本多健二氏

新しい価値啓発の取り組みに確かな手応え
体験や気づきの場の創造をさらに加速する
ソニーマーケティング株式会社
ソニーマーケティングジャパン
執行役員常務
本多健二 氏

化する商品が私たちの生活にもたらすワクワクする新しい体験。決して一筋縄ではいかないその啓発に、試行錯誤を繰り返し、率先したチャレンジを続けてきたソニー。お客様の驚き、そして喜ぶ笑顔とともに、いま、その確かな手応えを掴みつつある。

感動が伴ってはじめて
驚きとして実感できる

── 商品はもはや従来の概念ではくくれなくなっています。

本多「体験」「体感」の重要性も指摘されますが、果たして何をどう体験して実感いただくのか。ただの機能説明にもなりかねず、試行錯誤しながら取り組んできましたが、お客様の今までの生活にはなかった“ワクワク”を感じるきっかけとなる本当の体験の提供に、ようやく手応えを感じ始めています。

「これからは4Kの時代です」と市場創造を訴えてきたテレビも、それだけでは「壊れていないし、まだ買い替えなくても」という結論になってしまいます。ところがそこへ「Android TV」という新しい機能がプラスされたことで、従来とは違った使い方ができることにお客様が気付き始めました。「こんなテレビなら使ってみたい」という声が高まり、実際、それを理由に買い替えを決断されるお客様が増えています。

ブラビアのネットワークへの接続も、昨年は3割強でしたが、これが現在6割にまで短期間で急増しています。ネットワークにつないでいる方の実に7割の方がYouTubeを楽しんでおり、ほぼ毎日ご覧になっています。これまで、テレビのリモコンでは検索のための文字入力が面倒といった技術的課題がありましたが、Android TV機能を搭載したことにより音声での検索が可能となり、また音声の認識性能が格段と進化し、スマホやタブレット、PCと比べても遜色のない快適な操作性の実現で評価が一新されたと思います。

テレビへの投資に腰が重かった奥様も、例えば「豚肉とピーマン」と音声検索すると、レシピがズラッと画面に出てくる。店頭でそれを実演すると「このテレビは何?」とびっくりされて、商品決定まで驚くほどスムーズに話が進んだという話も聞いています。Android TV機能が入り、まるで白雪姫の話に出てくる魔法の鏡のようにさまざまなコンテンツを映し出すようになったテレビは、もはや新しい生活の一部なのです。このワクワクする新しい体験をお客様に伝えるには、来店していただき、体験いただくこと。カタログなど一方的に得る情報だけでは、なかなか感動が伴わないため、「パソコンでもスマホでもできる」という理解にとどまってしまいます。しかし店頭で体験すると、「スマホでやるより大画面で、パソコンをいちいち立ち上げる手間も要らない」と驚きを体で実感していただけます。特約店の方にはその伝道師となっていただくべく、勉強会や体験会の開催、販売事例の提供に力を入れています。

── 商品がつながり世界観がどんどん広がっていきます。

本多従来はそれぞれの個々の商品単体で完結した世界でしたが、現在は家庭内のネットワークを介してテレビやシアターシステム、スマホやカメラまでも機器同士がワイヤレスでつながります。例えば、スマホを使って音楽しまれる方は国内に2000万人以上いると言われていますが、そのスマホをシアターシステムやスピーカーにタッチするだけで、ワイヤレスでいつも聴いている音楽をより臨場感ある高音質で手軽に楽しむことができます。また、一眼カメラで撮影した写真を高精細な大型4Kテレビに映し出せば、かつてない精細な画像が眼前に広がります。何かひとつの商品購入をきっかけに、日々の生活のステージを大きく引き上げる下地ができあがるのです。市場は決して右肩下がりなどではなく、まだこれから創っていくチャンスが十分にあると考えています。

ただ、テレビを購入目的に来店されるお客様はテレビだけ、オーディオもカメラも同様で目的の商品しか視野にないことが多いと思います。ソニーでは、商品を購入いただいたお客様にカスタマー登録いただくことで、そうした楽しみ方の広がりも情報として提供し、次のきっかけづくりを行っています。

テレビとシアターシステムのカタログを1つにして両開きの仕様にする取り組みも始めました。シアターシステムの購入を検討する最大のタイミングは、やはりテレビの購入時です。その時に頭の片隅に記憶が残り、後にさらに楽しみを広げていただくきっかけとなると思っています。

店頭でも魅力的な展示やデモが「またあの店へ行ってみよう」というきっかけを作ります。ハイレゾ対応ブラビアで、ミュージックオンデマンドのサービスを体験され、「テレビでこんないい音が楽しめるのか」と購入の決め手になった例もあります。

本多健二氏── スリムデザインのX9300シリーズでは壁掛けの提案にも力を入れています。

本多壁掛け時の壁からの厚さは4pを切り、まるで壁に埋め込まれた印象で想像以上に大きな反響をいただきました。テレビが壁掛けになると下のスペースが大きく空き、「配線がごちゃごちゃしている」「掃除がし辛い」といった不満が解消されるメリットも生まれ、小さなお子さんの手も届かないので安心です。そうした新しい価値もきちんとお伝えすることが重要だと実感しました。

実は、ソニーストアで透明なアクリル板を壁に見立てて、壁掛けの仕組みがわかる展示を行ったところ、こんな簡単にできるのならやってみたいとおっしゃるお客様が多かったのです。まだまだ勉強すべき点はあり、お客様のニーズをきちんと掴み、形にしていきたいと思います。

── 御社が牽引されてきたハイレゾ市場も次の段階へさしかかった印象です。

本多今年はハイレゾ商品の構成比を4割くらいまで伸長させたいと考えていますが、そのためには認知率をさらに一段どう上げていくかが当面の課題となります。まず着目したのはコンテンツ。「このアーティストのこの曲を聴きたい」という動機がやはりもっとも重要だからです。生で聴いているかのような感動を提供し、そこからハイレゾを啓発していく。アーティストとの連携をさらに強化して、コンテンツから入るハイレゾ体験の訴求にさらに力を入れていきます。

また、実はハイレゾ機器をすでにお持ちなのに、それを知らずに使っている方が少なくありません。ハイレゾ再生機能を持つスマホは、国内では累計で1000万台以上普及していると推測され、ハイレゾで音楽を楽しんでいただく訴求に力を入れていきます。通常のCDでもハイレゾ・レベルにアップコンバートしてくれますから、ヘッドホンをハイレゾ対応に替えていただくだけで、「こんなにいい音がするのか」と驚かれるはずです。これからスマホを買われる方を含め、スマホ売り場の横にハイレゾ対応のヘッドホンやワイヤレススピーカーを展示して、特約店の皆さまと一緒に体験や気づきのきっかけとなる場をもっと増やしていきます。

生活の豊かさをサポートするのがハードウェア。販売しているのは確かに“モノ”ですが、お客様はそれにより新しい“コト”を手に入れています。一人一人のお客様に合った商品やその楽しみ方をご提案し、ソニーの商品を通してお客様の生活をより豊かにするお手伝いをしていきたいと思います。

◆PROFILE◆

本多健二氏
1960年7月15日生まれ。神奈川県出身。1983年4月 ソニー(株)入社。2011年4月 ソニーマーケティング(株)ホームエンタテインメントプロダクツマーケティング部統括部長、2015年4月 執行役員常務に就任、現在に至る。

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