大瀧 正気氏

お客様との接点復活がオーディオ復活の第一歩
体験を促して商品の真の魅力を伝えていく
オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン株式会社
代表取締役社長
大瀧 正気氏
Seiki Ohtaki

オンキヨーとパイオニアAVがひとつの組織となった。2つのブランドを継続し、新たな価値を生み出すべく設立された新体制がスタートしている。これらブランドのマーケティングと製品の販売を担う新会社オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンを率いる大瀧社長に、新たなる意気込みを聞く。

 

やるべきことはまだまだたくさんある
いろいろ提案し、ご販売店様に
発奮していただきたい

異なる集団が1つになり
新たな価値を生み出す

── 大瀧社長率いる新会社、オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンが3月2日にいよいよスタートしました。

大瀧オンキヨーと、パイオニアグループのホームAV、ヘッドホン、電話機事業の部門とが一緒になりました。オンキヨーとパイオニアの2つのブランドを展開し、互いの持ち味と良さを活かして新しい付加価値を生み出そうということです。

私どもオンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン株式会社はマーケティングと製品の販売を担います。私自身としては、オンキヨーでここ2年間は全世界のマーケットを見る立場にありましたが、パイオニア出身のメンバーとともに再び国内のマーケティングに従事することになったわけですね。業界はまだまだ厳しい状況にあります。ただそんな中でも今は、「ハイレゾ」と「ドルビーアトモス」が重要なキラーコンテンツとして存在すると認識しています。そしてオンキヨーとパイオニアのブランドは、それらを展開する上で先頭集団を走っていると自負していますから、今後も手を緩めずしっかりとやって参ります。

新たな組織を形成するにあたってまず私が掲げたのは2つ、「ハイブリッド営業」と「OneTeam with Onkyo&Pioneer」ということ。違うものをうまく組み合わせ、掛け合わせて新たな価値をつくる。商品についてもチャネルについても、両者をうまく融合させ、新たな生産性を生み出す。それにあたって、異なる組織だった者同士が1つのチームとなって、しっかりとモチベーションを上げていきたいと考えます。これをスローガンとして全社に伝えました。

オンキヨー、パイオニアのそれぞれのブランドの位置づけや差別化などについての政策は、これから具体化していきます。今年度に投入される製品については我々が合流する前に決まったものですから、ハイブリッドアクションとして新たに企画し付加価値を出していく製品が登場するのは、現実的には来年度以降となってきます。現状としては1つのチームとなってコミュニケートしながら、互いの得手不得手を全部出しつつ、製品構成やチャネル政策を摺り合わせているところです。

── 販売店対応はどのようになるでしょうか。

大瀧量販店様向け、専門店様向けと社内でグループを分けています。また別途インストールビジネスのグループもあります。この市場では特に家まるごとを取り扱うインストールビジネスの芽が出ており、今後も注力したいと考えます。

さらにパイオニアのPASS法人様に対しても注力していきます。PASS法人様の再強化を目指すとともに、専門店強化策を重点戦略として、パイオニアとオンキヨーの両ブランドを展開します。ご販売店様にはご挨拶に伺っていますが、今回の再編に対して理解を示していただいています。業界が置かれた状況の中で、同業の会社は呉越同舟の様相になっていますが、こうした中での新たな価値提案が期待されていると感じます。

ハードとソフトの両輪で
キラーコンテンツを訴求

大瀧氏── 昨今の市場の動向はどうご覧になりますか。

大瀧2月にオンキヨーでハイレゾの世界戦略を発表した際ご説明したように、グローバルでのホームオーディオの市場規模は3兆2000億円と想定されます。およそその半数がハイファイとホームシアター、AVレシーバーといった据置型オーディオとなります。あとの半数がモバイル系オーディオが占めています。ヘッドホンやUSB  DAC、ワイヤレススピーカーといったカテゴリーですね。つまり、オーディオのビジネスを推進する上では、モバイル系と据置型の双方が必要なのです。

昨今の音楽リスニングのスタイルには、アウトドアとホームの両方があります。スマートフォンが普及して、若い方々の間ではアウトドアリスニングの形態が先行し、コンテンツを入手するにも従来のパッケージでなくダウンロードが一般的になっています。私どもでは音楽配信サービス「e-onkyo music」を展開して8年目になりますが、今ハイレゾで非常に注目され配信件数も伸びています。ハードとソフトの両輪でハイレゾを推進していく流れが、はっきりとした形となりました。2ブランドではこの流れの中で、ハイレゾをフックにアウトドアとホームオーディオの訴求をしっかりとやって参ります。

── ハイレゾの存在は大きいですね。

大瀧ここ数年間、オーディオはアップルさんの商品の影響を受ける側面がありました。iPhone、iPodなどのデバイスやiTunesとどう親和性を持つかが、オーディオ機器を企画する際の根本にありました。それが今、ハイレゾという新しいキラーコンテンツが出たことにより状況が変わろうとしています。コンテンツを提供するアーティスト側でも、ハイレゾで録音して残したいという人が多くなりました。

日本ではこのようにハイレゾがはっきりと浸透しています。ただアメリカやヨーロッパではストリーミングサービスが浸透しており、これが一般的なリスニングスタイルとなっています。日本に上陸しようとしていますが、今後の動きには注視しなければいけません。

もうひとつのキラーコンテンツであるドルビーアトモスは、AV・ホームシアターの活性の鍵。そしてDTSからの新たなコンテンツも期待されます。オンキヨーでは昨年イネーブルドスピーカーを投入してドルビーアトモスに注力していますが、この体験をさらに広げて普及につなげるのが直近の大きなテーマになります。

── 体験を促す店頭訴求がますます重要になりますね。

大瀧ハイレゾもドルビーアトモスもコンテンツが鍵であり、ここを強化するためには、コンテンツリレーションが重要になります。我々はオーディオではe-onkyo musicのハイレゾコンテンツを店頭デモに使用していますし、AVでは映画の配給元との協力体制で、ドルビーアトモスのコンテンツを使用しています。ドルビーアトモスの展開には配給元も慎重な部分はありますが、私どもで背中を押し、一緒に訴求しているのです。ハードメーカーはどうしてもコンテンツに対する考え方が後手になりがちですが、ハードとソフトを車の両輪として推進する考え方を、今後もしっかりと貫いて参ります。

若者層を導き
休眠層を掘り起こす

大瀧 正気氏── オーディオではおっしゃったとおり、モバイル製品の展開が注目されますね。

大瀧これまで我々はハイファイに注力してきましたが、モバイル系にも本格的に取り組んで参ります。先日あるイベントで目の当たりにしましたが、若いお客様はポータブルプレーヤーにポータブルヘッドホンアンプ、ヘッドホンで「アニソン」を聴いていますね。そしてその世界でもハイレゾがたくさん訴求されています。

しかし若者たちは、ハイファイのアンプの存在を知らないのです。ただ体験によって、同じハイレゾでもハイファイの装置で聴くと違うのだとわかります。こうした人たちを、まずアウトドアからホームに連れて来る努力をしなければ。そこの啓蒙活動は大事です。アウトドアのカテゴリーでもハイレゾが指向され、いい音を目指すベクトルでいいところまで来ているのはチャンスだと思います。

また私どもでは、CDレシーバーのシステムで15年のロングランヒットとなっている「FRシリーズ」があります。累計170万台売れていますが、歴代のユーザーの皆様は今、休眠していると考えられます。

── FRが登場した頃と今とは、音楽やオーディオをとりまく状況がまったく変わっています。ネットワークが誕生し、音源はPCやスマートフォンに蓄えられているとすると、歴代のFRのお客様は困っていると思います。このお客様はオーディオのマニアではないけれど音楽を聴くことが好きで、そのために投資をしてくださるわけですから、何とかしなくては。

大瀧そういう方々に向け音楽の新しい楽しみ方の気づきを与えられるよう、情報発信が必要だと思っています。そしてステレオスピーカーで音楽を楽しむということを、もういちど啓蒙する必要があります。社内でも、FRこそ「The Stereo」と認識して、お客様を掘り起こそうと今発破をかけているところです。「170万人のお客様が地中にもぐっている」と言っています。

FR誕生から今迄の間に、iPodやiPhone、そしてiTunesが登場して環境が大きく変わりました。ここにきてハイレゾが注目されており、「ハイレゾコンポ」の提案もできることになります。やることはまだまだたくさんあります。いろいろなご提案ができますし、それによってご販売店にも発奮していただけると思います。

お客様との接点を高め
店頭での体感を促す

── お客様との接点がポイントとなります。

大瀧れまで社内の意識は販売台数や金額だけに集中していましたが、今はお客様との接点を幾度もったかの数字の目標を掲げており、営業スタッフは喜々として出掛けています。お客様との接点を復活することがオーディオ復活の第一歩と思っています。

そしてマーケティングの手法も変えました。これまではどちらかというとビフォアマーケティングで、プレゼンをどうするか、販促物をどうするかを商品を出す前に云々しましたが、今はアフターマーケティングが重要。商品を出してからのお客様との接点活動です。

今はもうSNSの時代。お客様との対話の手法も以前とはまったく違います。社内の会議でもSNSで起こした事例をどんどん挙げさせています。クリックアンドモルタル、販売接点におけるネットとリアルは両立するはずと言われ、そのキーを握るのがコンテンツリレーションと考えて実践しています。お客様に体験していただく訴求でなければ、商品の真の魅力は伝わりません。手間ひまかけても、ポイントとなるところでは特にしっかりやらなければと思っています。

── 新たな組織でのご活躍、ますます期待しております。

◆PROFILE◆

大瀧 正気氏 Seiki Ohtaki
1947年8月生まれ、長野県出身。2008年10月オンキヨー(株) 国内営業部長に就任。2010年12月オンキヨーマーケティングジャパン(株)代表取締役社長、2014年6月オンキヨー(株) 取締役に就任。2015年3月 現職に就任、現在に至る。

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