加藤修一氏

テレビの単価が上がってきた
台数が回復すれば、期待できる
(株)ケーズホールディングス
代表取締役会長兼CEO
加藤修一氏
Shuichi Kato

家電販売を取り巻く状況が大きく変化する中でも、機敏な対応で安定した経営を続けるケーズホールディングス。家電業界に復調の兆しが見える中で迎える2014年、本来の成長路線へ着々と前進する同社の加藤会長に、年頭の意気込みを聞く。

 

eコマースがリアル店舗の存在を脅かすことは、ない

あれもこれもできる商品は、
つまらない

テレビが下げ止まり
家電がいよいよ復調

── 1年ぶりにお話を伺います。昨今の家電をとりまく市況をどうご覧になっていますか。また4月に控えている消費税の増税も気になる要素です。

加藤 アナログ停波から2年間連続でテレビの月次売上げが下がり続け、それによって当社の既存店の売上げも下がる現象が続いていました。アナログ停波でテレビが余分に売れすぎたから、その反動でしばらくの間需要が減っても仕方がない。しかしテレビ以外には売上げの大きな変化が起きていないので、この間当社は特に慌てることなく特別な対策はせずに来ました。

そして13年8月からテレビが前年を下回らなくなりました。台数はまだ戻っていませんが、大型化が進んで単価が上がってきた。家電業界の売上げはやっと底をついたということですね。

その結果、当社の既存店の売上げも下げ止まり感が見えてきました。本来店で売れていいはずの力に対して一時80%くらいまで落ちましたが、現在は90%くらいの状況です。その中で収益を十分出せるのであれば、稼働率が100%となるともっと利益が出る。当社はそういう感覚でいます。

テレビの需要はここから先、2020年の東京オリンピックに向け、ゆっくり復調することになると思います。テレビの売上げの中で大型モデルの比率が上がり、さらにそこに4Kも入って単価が昨年以上に上がっています。

今後台数が横ばいになりもっと回復してくれば、かなり期待できると思います。また白物家電についても高付加価値、高単価の商品が売れるようになっており、これも売上げを引き上げる要因になっていますね。

家電の落ち込みについて、世間ではエコポイントの影響がずいぶん取りざたされましたが、エコポイントの反動による落ち込みは、実際はほんの数ヶ月分しかありません。今年は消費税増税も控えていますが、これもせいぜい数か月先の分までの需要の駆け込みと見ています。ただテレビの場合だけは、アナログ放送の停波で日本中のテレビが買い替えの必要に迫られました。その影響がここ3年間ほどで特に大きかった、落ち着いて見ればそういうことですね。

消費税については、かつて3%から5%への切り替え時には2月頃から売上げが上がってきて、3月には前年比+35%ほどの水準でしたから、今回もそれに近い動きになると見ています。お客様は直前にならないと動かない、ということはそこで買われるものはその少し先に買われるはずだったものですから、反動が出るのはせいぜい数ヶ月から半年間くらい。1〜3月で駆け込みがあり4〜6月に反動が出るイメージで、長期に影響があるとは考えていません。

また駆け込みで売れる中でも、工事を伴う大型商品はおそらく3月中に納品ができないものもあるでしょう。POS上では売上げていても、決算上は配達が完了していないと売上げになりません。それで決算上での3月のヤマは半減すると思います。POS上での売上げ増が35%でも、決算上は20%くらいというところ。それが次年度の4月に繰り越し、反動の谷も20%くらいになるので好都合ですね。

消費税増税の影響は、13年度の年間の数字に対して2%程度の伸びとなり、14年度で2%程度の減となるでしょう。しかし当社は14年度以降は5%〜10%の成長を考えていますから、2%のハンデを吸収して増収増益と見ています。

しっかり先を見据え
従来の増収増益ペースに

── 御社の2013年度の見通しはいかがでしょうか。

加藤 13年度は前年度プラス6.7%の計画ですが、消費税の影響で2%ほど上ぶれして8%程度になると見ています。当社の本来の水準は10%成長ですから、回復はまだ完全とはいえません。ただ11年度、12年度と、それまで64年間連続した増収が途絶えた状態からは元に戻ったというところです

── 2014年度以降の出店計画はいかがでしょうか。

加藤 出店については、物件の確保ができるかどうかにも左右されます。毎年40〜50店ほど出したいと思っていますが、今期は35店の計画です。来期も50店出店できるとは限りませんが、40店くらいは出店したいというところです。

出店のペースは毎年40〜50店くらいと目標を変えていません。一生懸命探していい物件があれば出しますし、なければ無理して出さない。以前当社は景気が悪い時、地価が下がっている時に出店する方策でしたが、最近は建築費が上がっていますし、ホームセンターやスーパーもどんどん出店して物件を見つけにくく、そう容易には出せません。

店の規模は、大きな市場には大きな店、小さな市場には小さな店と、出す場所の商圏にあわせて決めています。平均的に規模は大きくなっていますが、小さな店を閉めているからでもあり、大規模店ばかり意図的に出しているわけではありません。

出店エリアは南関東に向けて拡げていきたいところです。南関東は人口密度が高く魅力的な商圏ですが、土地を見つけるのが困難ですね。当社は多層階の店でなく、できればワンフロア、難しい場合はツーフロアでつくります。

多層化するとレジが増えてコストがかかりますし、カテゴリーの分け方やレイアウト、商品の配置も難しい。ワンフロアの方がそういう悩みは少なくなります。またフロアが広い方が余裕のあるレイアウトができお客様も動きやすいですね。ただ神奈川あたりで5,000坪や10,000坪の土地などそうあるものではありませんからなかなか難しい。しかし待っていればいつか見つかると思っています。

ケーズデンキで撒いているチラシがカバーしているのは日本の全世帯のまだ45%で、店を出すべきところはたくさんあるわけです。全国を探しながら有利な物件がみつかった場所から出していければいい。さらには飛び地でなく、既存店と地続きで面展開できるのがベストです。

── 御社の企業理念、社員を大事にし、取引先を大事にすることで、お客様も大事にできるという考え方が、困難な時代には特に大きな力になりますね。

加藤 アフターサービス満足度ランキング家電量販店部門(ネットショッピングを除く)N0.1」の企業に、4年連続で選ばれました。また、今回は「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の実行委員長賞にも選ばれました。「従業員、取引先、お客様、地域社会などの企業活動に関わる多くの方を満足させることを経営の方針として、すぐれた企業行動を実践している」と認めていただいた結果です。

景気の良くない時に人員削減したり、取引先に無理難題を押し付けたりしてバランスをとろうとする企業があるかもしれませんが、当社は最初からずっと「がんばっていない」ので、そういうことをしなくて済むのです。成長が著しくなって急に頑張ってしまうと、無理が生じます。景気がいいときは商品がよく売れますが、当社では必要以上に拡大させずエンジンブレーキをかけて引き締めていきます。

景気が良くなり、既存店で前年比が10%も伸びるようになれば、社員をそちらに振り分けなくてはならないと考えます。そんな時に新店をつくると社員の手がとられてしまいます。

だから景気のいい時に店舗数を拡大させることは考えず、既存店の10%高まった稼働率で売上げと利益を出して行きます。そして景気が悪くなり、店の売上げが落ちたら社員を別の忙しい店に異動させて店舗人員の最適化を図ります。売上げが落ちてもあまり利益は減らないのです。

その逆をやってしまって売上げがいい時に店舗数や人員を拡大してしまうと、売上げが悪くなった時に人が余り、リストラしなくてはならなくなります。これは下手な経営なのですね。先々をしっかりと見て、難しそうなら採用を控えておいて稼働率を高めて乗り切ると、売上げが下がっても楽なのです。

リストラをやってしまうと、そこで辞めた人は会社を恨みます。恨みをもった人が会社内外に沢山いる経営など、うまくいくわけがありません。それは社員にかかわらず、取引先も、お客様もそうです。

── 「あんしんパスポート」への加入者数も増えていますね。

加藤 加入者数は現在2,200万人超となっています。お客様のご購入履歴を記録しておいて、アフターサービスや後から消耗品を買われる際、またリコールの際にも役立ちます。保証書をなくされた場合も購入日が記録されているので対応できます。発行しておりますカードは、レジでお客様のご登録名や電話番号などをいちいちお尋ねしなくていいようにするためのものです。お客様にとって安心なパスポートとして、ご好評をいただいています。

ローコストを求めるため、同じものを少しでも安く提供しようとしてお客様のアフターフォローのコストまで削ろうという会社もあります。しかし当社にはそういう考え方はありません。必要な費用はかかっていいのです。要らないものは要りませんが、必要なものまで削っていいとしてしまうと、値切ることでしか勝負できなくなります。

お客様とのトラブルが発生したら、そこでコスト意識をもってはいけないのです。トラブルは確実に解決できるのがいい会社だと思います。過失相殺でお客様にも落ち度があるようなことを言っていては、いい店にはなりません。お客様がそこで無理矢理に納得されたとしても、その店のファンにはなってくれませんね。当社ではそんなことはしません。

eコマースが伸びて
活躍するのは家電量販店

加藤修一氏── 昨今HEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)の関連商材が次々と出てきました。御社は設備系の商材には注力されない方針ですが、これまで単品販売だった家電が将来HEMSと関連していく可能性もあります。

加藤 本当にそういう時代が来れば取り組みたいと思いますが、それは数年レベルでなく何十年も先かもしれません。太陽光やリフォーム関連商材も扱ってはいますが、私どもは家電量販店という仕事の中でそういう分野を得意としていません。むしろ地域店の分野だと思います。

こうした商材はひとつ決まれば売上げも大きいですが、1人のお客様に時間をかけて個別に対応する必要があり、手法をパターン化することはできません。手がかかるために人を増やしたとしても、増やしたほどには売上げは見込めない。そういうわけで当社では、これまで通り家電量販店の得意分野をやっていきます。

── 昨今はeコマースがますます発展しています。どうご覧になりますか。

加藤 eコマースで家電販売を伸ばしている会社というのは、私には思い浮かびません。

おそらくeコマースの会社さんにとって家電販売は大変な労力だと思いますから、家電量販店に出店させて任せたいのではないでしょうか。実際に多くの会社さんが出店方式でやっておられますね。家電販売においてeコマース対リアル店舗とよく言われますが、現実をよく見ると結局はeコマースに出店している家電店同士の戦いなのです。

eコマースが伸びると家電量販店はだめになると言われますが、eコマースが伸びる時に活躍するのが家電量販店ではないでしょうか。かつて家電量販店がテレビショッピングでも販売した時代もありました。eコマースもいろいろある売り方の手段のひとつだということです。

eコマースでの家電販売で注目されるのは価格だけです。お客様は実際に商品を買う際はアフターサービスや保証、丁寧な接客などの要素も求めておられるのに、ネットとなると値段が高いか安いかにしか言及されない。リアル店舗では、お客様は総合的にいろいろなことを判断した結果で購入されていると思いますが、ネットになったとたんに価格以外の要素が無視されるのが不思議です。

当社も自社のオンラインショップをもっています。しかしお客様が店に来てくださるのに、ネットで注文してくださいと誘導するようなことはしません。お客様のその時々のご都合により、ネットでの注文にもしっかり対応するということです。

店舗が近くにないような地域は、ネットへの依存率が高まることもあるかもしれませんが、店に行くのに1時間もかかるため、ネットでの購入を主とせざるを得ないという方の需要は少ないと思います。

当社でもネット販売は増えていますが、今後もそう極端に伸びることはないでしょう。現在は売上げの1%程度で、遠い将来10%になるかどうかというところでしょうか。当社では、ネット販売に特に注力する考え方はありません。

お客様は、商品を実際に触れて確認したいのです。店を訪れているのに、わざわざネットで注文し直すことはしないですよね。「ショールーミング化」と言われていますが、そんな面倒なことをする方はそう多くないと思いますよ。店に来て値段がネットと一緒になるなら、そこで買った方がずっと早いですから。

── では、eコマースがリアル店舗の存在を脅かすことは。

加藤 ないと考えます。もしそうならばとうの昔にテレビショッピングや通販に逆転されているはずですし、メーカーが自社サイトで売って、流通はいらなくなるはずです。しかしもし実際にそうなったら、メーカーが新しくつくる商品がお客様に知れ渡ることがなくなり、メーカー自身も疲弊するでしょう。

商品を見せる場があって、在庫管理や流通のシステムをもっている、つまりリアルな物の動きを押さえているところがもっとも強いということです。eコマースだけをやっている会社だと、全国に物流の倉庫を用意してたくさんの品揃えをし、在庫をもたなくてはなりません。しかし注文はすべてネットで来ますから、いちいち倉庫から商品をピックアップしてお届けしなければなりません。

店頭販売ですと6〜7割の商品はお客様が自らレジに運んでお金を払い、持って帰っています。この方がローコストですよね。1,000、2,000円の商品をいちいち包装して宅配したら、どうしても送料として100円や200円はかかるでしょう。

結局は、全国に流通ネットワークをもっている量販店こそがeコマースでもローコストでオペレーションができるのです。お客様との物理的な距離も近く、在庫を持って商売をしているわけですから。店舗での売上げにeコマースの売上げがプラスαとして加わるだけで、あらためてコストがかかるのではありません。新たに在庫を用意したりシステムをつくったりする必要もありません。そういう状況で実際にネットで買うお客様が増えたら、それが一番強いと思いますよ。

お客様が本来求める
ものは何か

── 2014年はどんな年になりそうですか。

加藤 ここ数年はテレビが下がり続けた影響を受けてきましたが、これがようやく下げ止まりました。これで売上げも下がらなくなり、場合によっては少し伸びるかもしれません。当社では既存店に新しい店が加わり拡大していきますから、安定的な成長路線に戻れるということです。テレビが下がらなくなったことが、2014年からいい影響を及ぼしてくるだろうと思います。

ここ数年を振り返りますと、テレビ販売で量を追うことが一番という変な価値観がありましたね。メーカーが量のことだけを考えた結果、いろいろなことがおかしくなりました。しかし日本のお客様は、4Kテレビのような新しい高付加価値商品にちゃんと反応してくださる。そういう価値観があるのです。

今スマートフォンが浸透していますが、私には画面が小さく見づらいので、通話とメールの使い勝手がいい携帯電話、ネットなどはタブレットと使い分けています。少子高齢化で老人が増えるのに、スマートフォンばかりをもてはやすのもどうかと思います。

お客様が本来求めているのは何か、真剣に見極める必要がありますね。本当に必要とされるものと流行とはかけ離れる場合があります。特に年配の方など、安いだけではなく本当にいいものを求める価値観をもっています。

たとえば最近クリーナーで、ロボット掃除機とハンディクリーナーを両方もって、機能を使い分けるといった動向が見えています。これまでのような万能な掃除機でどこでも掃除する考え方から変化してきたのですね。

これまで日本のメーカーは、多機能で高性能なところばかり追いかけて、1つの機能に特化した良い商品をつくろうという価値観や多様性に欠けていたように思います。そして量で負けないという考え方で競争が過剰になり、自滅した感があると思います。今日本の市場には、特化したつくり方のうまい海外メーカーがどんどん入ってきました。日本には高い技術があったはずなのに、どうしたことでしょう。

あれもこれもできる商品は、つまらない。何でもできるということほどつまらないことはないのです。これから日本のメーカーは、そういうことによく思いを巡らせ、ぜひ新しいかたちで復活を果たしてほしいと思っています。そして2014年は、そうした新しい価値の商品にも期待したいですね。

◆PROFILE◆

加藤修一氏 Shuichi Kato
1946年4月7日生まれ。茨城県出身。69年3月東京電機大学工学部卒業。同年4月(有)加藤電機商会入社。73年9月(株)カトーデンキ代表取締役専務、82年3月よりカトーデンキ販売(株)代表取締役社長。2011年6月に(株)ケーズホールディングス代表取締役会長兼CEOに就任。“人”を尊重する企業風土と無理・無駄・ムラのない「がんばらない経営」で安定的な成長を続ける。

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