伊藤英晴氏

モノづくりへの徹底的なこだわりを貫き
ご販売店、お客様と強い信頼関係を築く
アキュフェーズ株式会社
代表取締役社長
伊藤英晴氏
Hideharu Ito

40年超の年月の中、ピュアオーディオ市場で強固な地位を確立するアキュフェーズ。こだわりのモノづくりや、揺るぎない経営方針で社会に貢献し続ける。10年連続金賞受賞に燃える伊藤社長が、新たな意気込みを語る。

進化した最高位プリアンプ
国内・海外とも好調に推移

── 今年で10年連続の金賞受賞となりました。

伊藤光栄に存じます。審査に携わった評論家先生や流通の皆様に感謝し御礼申し上げます。弊社のプリアンプは、創業翌年のC-200以来、徹底したクオリティ重視の設計と高音質伝送を目指して来ました。そしてC−2800では、抵抗体ボリュームの追放という画期的発想で、アナログ・プリアンプを根底から変えた革新的技術『AAVA』を開発しました。2010年創業40周年記念として、最高位モデルC−3800を発売、AAVAを2回路平衡駆動とした『BalancedAAVA』を搭載、入力端子から出力端子まで全信号系が完全バランスという贅沢な構成としました。

今回受賞したプリアンプC−3850は、さらに理想のボリューム・コントロールを目指し、最新テクノロジーの導入で内容を一新しています。高純度の信号伝送を基に、電源部を強化し回路や全素材・パーツを極限まで吟味、徹底したローノイズ化など、電気的特性のさらなる向上と一層の高音質再生を追求。アキュフェーズの技術の粋と日本の美を兼ね備えた最高位プリアンプとして生まれ変わり、6月の発売後は瞬く間に2ロット完売のハイペースで、売上げに大きく貢献してくれました。国内はもとよりかなりの高額品にもかかわらず海外でも非常に人気が高く、注文も順調、当面は生産に追われる状況が続きます。

── メディアの多様化など、変化する市場をどうご覧になっていますか。

伊藤弊社では現在、パワーアンプ、プリアンプ、プリメインアンプ、SACD/CDプレーヤーが4本の柱。業界全体の大きな伸長はあまり期待できませんが、当社は大きな強みであるクリーン電源、ヴォイシング・イコライザー、チャンネル・ディバイダーなどを活かし、一つ一つ徹底的にこだわったモノづくりを貫きます。デジタル、ソフトウェア技術の積極的な活用でアナログオーディオの限界を超越し、4本柱と互いに連携した形で市場を創造していきたいと考えます。

多様化するメディア、アナログレコードやSACD/CDなどのパッケージメディア、FM放送、ハイレゾ音楽配信等は、全て音楽を楽しむ音源として重要なオーディオソースであり、必需品です。素晴らしい音楽ソースが増えることは大歓迎で、昨今話題豊富なハイレゾも業界全体で大事に育てていかなければいけません。いたずらに数値競争へ巻き込まないよう規格を維持し、お客様が長期にわたって安心して再生でき、音楽を楽しめることを前提とした製品を作らなければいけません。

またオーディオ人口が減少している現在、ヘッドホン関連は若い人や女性が多い希有な市場です。ここで音にこだわりを持つ方々に、ハイレゾの持つ実力を発揮し、より音楽を楽しめるよう、スピーカーで聴く魅力を感じていただく訴求を、関係者で協力して行う必要があると思います。

伊藤英晴氏

高次元の物づくりとブランドで
適正な価格を維持し続ける

── そこでの鍵となる販売店やユーザーへの対策は。

伊藤ハイエンドオーディオは見て・聴いて・触って選ぶことが必須。お客様は販売店で十分な情報交換をして製品知識を共有し、使い方のノウハウを習得、如何に最高の音質を作り出すかを研鑽します。それに伴ってメーカーから販売店様へ、販売店様からお客様へ、サービスを含めて流通経路をしっかりと堅持する必要があり、販売店様には対面販売を基本条件としてお願いすることになります。

弊社が自信を持って開発し製造した製品を、販売店の皆様方に適正な価格で売っていただきたい。そのためにエリアを絞り、弊社の経営方針にご賛同いただけた皆様方だけに販売をお願いしています。これが販売店様の堅実な販売につながり、ひいてはアキュフェーズのイメージやブランド力を高め、強化することにもなります。

またご購入いただいたお客様からの声として、長く故障せずいつまでもサービスが受けられる、音も良く高品質、信頼できる、経営ポリシーがしっかりしている、ユーザーを大切にするなど、音はもちろんですが品質やサービスに対する喜びの声を頂戴し、弊社製品のリピート購入率も80%以上となっています。これからもお客様のご期待にしっかりとお応えするメーカーとして、販売店の皆様と一緒にお客様のため、オーディオ文化発展のために力を尽くして参ります。

── 9月から始まった新しい期の手応えをお聞かせください。

伊藤現在第45期が始まって2ヵ月が経過しました。前期は、消費増税(による売上増)に対しての反動があり、国内は苦戦を強いられましたが、幸いにもドル/ユーロ高の恩恵により海外が好調に推移、通期にわたって国内の不振を補い、最終的には国内外合計で目標値をクリアすることができました。

為替の影響のリスクを軽減するため弊社は海外の販売比率を基本的に30%としていますが、前期の販売では38%に急増しました。特に欧州など海外では日本での価格の倍以上で販売されていますが、最近は高額製品がよく売れています。音や性能・品質など製品の魅力はもちろんでしょうが、弊社の一貫した企業ポリシーや経営姿勢が海外のユーザーに浸透し、理解を得られた結果と自負しています。

── 今後の意気込みをお聞かせください。

伊藤弊社の社是『enrich life through technology:科学技術を通して、人間性の向上につとめ、人類の発展に貢献する』と、基本理念『アキュフェーズを発展させて行く力は、全社員の聡智を結集して、《自らが感動する世界第一級の製品を製造し、正しく販売し、技術的にも、営業的にも業界の質的リーダーになる》という高揚した精神を持ち続けることである』は、弊社のモノづくりの基本です。全社員で40数年間これを頑に守り、実践して来た姿勢が原動力となって現在のアキュフェーズがあります。

会社の規模をいたずらに広げず、利益を社員に還元し、ここ10年は無借金経営を維持してきました。オーディオ好き・音楽好きな全社員が喜びを感じながら仕事をし、徹底的に音や性能・品質・デザインにこだわり、納得がいくまで製品を創り込みます。

品質を徹底的に追求すれば、必然的に信頼性・安全性が高まります。弊社は、経営方針・品質管理体制を長期にわたって維持できるように体制を整備し、品質マネジメント・システムを構築してきました。信頼性の高いブランドとして永久的に存続し、社会に貢献できる会社でなければいけません。

そして良いモノを適正な価格で売れるようブランド価値に磨きをかけ、存在感や影響力の強い企業であり続けたいと思います。お客様に信頼され、心から満足いただける製品を創り続けて参ります。今後とも販売店の皆様の絶大なるご協力、ご支持をよろしくお願い致します。

◆PROFILE◆

伊藤英晴氏 Hideharu Ito
1944年11月15日長野県生まれ。67年4月トリオ(株)入社。73年4月アキュフェーズ(株)入社。技術部、品質保証部、広報宣伝部などに従事。04年 取締役。09年 専務取締役。11年 代表取締役副社長。13年 代表取締役社長に就任、現在に至る。

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