巻頭言

熊本地震

和田光征
WADA KOHSEI

4月14日夜、震度7の大地震が熊本市益城町で発生した。私は震度7という数字に驚愕した。東日本大震災の折、東京で震度5強を体験し、巨大なビル群が揺れ動く様を見ていたからである。想像を絶する震度7だが、その後震度6強の揺れが次々に起こる。

布田川(ふたがわ)断層帯、日奈久(ひなぐ)断層帯が交わるところが益城町であることが分かった。時間の経過とともに震度7は日奈久断層帯の北側がずれたことで起きたことが分かった。

16日未明、マグニチュード7.3の本震が発生し、布田川断層帯で起きたことが国土地理院から発表された。そして本震の地震エネルギーは阪神淡路大震災の1.4倍だったことが明らかにされた。本震の後は熊本、阿蘇、大分の3地域で地震が相次いで発生している。私は大分県豊後大野市の生まれだが、別府万年山断層帯を初めて知った。本震の影響から18日に別府市、由布市で震度6の地震が発生し、竹田市でも震度5強が発生した。気象庁は「熊本地方、阿蘇地方、大分県中部の離れた3ヵ所で地震が起こるのは前例がない」と言う。

大分県から熊本県にかけては九州地方を東西に横断する「別府─島原地溝帯」があって、多くの断層を伴う地形となっている。1つの断層が動いて地震が起こると断層周辺にひずみがたまり、新たな地震を引き起こす流れが考えられるとのこと。まさに活動期に入ったと言えそうだ。

私は少年の頃から2つの滝に魅せられていた。原尻の滝と沈堕の滝である。沈堕の滝は発電所跡などがあるが、大昔に頼山陽なども訪れている名瀑である。しかし、日本の滝百選には選ばれているのは原尻の滝で、自然のままであるのがとりわけ素晴らしい。

原尻の滝は幅120m 、高さ20mでまさに“東洋のナイアガラ”である。阿蘇山の9万年前の大噴火で九州全土を覆い包み込む大量に発生した火砕流でできた溶岩台地を、長い年月をかけて水が削り落とし、柱状節理の柱を押し倒してできたのである。

同時に今回の地震の多発も、阿蘇の噴火や火砕流との関係が根底にあることを今、思い知らされているところである。そうした意味でこの地域の地盤が頑丈であるとは言えないからだ。早く終息することを祈るばかりであり、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。

ENGLISH