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WM1ZとWM1Aは異なるコンセプトが起点

<IFA>試聴レポ有:ソニー開発者に聞く“ウォークマン”新フラグシップ「WM1」誕生の背景

公開日 2016/09/02 11:23 山本 敦
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同じ銅系の素材をシャーシに使ったプレーヤーとしては、純度99.9%銅筐体を採用するAstell & Kernの「AK380 Copper」がすぐに思い浮かぶ方も多いだろう。

高純度の無酸素銅は、そもそも切削加工が難しいことでも知られている。ソニーは重さが約1.8kgの無垢の無酸素銅をカッティングして、そのうえ裏表面に高純度の金メッキ処理を施している点にオリジナリティがある。これにより接触抵抗を下げて音質を高める効果や、酸化しやすいという銅素材の弱点を補っている。さらに金メッキの下地には非磁性の三元合金メッキを塗布して磁気による音質への悪影響も防ぐ。

WM1Z/WM1Aともに音質を吟味したボディ素材を使っている

WM1Aのシャーシは約0.5kgのアルミ押し出し材を切削してから塗装処理を施したものだ。ZX2までに使い慣れた素材を活かすことで剛性を高め、元もと軽量なアルミ材料のメリットもうまく活かしている。

アンプ部の電源強化も図った。チャージポンプ電源には従来機種から用いるOS-CONを残しながら、新しく約3年の開発期間を投じて完成させたウォークマン専用のFT CAP高分子コンデンサーを使った。これによりOS-CONならではのエッジの鋭さを活かしながら、ZX2の音への要望として上がることの多かったボーカルの艶感、生楽器の透明感向上と力強く引き締まった低音の両立を可能にしたという。

ヘッドホン出力のサウンドチューニングの決め手となるLCフィルターには、上位のWM1Zが新開発の大型高音質抵抗を用いている。これはソニーのAVアンプ「STR-DN1070」に採用されているものと共通で、開発当初から一緒にチューニングを重ねて音を練り上げてきたものを使っているという。

また、非磁性体の銅メッキ処理を施したことで磁気歪みも徹底的に退けて、最終段のフィルターに入れることで音の伸びやかさと透明感を際立たせた。WM1AはZX2と同様、高品質なメルフ抵抗が採用される。

アンプ部分とヘッドホンジャックをつなぐ内部配線にも改良を加えた。WM1Zは米キンバーケーブル社の4芯編み構造ケーブルを採用。WM1Aは無酸素銅のケーブルになる。両モデルともにアンバランス接続時にはZX2の頃からサポートするL/Rグランド分離出力に対応する格好だ。

■独自OSの強みとは

WM1シリーズでは音楽再生に特化してつくられた新UIを採用する。ZX1、ZX2と歴代のハイレゾ対応ウォークマンのフラグシップが搭載してきたAndroid OSは採用せず、独自の組み込みOSとタッチパネルディスプレイ、物理ボタンによる音楽再生に特化した快適な操作性を追求した。

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