河野 弘

市場の成長へ欠かせない力≠フ根源
勇気を与える商品を率先提案し続ける
ソニーマーケティング株式会社
代表取締役社長
河野 弘
Hiroshi Kawano

高付加価値化を訴え、続々と投入する強力商品。市場からの反響は言うまでもなく、販売を手掛ける売り場最前線にも大きな力≠与えている。市場牽引役としての重責を担うSONY。ソニーマーケティング・河野弘社長に市場創造へ向けた意気込みを聞く。
インタビュアー/永井光晴 音元出版取締役、竹内純 Senka21編集部長 写真/君嶋寛慶

ブラビアを大きく輝かせる
渾身のZ9Dシリーズ

── ブラビアZ9Dシリーズが総合金賞を獲得しました。圧倒的な高画質化が高い評価を集めましたが、河野社長は現在のテレビ市場をどのようにご覧になられているのか。Z9Dシリーズにはどんな思いが込められているのでしょう。

河野現行の4Kより一ランク上の映像表現を可能にする「4K HDR」の商品がどのようなかたちで登場し、コンテンツが揃っていくかが注目されるタイミングに、「4K=高画質」を改めて定義できる商品を世に出していく強い思いがありました。Z9Dシリーズに採用したパネル制御技術「バックライトマスタードライブ」には約3年の研究開発をかけるなど、ソニーの考える将来の高画質をどう提示していくのか、エンジニアのチャレンジがそこにあります。

テレビ離れが指摘されていますが、そこで、テレビの可能性や魅力を未来に向けて広げていくには何が必要なのか。一つはリアリティ。大きな注目を集める様々なスポーツイベントを、その場にいるかのように楽しめる、音のソリューションを含めた高画質や臨場感がまず挙げられます。様々な技術開発により実現するさらなる感動とリアリティの追求は、テレビをコモディティ化させないひとつの鍵を握っており、それがエンジニアのモチベーションにもつながっていきます。もう一つは、新しいテレビの楽しみ方として、ブラビアでもアンドロイドTVを搭載して実現しているネットコンテンツとの親和性。これらをきちんと示していかなければなりません。2005年に登場したブラビアを、Z9Dシリーズによりもう一度大きく輝かせていくことができると確信しています。

── 勇気を受け取った販売店も多かったのではないでしょうか。

河野Z9Dシリーズでは展示会やキャラバンなど事前にご覧いただく機会を数多く設けました。そこでご販売店から高いご評価をいただくと同時に、設定した価格への見解が分かれるなか、「これは売れるよ」と力強い言葉をいただけたのは本当にうれしかったです。本当にいいものが欲しい、そうしたニーズが確固と存在することをいろいろな場面で気づかされます。そこに応えていくことが業界のためにも重要です。技術的な側面とそこから得られるお客様の質的な側面をきちんと伝えられる売り方や店づくりにもさらなる進化が求められています。

最高峰のモデルが売れることで、中級クラス、エントリークラスへと波及していくいい流れが市場には生まれます。満足して先が見えなくなるようなことがないように、最高峰のところでソニーが常にリーダーシップをとり、これはという商品をお客様にお見せしていきたい。かつてのマスにターゲットを当てた、大量生産・大量消費の時代のビジネスモデルからはだいぶ変わってきています。市場の伸長はもう一息ですが、ここから健全化が進んでいくのではないかと思います。

SONYブランドを
可視化するソニーストア

河野 弘── オーディオではホームネットワークの提案や音楽配信とのコンポーネントのセット化が進んでいます。

河野すごく重要な流れです。スマートフォンや音楽ストリーミングサービスなど、多様化する楽しみ方を、お客様に対してわかりやすく提案していかなければなりません。iPhone7ではイヤホンジャックがなくなりました。店頭もブルートゥースコーナーが充実の一途です。ネットワークサービスとの連動はさらに強まり、商品企画でもこうした流れを強く意識していくことになります。売り場や商品の提案の仕方も大きく変わっていく必要があります。

── 御社ではグラスサウンドスピーカーなどの新しい提案も注目を集めています。

河野大きな反響をいただきました。例えば、スピーカーひとつとっても今のスタイルのままでいいのか。コンテンツをいかに楽しむかという視点で、音もののソリューションはこれからかなり変わってくるのではないでしょうか。生活シーンの中でどのように受け入れていただけるか。そこにまたエンジニアのモチベーションが生まれます。このような新しいライフスタイル提案は、グローバルで受け入れられている前例はなく、まず、日本で成功事例をつくることになります。昨日と同じことをしていては、毎年数%ずつ市場は縮小していく。新しいチャレンジがないと、マーケットの成長はありません。

── 市場環境が大きく変化するなか、ソニーでは各カテゴリーで高付加価値に大きく舵を切っています。

河野「4K」「ハイレゾ」「α」の三本が柱になります。それぞれに高付加価値な商品をかなり揃え、提案を強化していますが、そこへの手応えとお客様から寄せられる期待を強く受け止めています。単価の安いものばかり販売していても企業としても成長が描けないし、何より売り場が盛り上がりません。

9月24日、ソニーショールーム/ソニーストア銀座を、GINZA PLACEビルへ移転オープンしましたが、フラグシップモデルであるウォークマンのWM1やブラビアZ9Dシリーズ、プレイステーションVRを体験しようと、もの凄い数のお客様がいらっしゃって行列ができました。ご販売店からも、こうした付加価値の高い商品を率先して販売していこうとする意気込みや遣り甲斐を強く感じています。お客様の期待に応えていき、業界全体を盛り上げるためにも、ソニーがそこを積極的に牽引していく。それがミッションであると感じています。

── そうした商品に触れる場がますます大切になる中で、来年3月には福岡に続いて札幌にもソニーストアをオープンされますね。

河野ソニーの文化やこれからやろうとしていることを感じていただける場。お客様との接点とソニーブランドの可視化こそがソニーストアのミッションと言えます。特に札幌では、カメラビジネスの強化が大きな狙いのひとつになります。ソニーがαにコミットするバックアップやサービスを含めた活動をソニーストアで担っていく。そのためにはやはり銀座だけでなく、プロカメラマンやプロサポート会員が多い主要都市に構える必要があります。

また、福岡同様に、札幌でも支店ソニーの営業拠点をソニーストアの2階に移します。目の前に商品があり、お客様がいらっしゃることで、大変な刺激を受けますし、営業マンとしての大事な感覚を取り戻すことができます。常日頃からお客様に接しているソニーストアの人と直接話ができることも大きな強みになります。

「SONY」ブランドはこれからも常に新しいものを提示し、市場創造へリーダーシップを発揮していく。そのことを強く意識し、使命感を持って取り組んで参ります。

◆PROFILE◆

河野 弘氏 Hiroshi Kawano
1962年6月11日生まれ。1985年4月 ソニー(株)入社。03年4月 ソニー・エレクトロニクス・インク(米国)Consumer Sales Company担当SVP、05年5月 SonyStyle 担当SVP、09年4月 Home Division 担当SVP、10年4月(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント ソニー・コンピュータエンテインメントジャパン(SCEJ)プレジデント、12年4月 ソニーマーケティング(株)代表取締役 執行役員社長(現職)、12年6月 ソニー(株)グループ役員(現職)、12年6月 (株)ソニー・コンピュータエンタテインメント取締役

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