キーマンに訊くIFA2016の手応え。初開催イベントの成果や新ホールの展望

世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA2016」は今年も盛況のうちに幕を閉じた。今回のイベントで改めてスポットが当たったエレクトロニクスのトレンドや、これからのIFAの成長に向けた手応えと課題について、イベントを主催するメッセ・ベルリン社のイエンズ・ハイテッカー氏、ディリク・コスロフスキー氏に訊ねた。

メッセ・ベルリン社
取締役 IFAグローバル統括本部長 イエンズ・ハイテッカー氏(左)
IFAグローバル・シニア・エグゼクティブ・マネージャー ディリク・コスロフスキー氏(右)

 

グローバルショーとして世界に定着したIFA

今回はおふたりが10月初旬に来日した際にインタビューの機会を得て話を聞いた。当時まだ正確なクロージングレポートが発行されていなかったため、開催期間中の来場者数や出展規模のデータについては機会を改めてIFA日本語サイトで紹介されることと思う。まずは最初にIFA2016を終えて得た手応えについてハイテッカー氏にうかがった。

「数々のレコードを打ち立てた2015年と比べて、その差は大きくないものの、またIFAが着実な成長を遂げたと実感しています。目立つところでは海外からのビジター数が伸びました。昨年のIFA2015では初めてドイツ国内から参加したトレードビジターの数を、海外からのトレードビジターの数が上回りました。私たちもIFAがグローバルショーとして世界に定着したことをとても嬉しく感じたものです。今年はその割合がさらに拮抗しました。というのも、海外からの参加がまた増えた一方で、ドイツ国内のトレードビジターも活気を取り戻してきたからです。おかげさまでビジター総数は最終的な集計を締めれば、全体の規模が伸びていると思います」(ハイテッカー氏)

ジャーナリストの参加数も増えたという。ドイツ国外のジャーナリストとしては特にアメリカのメディアが積極的にIFAを取り上げているようだ。筆者も実際にプレスセンターをはじめ、会場を歩き回っているときに多くのアメリカからのジャーナリストに出会った。出展社はIFAを有効に活用することで、発表する製品やサービスをヨーロッパ以外の地域にも一斉に、かつ効果的に発信できるだろうとハイテッカー氏がアピールしている。

CE Chinaでアジア地域のIFA認知度が向上。2017年も開催へ

今年の4月20日には、IFAの姉妹イベントとなるコンシューマーエレクトロニクスショー「Consumer Electronics China(CE China)」が中国のシンセンで開催された。メッセ・ベルリン社にとっては、IFAの成功によって勝ち取ってきたノウハウを、初めてドイツ以外の地域で大規模なイベントを開催することによって展開する、新たな挑戦になった。CE Chinaを開催したことによる好影響はIFA2016にも表れたのだろうか。

メッセ・ベルリン社
取締役 IFAグローバル統括本部長 イエンズ・ハイテッカー氏(左)
IFAグローバル・シニア・エグゼクティブ・マネージャー ディリク・コスロフスキー氏(右)


「明らかな手応えがありました。メッセ・ベルリン社はトレードショーのプロフェッショナルとして、ドイツを中心に長年に渡ってノウハウを蓄積してきました。私たちはまず、自身のビジネスモデルをベースにCE Chinaを成功させるために、開催地である中国、そしてアジアでのネットワークづくりを長期間に渡って丁寧に行い、足場を固めてきました。その甲斐もあって、CE Chinaの開催後は中国を中心に、アジアの様々な地域にIFAの認知が広がりました。『秋にはベルリンへ、IFAを見に行かなければならない』。多くの方々が初めてIFAを視察するスケジュールをアジェンダに書き込んでくれました。その結果が海外からのトレードビジター数の増加と、イベントの活気に表れていたのだと思います。中国やアジア地域の方々がIFAに呼び込む熱気の強さは、私たち主催側が予測していたよりもずっと大きなものでした」(コスロフスキー氏)

「CE Chinaはもちろん、来年も開催するつもりです。今年初めて開催して得たノウハウを次につなげて、イベントを大きく、実り豊かなものにしていきたいですね。そのために最適な場所と開催時期を、これから検討していきたいと考えています」(ハイテッカー氏)

 

ベルリン市内で初開催した「IFA Global Markets」の手応え

IFA2016から初めて実施されたもう一つの取り組みがある。IFAの本会場であるメッセ・ベルリンの展示エリアを拡張して、ベルリン市内のイベント施設で併催されたBtoB向けのトレードショー「IFA Global Markets」である。その内容は、従来メッセ・ベルリンの会場内でスペースを割いて実施していたOEM/ODM系出展社を集めて、トレードビジターとコンタクトできるポイントをさらに充実させる試みだった。


筆者も開催期間となる9月3日からの4日間に「IFA Global Markets」の会場へ足を運んでみた。ベルリン市内の中心地、地下鉄U2線の「Gleisdreieck駅」を降りるとすぐに、IFAのテーマーカラーである鮮烈な赤色のフラッグがはためいている。かつては東西ベルリンのメインステーションが交差する場所に位置した巨大な貨物駅だったこの場所に、今も残されている赤い煉瓦づくりの洒落た駅舎をイベント施設として改装。広々としたスペースがIFAの「第2会場」に選ばれた。なお、クロイツベルク地区と呼ばれるこのエリアは、いまベルリン内外から多くの若手アーティストが集まるトレンドの最先端である。このクロイツベルク駅の施設では音楽や美術関連のアーティスティックなイベントもよく催されるそうだ。

IFA Global Marketsの手応えをハイテッカー氏とコスロフスキー氏は次のように振り返った。

「足を運んでいただいた方々からの反響はとても好意的でした。ベルリン中心にあるホールなので出展者、トレードビジターの双方からアクセスしやすいという声が多く寄せられました。開催期間中はIFAの本会場から送迎のシャトルバスも出ていたので、アクセスについては本当に不自由がなく、IFA本会場との一体感を出せていたと思います」(ハイテッカー氏)

「ただ、初めての開催だったので、当然課題もいくつか見えてきました。IFAの本会場にもホール26・27・28の3箇所にBtoB向けの展示ゾーンがあったため、トレードビジターの方々からは『Global Marketsと両方まわるのが難しい』『全体を見渡せないのが不便』というフィードバックもありました。結果、IFA Global Marketsには足を向けなかったという方が多くいたことも事実です」(コスロフスキー氏)

「これらの課題を見直しながら、来年はIFA Global Marketsをはじめ、BtoB向けの展示もより良いものにしていくつもりです。早くも具体的な計画が立ちはじめています。それは、来年はBtoB向けの展示をIFA Global Marketsの開催地に集約して、1箇所でお見せするというものです。もともとメッセ・ベルリンのホール26・27・28は、2017年から2年間、改装工事のため閉館することが決まっていました。来年には新しいホールを建設するための工事がスタートするので、その間はIFAに出展いただいていたOEM/ODMメーカーの方々に、IFA Global Marketsに移っていただくことも含めてご案内していくつもりです。

ならばベルリン市内のホテルのスイートルームを借りてトレードビジターを招待すればいいじゃないかという考え方もあるようですが、集客規模と効率を考えれば、間違いなくIFA Global Marketsに参加いただく方が有利だと私たちは言い切ることができます。来年も本イベントを進化させて、世界各国のトレードビジターの方々との有効なコンタクトポイントにしたいと考えています」(ハイテッカー氏)

旬の製品とサービスを体験できる場所であることがIFAの強み

いまエレクトロニクス市場では「IoT(モノのインターネット)」が一つのトレンドワードになっている。IFA2016でも、様々な出展者がIoTのコンセプトを採り入れた製品やサービスを出展して、来場者の食いつきも上々だったようだ。今やIFAの競合である世界のエレクトロニクスショーもIoTを集客のための強力な看板として前に打ち出す姿勢を見せている。これからIFAはIoTをどのように取り込んでいくのだろうか。ハイテッカー氏に訊ねた。


「IoTはコンシューマーエレクトロニクスのバックエンドにあるコンセプトやテクノロジーです。従ってフロントエンドで起きることと切り分けながら考えないと、IoTとコンシューマービジネスの関係性を正しく把握できません。コンシューマーにとってはIoTのテクノロジーがきっかけで、何ができるかということが大事であって、だから主役はいつの時代も、どのトレンドが主流の時期にあっても変わらず『製品とサービス』だと私は考えています。

同様のことを私たちは今から10年ほど前に『デジタルコンバージェンス(アナログからデジタル化への移行に伴い、産業の垣根が取り払われて新しいビジネスが生まれること)』という言葉が流行した時にも感じました。デジタルコンバージェンスそのものを、コンシューマーが買うことはできません。

人々が注目しているのはフロントエンドのプロダクトやサービスです。出展社と来場者の双方にとって最高の接点を、最良な時期に提供することがIFAの使命です。だからIoTというトレンドワードがIFAのヘッドラインになることはないし、コンシューマーの目線に立ちながら、旬の製品とサービスを体験できる場所であることがIFAの大きな違いであり、強みです」(ハイテッカー氏)

「一方で、IFAはエレクトロニクスの未来を語り合うコンセプチュアルな場を軽視しているわけではありません。2015年から併催イベントとしてスタートしたIFA+Summitは、エレクトロニクス業界のエキスパートたちに、これからの展望を語ってもらう羅針盤であり、ここではIoTも含む様々なキートピックスに関する熱いディスカッションが歓迎されます。出展者、トレードビジターの方々にとっても、エレクトロニクスのこれからを考えるとてもよい機会になるはずです。ぜひ来年も足を運んでみてほしいですね」(コスロフスキー氏)

「今年はスマートホームの特設テーマエリアをメイン会場の一角につくりました。まずはIoTを堅苦しく考えずに、生活の何が便利になるのか?ライフスタイルがどう変わり、どんな魅力的な製品が出てくるのかという視点から、来場者が擬似的なマイホーム環境の中でトレンドを体験できる場としました。来場者にワクワクしてもらうことが狙いです。同様のテーマ展示は来年も充実させたいと考えています」(ハイテッカー氏)


筆者は今年、久しぶりにプレスデイの2日間から、本会期の6日間を通してIFAの会場に続けて足を運んだ。オーディオ・ビジュアルだけでなく、IT・通信のエリアにホームアプライアンスまで、単体の製品からネットワークにつながって実現するサービスを幅広くカバーしようとすると、とてもではないが8日間でも時間が足りなかった。

ここ数年の間にもまた、IFAの展示規模は大きくなり、カテゴリーも多様化してきた。ハイテッカー氏の言うとおり、確かに全ての来場者にとって主役は最新の商品とサービスである。しかし一方では、それぞれの魅力を正しく把握しようとした時に、ネットワークにつながって生まれる新しい価値を体験しなければ、来場者の好奇心や消費意欲は刺激されない。様々なカテゴリーにまたがる製品が一堂に会するIFAだからこそ、一つ一つのモノから、つながるコトへ、これからのエレクトロニクスがつくり出す感動を伝えてくれるであろうと期待している。IFAのキーパーソンであるおふたりが、来年はどんな仕掛けを用意してくれるのか楽しみだ。



◆IFAに関する問い合わせ先

メッセ・ベルリン日本代表部
TEL/03-5276-8730
FAX/03-5276-8735
Mail/info@messe-berlin.jp

 

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