大島 洋

販売店様との強力な信頼関係が一番の資産
さらなる発展のため最大限に努力していく
ティアック株式会社
執行役員
音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット長
エソテリック株式会社
代表取締役社長
大島 洋
Hiroshi Oshima

日本を代表するハイエンドオーディオメーカー、エソテリックの新社長に、同社の取締役で、海外販売のトップを務める大島氏が就任した。さらなる成長に向けた展開について、意気込みとともに語る。
インタビュアー/樫出浩雅 音元出版副社長  写真/柴田のりよし

国内の成長を礎に
海外での伸長を図る

大島社長のご経歴と、就任の抱負をお聞かせください。

大島私は1985年にティアックに入社し、ミリタリーセールスという部署に配属されました。米軍基地を対象にオーディオ商品の免税販売を行っていた部署で、弊社は60年代〜70年代にこのビジネスで大きく成長したのです。その後、一時ティアック(株)を退職して、スーパーの大手法人に入ったのです。そこでは、香港事務所長の立場で中国や香港の製品の買い付けの仕事をしていましたが、その後やはりオーディオは楽しい、一生の仕事にしたいという思いが出てきていたのですね。それで、当時懇意にしていたティアック・オーストラリアの役員に相談して後押ししてもらい、ティアック香港に再入社したのです。

流通に携わったのは3年ほどでしたが、基礎的な枠組みや流通目線でのものづくりの姿勢を学んで、大きな影響を受けました。作り手と売り手の考え方の違い、バイヤーさんが何を決め手にものを買い付けるか、店頭も含めた商品展開など、振り返るとさまざまな勉強をさせていただきました。これは今も私にとっての財産です。

ティアックに戻ってからは、海外でのものづくりと販売の仕事を続けた後、2002年に帰って徐々に日本の仕事に関わり始めました。そしてTEACブランドが日本で復活した2006年から、商品供給、商品企画の立場で日本のマーケットに関わるようになったのです。

エソテリック(株)の社長になられて、これまでのティアックのコンシューマーオーディオの業務との兼任となりますね。

大島実は今回、ティアック(株)のコンシューマーオーディオ事業がエソテリック(株)のもとに統合されました。エソテリック(株)は、ティアック(株)の100%子会社ですが、これにより、「ESOTERIC」と「TEAC」という二つのHi-Fiブランドを擁するマルチブランド企業という業態になります。バックオフィスや、開発技術投資の共有化で効率化しつつ、2つのブランドの独自性をより明確化し、各ブランドがターゲットとする分野に対して、より戦略性の高いアプローチを行うことが目的です。つまり、「TEAC」、「ESOTERIC」それぞれの個性をより際立たせ、ブランドの異なるキャラクターや販売・マーケティングの独立性は担保しつつ、バックオフィスや、開発における技術投資やリソースの共有化で効率的な経営を目指します。

こうした中でESOTERIC事業における私の最大のミッションは、海外での展開強化です。当社ではここ2〜3年、アジアが昨年前年比130〜140%、欧米も120%と海外販売の伸びが顕著になっていますが、これをさらに伸長させていくつもりです。国内は人口動態の問題でオーディオファンは高齢化し、減少しています。一方でアジアは新しいお客様がどんどん入って来て、高級オーディオを欲しがっておられる。また欧米は市場規模が大きい一方で競争も激しいですが、日本のメーカーとして期待されることもまだまだある。海外市場はどのセグメントでも、伸長の余地があるわけです。

ESOTERICは、大間知が創業してブランドの礎をつくり、勝村が国内の販売から商品のポートフォリオの変更、プラットフォームのまとめなどすべてに地道に取り組んで、収益を出ししっかりと安定化させました。それを引き継がせていただけることにはプレッシャーも感じますが、非常にありがたいことです。これまでの国内での成長に加えて、海外に大きく展開し、ホップ、ステップ、ジャンプとしていきたいですね。日本から発信するウルトラ・ハイエンドブランドであるESOTERICを、グローバル規模で世界の逸品を創造するハイエンドブランドに成長、進化させる。第2の創業期のつもりで取り組んで参ります。

大島 洋
これまでの国内での成功モデルを潜在需要が見込める海外にも展開すること
それがESOTERICの今後の成長の鍵

3つのカテゴリーを中心に
さまざまなチャレンジも

国内外のハイエンドオーディオ市場の現状や今後を、どうご覧になりますか。

大島国内ではお客様層が高齢化しており、この先の市場縮小が一部で懸念されていますね。しかしグローバルで見ればハイエンドオーディオの市場は、この先も安定的に推移すると考えています。ESOTERICでは日本国内市場を最重要マーケットと位置づけ、日本のお客様が特に重視するブランドや品質の向上に注力し、国内中心の製品企画や開発を行っています。この10年でフラッグシップの「Grandioso」シリーズも完成させ、国産ハイエンドブランドとしてのステイタスも大きく向上し、事業運営も安定させることができました。勝村がこれまで推進してきた国内の成功モデルを、まだまだ潜在需要が見込める海外にうまくローカライズさせ、浸透させることが今後の成長の鍵と考えています。

ESOTERICの商品展開について、今後の方向性はどうお考えですか。

大島方向性としては従来通り、ブランドの向上と品質の向上に注力していきます。これまで注力してきたSACDだけでなく、昨年来展開しているアンプもこれからさらに注力しますし、他にもいろいろなカテゴリーにチャレンジしていきます。それが国内市場に対する処方箋にもなると考えます。

国内はディスク再生がまだ顕在ですが、海外では音楽ソースとして、ストリーミングやファイル再生がかなり主力化していますから、いろいろなデバイスに対応する必要があると思います。特にネットワークプレーヤーはSACD、アンプに継ぐ第3の柱と位置づけており、SACD並みの品揃えやリソースの投入で、特に気合いを入れています。さっそく今年は8月に、各種のストリーミング再生に対応し、Grandioso K1と同じDACモジュールを内蔵したフラッグシップモデルの「N-01」を投入し、ラインナップを強化します。

また一方で、商品展開が全体に高額なゾーンにありますので、新しいお客様も入りやすいような価格帯での展開も考えたいところではあります。欧米市場ではハイエンドオーディオのバリエーションはかなり広がっていて、ライフスタイルの切り口で楽しむようなものもある。日本にもそういう潮流が来てほしいですし、そこも機が熟せば、我々もやっていきたいと思うのです。

日本のハイエンドオーディオのマーケットは、我々がリードしなくてはならないと思っています。海外に展開しながら、そこでの経験を活かし、日本の中でのトレンドを見ながら変化にいち早く対応する。そういう体質を強化しておきたいですね。どんな商品であっても、お客様が納得するかたちでご提案できるようにしたいと思います。

また海外ブランドの国内展開では、タンノイ、アバンギャルドはエソテリックが育てて参りました。ここはビジネスの基礎と位置づけ、パートナーシップの絆もしっかりと固め、継続していきます。さらにまた、チャンスがあれば新しいブランドも導入したいところです。

大島 洋

販売店と手を取り合い
国内市場をリードする

ハイエンドオーディオ市場では、新規顧客層、特に若年層の取り込みが課題です。これについてのお考えをお聞かせください。

大島先に申し上げたようなエントリー商品の投入が一つの解になるとは思いますが、まだまだ議論は必要です。ただ、販売店様からのそういった商品に対する期待の声も想像以上に大きいですね。新しいお客様を取り込みたい、より売りやすいものが欲しい、ということだと感じます。その期待に応えられるものであれば、我々はやるべきだと思います。新しいお客様を動員し、その方々が時を経て最終的にGrandiosoのような商品をお求めいただくようであればすばらしいことです。さまざまな方策を考えて参りたいと思います。

お客様の体験の場を拡げる活動や、販売店に対する施策はどうお考えですか。

大島オーディオ専門店様への対応については、これまでと変わるところはありません。お店様に出向いてデモをする、お客様の貸し出しのお手伝いをする、といったことを十分にやっていくつもりです。店頭の試聴会などにも対応させていただき、お客様の声を直接お聞きする機会を活かす。繰り返しの活動でブランドを浸透させたいと思います。一昨年頃からは海外の展示会にも意識的に動いていて、ミュンヘンのハイエンドショーでは、ESOTERICを大きく打ち出したブースを構えました。当社の海外販売は、ギブソングループのオンキヨー&パイオニア株式会社にお願いしていて、販売体制はかなり高い水準にあります。展示会での打ち出し方もそういう意味で、グローバルスタンダードの形になっていると思います。そんな見え方などは、今後もこだわっていきたいと思います。

最後に、販売店の皆様にメッセージをいただけますか。

大島国内の市場で販売店様との強力な信頼関係を構築できたことが、弊社の一番の資産であることは間違いありません。この関係を今まで以上に発展させられるよう、最大限の努力をして参ります。販売店様と一体となってESOTERICのサウンドを体験できる機会を増やし、地道に新規顧客の掘り起こしを行っていく。また皆様から貴重なご意見をいただけるよう、常に活発なコミュニケーション活動を行いたいと思います。今後も変らないサポートをお願いするとともに、我々の新体制に対してもご期待いただきたいですね。

昨今はいろいろなメーカーさんでも海外組の方々がトップになられている状況ですが、日本のお客様がいてこその日本のメーカーだという思いは、我々も強く持っています。これから全国のご販売店様にご挨拶に伺う中でも、直接ご理解いただきたいと思っております。

オーディオ製品は、大切な音楽を聴くための大切な装置です。お客様が聴いて感動し、喜んでいただけることが最終目的。そういう商品を常に提案し続けたいと思います。「世界の逸品を創造するESOTERIC」はこれからも変わらず、海外で鍛えられた結果、日本のお客様にますますご愛顧いただきたいと思っています。

◆PROFILE◆

大島 洋氏 Hiroshi Oshima
1962年11月24日生まれ。広島県出身。85年 ティアック(株)に入社。98年 ティアック香港事務所所長。2001年 ティアック・オーストラリア取締役、08年 コンシューマ・オーディオ・ビジネスユニット商品部長、14年 執行役員同ビジネスユニット長、エソテリック(株) 取締役、17年 エソテリック(株) 代表取締役社長就任。

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