古屋 金哉氏

コンテンツやサービスにさらなる磨きをかけ
お客様を笑顔にする豊かなテレビライフを実現する
スカパーJSAT株式会社
執行役員
有料多チャンネル事業部門
カスタマー事業本部長
古屋 金哉
Kinya Furuya

付加価値型へ大きく舵を切るテレビビジネス。本格復活が待望される中でますます重要視されるのは、単品販売脱却の要とも言えるコンテンツとのシナジー発揮だ。Jリーグやプロ野球の開幕で大きな商機に位置付けられる春商戦。多チャンネルサービス市場を牽引する「スカパー!」を最前線に立って指揮を執る古屋氏に、市場活性化へ向けた意気込みを聞く。

4Kによるサッカー中継は
まさにスタジアムさながらの臨場感
スポーツ中継の見方・楽しみ方が変わってくる!

プロスポーツ開幕の春商戦
地域密着型で潜在層を喚起

── 単なる受像機の位置づけにとどまらなくなったテレビ販売では、多様化するニーズに訴えるためにも、コンテンツの同時訴求は欠かせない訴求ポイントのひとつです。春商戦ではプロスポーツの開幕という、店頭から多チャンネルサービスをアピールする上では格好のシーズンとなります。

古屋大きな2つの柱となるサッカーのJリーグが2月27日、プロ野球が1ヵ月後の3月25日の開幕になります。F1やMotoGPなどモータースポーツも始まり、3月・4月は年間を通しても数多くの方に加入いただける大切な時期です。ひとりでも多くの方にご加入いただき、贔屓のチームを画面の前で応援しながら、ワクワクした毎日を過ごしていただきたい。

スポーツは衛星放送のキラーコンテンツですから、このタイミングにどれだけ多くの加入者を獲得できるかに毎年大変力を注いでいます。そこでのスカパー!の取り組みの大きな特徴のひとつが、Jリーグやプロ野球ではフランチャイズ制を敷いていますので、「鹿嶋アントラーズを応援しよう!」「ガンバ大阪を応援しよう!」「北海道日本ハムファイターズを応援しよう!」と地域密着を徹底して訴えていること。エリアごとにポスターや店頭POP、広告を変えて、地域色を全面に打ち出します。地元のご販売店と一緒になり、潜在層をくすぐるようなエリアマーケティングを、相当細かく展開しています。どこまでそのエリアに合わせた細かな提案ができるかが軸になります。

── 新しい取り組みとしては、再契約の事前受付を始められました。

古屋スポーツチャンネルはどうしても、シーズンが終了すると解約し、来春の開幕とともに再契約されるケースが少なくありません。お客様からも「予約ができると便利だね」といった声を長年いただいており、それにお応えするカタチで昨シーズン終了時にスタートしました。既にとても多くの申し込みをいただき、幸先のよいスタートを切ることができました。

実は、多くのお客様はシーズンが終了してもそのまま契約を続けていただいています。オフシーズンにもいろいろなコンテンツがありますから、是非、1年を通してご加入いただけるようなサービスやそのアピールにさらに力を入れていきたいと考えています。

── 昨年はワールドカップで注目されたラグビーなど、スポーツの持つコンテンツとしての力が改めて注目される一方、オリンピックやサッカーW杯では、かつてのようにテレビ販売へ直結する構図が弱まりつつあります。

古屋インターネット環境の充実やスマートフォン・タブレットの台頭、若者のテレビ離れなどいろいろな要素が混在し、単純な図式でなくなってきていることは確かです。しかし、リビングルームの中央に鎮座し、「おはよう」の代わりにテレビをつけ、「おやすみ」の代わりにテレビを消す。そんな風に生活の中に溶け込んだ存在であることは相違ありません。片手でスマートフォンをいじりながらといった“ながら視聴”も含め、テレビはまだまだ生活のセンターにいると思います。

また、昨今、注目されているのが「ライブ・スポーツ」です。ネットワーク環境が整い、スマートフォンを待ち歩いていると、知りたくないスポーツの結果もすぐにわかってしまいます。タイムシフトでも楽しめるドラマなどと大きく違うのは、見逃したくないスポーツは、皆がライブでその瞬間に立ち会いたいということ。この絶対的な強みは凄く大事にしていきたい。臨場感いっぱいに楽しむことができる大画面テレビでの視聴価値をアピールできる、絶好の機会にもなります。

── プロ野球では昨今、カープ女子≠竍オリ姫≠ネど、若い人の姿が目につきます。

古屋私どもには視聴者に関するビッグデータがあります。契約者はもちろん、実際に見ている人についてもいろいろな調査を行っています。年齢層が高いと思われがちなプロ野球も、調査してみると、実際に視聴しているのは20代・30代の若い人が多いことがわかりました。こうした店頭での販促に活用できるデータはご販売店にも提供しており、今後、店頭での取り組みにうまくつなげられる仕組みを構築していきたいと思います。

何でもあるは何もないと同じ
射止めるのはオンリーワン

古屋 金哉氏── 音楽に続き、映像でも配信サービスが話題を集めています。競合関係でもあると同時に、コンテンツの魅力を訴える上では追い風とも捉えることができます。

古屋ライブ・スポーツとともに大きな強みとして大事にしているのは、編成が備えるコンテンツとの出会いや発見です。VODが陳列しているコンテンツの数は膨大ですから、何を見たいのかがわかっているのであれば映像配信は大変便利。しかしその一方、「この番組面白いな」と普段は出会わない番組に出会えたり、発見できたりするのが、VODにはない、放送という編成されたコンテンツのよさ。そこへ今後は、スマートフォンやタブレットの持つ利便性をうまくミックスしていければと考えています。

メインの放送では4Kをはじめとする高画質化の道をしっかりと行い、今あるサービスをお客様にきちんと伝えていく。一方でそうした新しい利便性のよさもどんどん取り入れていきます。今後、テレビのスマート化の時代を見越し、そうした方向にはどんどん向かっていかなければいけないと考えています。

── 「スカパー!オンデマンド」のサービスも順調に加入者が拡大しているとお聞きします。

古屋登録者数は60万件を超えました。最大のメリットは“いつでもどこでも”好きなコンテンツが楽しめること。例えばJリーグでは、応援に行ったスタジアムでもスマートフォンを使って見ることができますし、他のチームが気になるのであれば、その場でそちらのゲームを見ることも可能です。データも大変に豊富で、Jリーグ・ファンからは圧倒的な支持をいただいており、利用率もぐんぐん高まっています。

スカパー!オンデマンドはモバイルだけでも契約することができます。ただし、料金はテレビを合わせたものと同じため、当初はあまり登録はないのではないかと予想していましたが、ものすごい数の登録をいただき、大変おどろきました。

── コンテンツの魅力やモバイルと連携した新しい楽しみ方で、テレビの価値はもっと高めていけます。単品販売からの脱却は店頭の喫緊かつ大きな課題ですね。

古屋スカパー!も今年で20年。テレビの付加価値としてお客様の購入時の満足度を高め、さらに、周辺商材への波及効果を生み出す、商売を広げる提案を行って参りました。テレビの買い替えは家の中心にあるものが変わる、生活が変わってしまうと言っても過言ではない、まさに大きな商機です。スカパー!では、そこで「これは!」というチャンネルに気づいていただけるよう、常に試行錯誤を凝らしたチャレンジを続けています。「何でもある」は「何もない」のと同じ。今の時代に多チャンネルだけでは通用しません。お客様が「これは見たい」というものを発見できることが重要で、それにはマス広告だけでは絶対にアプローチできない。店頭で接客される家電店さんはそこに大きな強みを持っており、一緒になって需要を喚起することで、テレビ市場を活性化していきたいですね。

古屋 金哉氏4Kを3チャンネル体制に
視聴環境充実が重要

── トピックとして注目される「4K」では、昨年3月に「映画」と「総合」の2つの4Kチャンネルを開局されました。

古屋総合チャンネルでは、Jリーグの試合を毎節放送しましたが、4K画質になると、パーンやズームを多用しなくても、引いた映像のままでボールを追いかけることができます。まさに、スタジアムさながらの雰囲気で、そうすると、「あの選手、走りっぱなしだね」と選手の動きが見えてきたり、チームの戦略が分かってきたりします。それは新しい発見で、スポーツ中継の見方・楽しみ方が変わってきます。

先日、春から初夏に4Kのチャンネルをもう1チャンネル増やすことを発表しました。NexTV-Forumさんの4Kチャンネルが3月いっぱいで終了し、3つ見られたチャンネルが2つになってしまうのはお客様にとっては非常に残念ですから、ここはうちが汗をかいて頑張ろうと決意しました。

当初はゼロからのスタートで、店頭でいかにお客様に説明していただくかを強く意識した編成としていましたが、視聴者も着実に増え、お客様が自宅で見ることをもっと考えていく必要があり、そこを、きちんと切り分けていく狙いもあります。

── 都市部と地方部では普及にまだ差が見られるなど、もう一段ステップアップした普及が期待されます。

古屋画質が良くなることは正しい方向で、それは王道です。しかもテレビが大型化して、60V型ともなるとさすがに2Kでは画素が厳しくなってきます。いわば、4Kは必然で、そこで放送だけが2Kにとどまってはいられません。いまは産みの苦しみ。衛星は地上波に比べて先行できるため、前のめりでやれることはやる。そこからどうビジネスにしていくかですね。

オリジナルドラマとして好評いただいた疫病神シリーズの第2弾として『螻蛄』を2月からスタートしましたが、これは4K HDRで制作を行っています。配信はHDRに対するハードルが低いため取り組みが先行していますが、将来、テレビが配信だけを見るものに変わってしまうわけではありません。テレビメーカー各社もHDRに力を入れる中で、スカパー!ではHDRに対しても積極的に取り組んで参ります。

── 4Kの映像ももっと身近なものにしていかなければなりませんね。

古屋4Kコンテンツの拡充と4Kテレビの普及は、鶏と卵の関係です。4Kテレビを購入しても、まだ、自宅では2Kの映像しか見ていない人がほとんどではないでしょうか。せっかく購入された4Kテレビです。4Kの美しい映像を見る機会が増えれば、市場はもっと盛り上がってくるに違いありません。

スカパー!では、加入の際に必要となるアンテナの取り付け無料キャンペーンも行っており、店頭だけでなく、家でも4Kの映像に接する機会をもっと増やしていくいろいろな方策を打ち出していきます。ただキレイなだけではすぐに満足できなくなることは目に見えていますから、いろいろなコンテンツを提供していくことが肝心です。ここを突破口に、スカパー!でもっといろいろなチャンネルを楽しんでいただける流れを創造していきます。

映像への接し方がますます多様化していく中で、お客様がもっとうれしくなる、より快適なテレビライフの提供こそが、スカパー!の使命となります。サービスの拡充やより魅力あるコンテンツの提供にさらに力を入れ、ご販売店と一緒になって、市場の活性化を実現して参ります。

◆PROFILE◆

古屋 金哉氏 Kinya Furuya
1962年生まれ、静岡県出身。1983年4月 ソニー(梶j入社、J SKY Bへ出向し、2000年2月 (株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT(株))へ入社。スカパー!販売のための家電営業やチューナー製造に対する事業に長年携わる。2014年6月 執行役員、2015年6月 有料多チャンネル事業部門カスタマー事業本部長に就任。現在に至る。

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