプと同じ位相特性をDSPの演算処理によりエミュレートする機能だ。

DCフェーズリニアライザーの機能。6つの音色が選べる

今回発表されたWM1シリーズとA35からウォークマンにも採用されることになったが、上位機種はそのモードも6つのパターンから好みに応じて選択できる。機能をオンにして聴くと低音の鋭い立ち上がりと、量感も備えたまま全体を引き締める効果のほどが確かめられる。

そして本機は、ワイヤレスでハイレゾ相当の高音質なサウンドが楽しめるポータブルオーディオプレーヤーでもある。これはソニーが独自に開発したコーデック「LDAC」により実現している。

従来のLDACの設定は音質優先/標準/接続優先の3モードで選ぶ仕様だったが、新しく通信環境に合わせてビットレートを可変しながら伝送する「接続優先(自動)」が加わる。安定接続と高音質なワイヤレス再生の両方を同時に実現することを狙った機能だ。

LDACの設定には接続優先(自動)モードが追加された

ハイレゾ相当の音質へのアップコンバート機能である「DSEE HX」は、再生する曲のジャンルに合わせて音質を最適化する5種類のモードを新設する。同機能はウォークマンの設計チームから、DSEE HXの開発チームに対して積極的な要望が送られたことによって実現したものなのだという。

DSEE HXも音楽のジャンルにより効果を変えて楽しめる

■「WM1Z」と「WM1A」、選ぶならどっち?

ウォークマンのファンにとっては、待望のDSDネイティブ再生とバランス出力に対応したハイエンド機が登場することになる。音質はまさに圧巻。ZX2からのステップアップだけでなく、ウォークマンならではの、ハイレゾ再生に限らない「音楽のリアリティ」を真摯に追求したサウンドが新しいステージに到達したことを強く実感させられるプレーヤーだ。ライバル機とはまた異なる道筋からハイレゾの真髄に迫れる名機になりそうな予感がある。

そのパフォーマンスを最大限に発揮させるためにはバランス接続によってリスニングできる環境はぜひ整えたい。新しいフォームファクターである4.4mm/5極端子を採用する周辺機器を揃える必要も出てくるが、今後JEITAがオーディオのバランス接続のための規格として標準化を押し進めて行くものになるので、この機会に早くから投資しても無駄にはならないだろう。

実際に、ソニーが今回のIFAで据え置き型のヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」にも同じバランスコネクターが採用されているので、両方の製品をもし揃えられたら、アウトドアと宅内でよりシームレスなバランス接続による音楽リスニングが楽しめるメリットが享受できるようになる。今後同コネクターを採用するブランド、製品が増えればその価値を強く実感できるようになるかもしれない。

筆者個人としてはプラットフォームがAndroid OSではなくなったことで残念に感じる部分もあるが、おそらく同クラスのウォークマンでは使う人も少なかったであろう動画再生などの機能を省いて、よりシンプルに究極の高音質を追求した姿勢は大変好感が持てる。

側面の物理ボタンと4.0型タッチパネルの合わせ技による操作感は非常にスムーズで、ZX2に比べてタッチパネルのレスポンスは大きく向上している。ZX100、A20シリーズのUIとレイアウトが変わって機能も増えているため、従来のウォークマンユーザーには最初は少し操作やメニューの配置に慣れる時間が要るかもしれない。

そしてトップエンドのWM1Zは30万円を超える高級機になりそうなので、誰もが気軽に購入できるプレーヤーではないことも事実。WM1Aも音質・機能ともに高次でバランスが取れたプレーヤーだが、両社の間でも音質にかなりの差がある。どちらを選べば良いのかという問いに対してはすぐに答えづらいところだが、これから長く愛用する音楽プレーヤーを探している方にはWM1Zを候補に挙げて真剣に時間をかけて音質や使い勝手を吟味する価値は大いにありそうだ。

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