巻頭言

新たなる出発

和田光征
WADA KOHSEI

2012年3月決算を控えているが、日本の企業の70%が赤字であるとの情報が飛び交っている。銀行筋によると、かつてこうしたことは全くなく、初めてとのこと。それほどに企業が、一部を除いて危機的状況に陥っているということである。

その要因は、1000年に1度という東日本大震災と福島第一原発の事故、そして放射能という目に見えない悪魔との戦いがまず挙げられる。そしてタイの大洪水、対ドル、ユーロによる急激な円高の直撃、そして世界的な価格破壊による収益なき戦い等々が追い打ちをかけるように襲い、産業界は疲弊していった。行政の稚拙さ、意識の低さ等々もそれらに拍車をかけたと断言できよう。そんな負をいっぱいに抱え込んでの2011年度決算。赤字企業70%というのも得心のいくところである。

振り返ればリーマン・ショックの影響下の2010年度決算で、各企業は負の部分を処理し、いよいよ成長戦略へ舵を切っていこうとしていた。東日本大震災や原発事故はそんな折に起こったのであり、成長戦略のプランは頓挫、企業は苦境の淵へ誘われ、そこから前述のようなことが次々に襲いかかってきたわけである。

これ程の禍いをもたらした2011年を、どう位置づけ、認識して記憶していくべきか。それが脳裏を占領している今日この頃である。赤字企業70%と聞かされ、その思いが膨張していくのである。2011年という負の部分が、2012年にどう影を落としていくのだろうか。そして国家そのものは、どう変革されていくのだろうかと深く思うのである。

あらゆるところで変革の嵐は吹き荒れ、そして正道を見つけ出し、人々はまた明日へと歩を進めるのだろうと思う。そういう意味において2011年は特別であり、3月決算後は「ここからはじまる」新たなるスタート台にあることを認識し、常に意識すべきだと思うのである。2011年に襲いかかり破壊をもたらした負の部分を払拭し、3年先、5年先、或は10年先を見据えたプラスの計画へと転換させ、正常な歩みをしっかりとしていかなければと思う。天災はともかく、人の関わる部分の負は依然としてつきまとうと思われるが、我々はそれを巨大化させない方向を見つけ、確実に掴まえなければならない。

私どもは、微力ながら業界が建設的に発展するよう全力で取り組んでいきたい決意である。そして「いつもお客様のそばに」の理念で力強く歩みを進めたい。

幸いに小社運営のポータルサイト「ファイル・ウェブ」が巨大化、月間100万人余の来訪者と月間1200万ページビューを保持し、業界ばかりでなく多方面から注目を集めている。我々は新規にコンビニエンスストアと提携し、「スマートプラス」という雑誌をローソン様、ファミリーマート様、サークルKサンクス様等々で3月10日に発売する。この提携はまさに「ファイル・ウェブ」の認知度の高さを明示する証左である。いずれはセブンイレブン様との提携も視野に入れ、お客様を業界に誘導したい。また、ピュアオーディオ最大のアワードである「オーディオ銘機賞」も、中国の有力雑誌との提携により、東アジア向けに発表したいと思っている。

様々な禍いに見舞われた2011年という年を忘れず、我々はさらにチャレンジを続けて業界発展に寄与したい。そんな思いでいっぱいである。

まさに「ここからはじまる」。新たなスタートである。

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