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Thunderbolt対応DAC「TAC-2」に迫る

ZOOM社長に訊く“オーディオ市場に参入した理由”とは

公開日 2014/04/28 10:55 聞き手:岩井 喬 構成:ファイル・ウェブ編集部
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これまで優れた楽器関連製品や録音製品を手がけてきたZOOMから、同社初となるオーディオ・リスニング層を強く意識したDAC「TAC-2」が登場する。最新の伝送規格Thunderboltに対応した本機はいかに実現したのか。そしてこのタイミングでZOOMがオーディオへ進出した理由は何なのか。同社代表取締役 CEOである飯島氏にインタビューを行った。

(株)ズーム 代表取締役 CEO 飯島雅宏氏

■ZOOMがオーディオ市場に参入した理由とは?

ーー まずはZOOM社について概要を教えてください。

飯島氏 ZOOMは昨年、設立30周年を迎えました。初の自社製品の発売からは25年を数えます。出発点となったのはギター用マルチエフェクター「9002」で、これが業界で非常に良い評判を得ました。1990年には世界30カ国で販売を始め、現在では世界100ヶ国、代理店で約60の販売網を持っています。

ーー これまでの製品ラインナップはどのようなものだったのでしょうか。

飯島氏 ギター用エフェクターから出発し、ドラムマシン、マルチトラックレコーダー、ハンディオーディオレコーダー、ハンディビデオレコーダーと商品のカテゴリーを広げていきました。現在では売り上げ約45億円、従業員数約70名という規模を誇ります。工場は持たずに、生産は中国で依託するという点は、アップルやユニクロと同じですね。

ーー この度、Thunderbolt対応オーディオインターフェース「TAC-2」でオーディオ市場に参入されることになりました。このタイミングでの参入となった理由は、どのようなものだったのでしょうか。

飯島氏 ズームは当初から「MI(ミュージック・インダストリー)」と呼ばれる楽器業界商品を開発してきました。その中にハンディオーディオレコーダー、いわゆるICレコーダーをオーディオレコーディング用に高音質化した製品を発売しました。

Thunderbolt対応オーディオインターフェース「TAC-2」

この製品が、予想外の展開として、MIだけでなく「CE(コンシューマーエレクトロニクス)」市場にも用途が拡大していきました。それまで楽器店中心だった販売網が、家電量販店にまで広がっていきました。そこでわかったのは、CEマーケットが想像を絶するほど巨大だということでした。

楽器業界における大ヒット商品を作るのも手ですが、CE市場で特定の用途に特化したユニークな製品作りをすれば、同じくらいの規模の販売量が見込める。そういう背景もあって、一般の家電の市場に製品を投入していこうという方向に考えが変わっていきました。もちろん「TAC-2」も、こうしたCE向け製品に位置づけられます。

いわゆる「ハイレゾ」に代表されるような、音楽をより高音質なサウンドで聴きたいという市場も徐々に拡大してきています。CDの市場自体は縮小していますが、その一方でストリーミングや音楽配信は充実してきて、パソコンを使ってハイクオリティーなオーディオを聴きたいというニーズが高まっています。そこのニーズに向けて製品を投入したい、という思いがありました。

ーー なるほど。

飯島氏 オーディオに参入するタイミングという点で、もうひとつ理由があります。オーディオインターフェースの市場はすでに成熟していて、そこに新規参入するには、ありきたりのものを出してもユーザーへの浸透は難しいはずです。

しかし今は、Thunderboltの技術が市場に拡大しつつあるというタイミングです。規格の変わり目は市場が大きく変化するときで、マーケットシェアもがらりと変わります。長年オーディオへの参入を検討していましたが、参入するならThunderboltというポテンシャルの高い規格がオーディオに広まり始めようとしている今しかないと思いました。

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