本田統久氏

ご販売店の要望に応える形を追求
最適な営業体制がついに整った
(株)ディーアンドエムホールディングス
国内営業本部 本部長
本田統久氏
Motohisa Honda

デノン、マランツという国内2大ブランド、そしてマッキントッシュを擁するディーアンドエムホールディングスが、大きな組織改革を遂行した。マーケティングカンパニー制を解消し、営業体制を一本化。一層強固になった布陣で国内営業本部長に就任した本田氏に、新組織の概要とオーディオ拡大に向けての意気込みを伺った。

 

オーディオはこれから上がるはず
ご販売店様とどれだけやれるかが鍵

デノン、マランツを集結させた
新営業体制がスタート

── 御社ではこのほど、大きな組織改革がありました。あらためてその内容をご紹介ください。

本田 これまで存在していたデノンコンシューマーマーケティング、マランツコンシューマーマーケティング、マッキントッシュ ジャパンというカンパニー組織を解消、ディーアンドエムホールディングスの国内営業組織として一本化しました。デノン、マランツのブランドはそのままに、そしてディストリビューターのブランドについても、同じディーアンドエムホールディングス国内営業組織の中におき、全てここで集中的に管理運営して参ります。

これはもともとディーアンドエムホールディングスという組織になったときからの国内における課題でもありました。日本だけが独立したカンパニー組織になっていたのは日本独自の市場環境やブランドアイデンティティを保つための方策でもあったのですが、市場環境も随分と変化してきました。またグループ内のコンペチター意識から脱却し、ブランドの成長のために販売部門は複数ブランドを持つことによる新たなスケールメリットを追求しつつ、カテゴリーごとにある独自な市場のニーズを的確につかむことに徹することが必要ではないかと考えた次第です。

ブランドアイデンティティは大変重要な点ですが、デノンもマランツもその他のブランドも各々の長い歴史の中で十分に培われており、我々はそれを見失うことなくキッチリと現場で訴求していくべきであると考えています。また新たな商品軸では、汲み上げたユーザーニーズと従来から持つアイデンティティを融合させた商品企画づくりをしなければならないと思っています。

ご販売店様がメーカーの営業担当に求めるのは、コミュニケーションを密にすること。特に専門店様では、メーカーさんの販売組織が簡素化されていく中、営業担当者とのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが少なくなったといった声も聞かれます。また量販店様では、本部での決定事項を店頭まで一気通貫になるようサポートしてほしいといった声があります。そこで、そうしたご要望にお応えできる体制はどうあるべきかということを十分に検討しました。

これまでの我々の組織を振り返ってみると、マランツはデノンの組織より人数が少なく、せっかくお取引きコードがありながらなかなか訪問できないお店様がある。またデノンは量販店様、専門店様とも日本コロムビア時代からの長いおつきあいがある反面、セグメントがはっきりしないといった状況でした。今回はそうした問題を解決し、ご販売店様の皆様のご意見も確認しながら、メリットに換えていくことが十分にできるという判断の中での改革ということになります。

営業組織は5月から、経理上では7月からのスタートとなり2ヵ月ほど経ちましたが、ご販売店の方々はまったく違和感がない、むしろウェルカムだというご反応です。今後さらに統合の効果を発揮していかなくてはなりません。私どもだけではなく、ご販売店様の皆様にも「問題ない。むしろ良かった」と言っていただけるように最大限の努力をして参りたいと考えております。

── 全体の営業体制はどのように整備されたのでしょうか。

本田 これには相当時間をかけ、データをもとに全国のご販売店様への実際的な対応に則した編成をしていきました。最も気を配ったのは、お店の方々にとって違和感がないようにすること。まずそれぞれの担当店をある程度継続していきながら、取り扱い品目の多い専門店様では従来の営業体制をそのまま継続したという部分もあります。またある店舗についてはやるべきことが決まっているため、その最適な訪問頻度を踏まえ、配置を1人としたところもあります。

法人様や店舗により求められるものが違いますから、これまでのデータに照らし合わせ、1人あたりに最適な担当店舗数を割り出しました。訪問回数のバランスも考慮し、不備のないよう割り振っていったのです。

── 一人一人が取り扱うブランドも商品数も増えました。

本田 デノン、マランツともに双方のブランド商品をよく把握するため、勉強会を徹底的に行いました。商品づくりのコンセプトについて、同じディーアンドエムグループの中であってもお互い知らなかったことを知るいい機会となり、お互いの訴求の仕方を理解した上でより効果をもたらすアプローチも考えることができました。営業現場、本部ともにこの自社内勉強会は継続的なアクションとなりますが、一番いいかたちになったと思っています。

また新しい空気が送り込まれたことで営業マンのライバル意識が高まり、社内的にいい意味での刺激になってきています。仲良しグループでは組織が活性化しませんし、組織的に非常にいい効果をもたらしています。

本田統久氏コミュニケーションが
より一層密になった

── 強固な営業体制で、ブランド別商品戦略もより強調できますね。

本田  そうです。ブランドの位置付けは明確になっています。おかげさまでデノンは昨年100周年を迎え、マランツは再来年60周年となりますが、お客様からはそれぞれのブランドの商品や音づくりをよく理解していただいています。特に我々にとってのコアビジネスにあたるハイファイオーディオでは、商品のモデルチェンジをしつつ、新しいフィーチャーも常に提案していきたいと思っています。

また新しいカテゴリーの商品については、お客様のニーズが少し違います。新たなユーザー層は音質も重要なファクターですが、それ以上に使い勝手やデザインといった要素が優先されています。そうなってくると従来の流れだけでは対応できないところがありますので、そこはニーズに合わせた商品展開をしていかなくてはならないと考えています。

今回、営業組織のみならず商品企画面のプロセスの改革にもディーアンドエムホールディングスとして着手しています。販売側がキッチリと提案すべき商品群と、技術企画側が提案すべき商品群をセグメントしたマーケティンググループのあり方を変革させることにしました。

各ブランドの位置付けは、長い歴史の中ですでに明確になっています。それには従来からある技術をバックボーンとして、定期的な商品提案が行われる必要があります。また我々販売部門は新たな市場ニーズをつかんでいく役割も担っていますから、なるべく近い組織に企画部門を置いた方が流れがスムーズという側面もあるわけです。自分たちで企画したからには、責任をもって売るという組織になってきます。すでに着目されているネットワークオーディオもまさしくそのひとつですし、関連したシアター、システム、ヘッドホンにしてもさらに重要な位置付けになってくると思います。

── お店とのコミュニケーションは、実際に訪ねて会うということが基本。そこで一緒にやっていこうという思いが強くなります。

本田 メーカーとして商品のもつ意味合い、ベネフィットをきちんと提案していかなくてはいけません。営業の基本的な行動パターンは延々と変わることはないですね。営業としての基本業務は何かを徹底して営業現場に伝え、ブランドの発展こそが私の責任と思っています。同時に音の、そして音楽の楽しみを追求するオーディオメーカー営業としての使命感を、営業に伝えていかなくてはならないと思っています。

デノンコンシューマーマーケティング時代から、営業の基本的な活動というものを決めて、あるべき営業活動にどれだけ近づけられるかということをやってきました。泥臭い営業スタイルもありますが、基本的な部分は変わらないと思っています。しかし基本的なことができていないのはよくあることなのです。

セールスマンの活動自体、即効的に数字では表しきれないところがありますね。メーカーはご販売店様を介してエンドユーザーの方々とコミュニケートするわけですから、ご販売店様とは十分にコミュニケーションをとり、よりよい訴求手法を絶え間なく追求する必要があります。

ご販売店の皆様方が、少しでも多くのユーザーの方々にオーディオの良さを伝えたいと思い行って来たような啓蒙活動や異業種とのコラボレーションが今の時代でも非常に重要であり、新たな訴求活動を加え情熱をもってご販売店様と取り組むことが販売組織のポイントだと考えています。

今年後半が飛躍の鍵
販売店と一緒に拡げる

── 商品の流れはPCネットワークオーディオも、新しいところではスマートハウスの分野にも広がっていくと思います。またスマートフォンも広がっていますが、この音についてもまだまだ発展途上です。要素はたくさんありますね。

本田 デノンの100周年事業で「デノンと私」という投稿サイトを開設したところ、1000名近い方々の投稿がありました。読んでいますと、昔オーディオを楽しんでいたものの忙しくて暇がなくなり全く聴いていなかったけれど、またあるきっかけで最近聴き始めたという方がたくさんいらっしゃいました。

大変貴重なユーザーの声ですが、この投稿は自分やその周辺でオーディオに少しは接していたユーザーの言葉であり、如何にオーディオを知らないままに過ごされている方が多いか、知っていてもきっかけもないままに過ごされている方が多いかということを感じました。

またせっかく芽が出てきたネットワークオーディオにおいても、新たな提案商品として理解するのに時間がかかるアイテムも少なくありません。少なくとも我々がそこにきっかけとわかりやすさを提供していかないと、オーディオの活性化はないと考えます。今後オーディオは大きく成長する可能性がありますが、そのためにも今年度の位置付けは非常に重要だと思っています。この1年間でやっておくことが、来年度以降に跳ね返ってくると思っています。

地デジ化で映像関係中心の訴求は一段落し、次の新たな訴求を考えておられる皆様と我々はどれだけ一緒にコーナーづくりができるか。ネットワーク機能ではこれをいかにわかりやすく訴求できるか、PC関連ではいかに最良の音質で簡単に再生できるか、ユーザーの立場に立った訴求が課題です。

まずは我々自身複数ブランドの優位性を認識しつつ、販売店の皆様と一緒に勉強・マスターし、イベントも含めたベストな訴求活動をしていきたいと思います。そして私たちの活動を通して次の商品戦略でも必要なポイントを今のうちから検証しつつ、来年度に向けて形にし、販売店の皆様に還元していくことが必須の活動であると思っています。

さらにハイファイ系のコアのお客様も、きちんとサポートしていかなくてはなりません。震災の影響で当社の白河工場も大変厳しい状況におかれましたが、ようやく先月後半から現場の要望に応えられる生産体制となりました。ご要望にお応えできなかった期間、お客様が離れてしまうのではないかという危惧もありましたが、まったくそんなことはなかったばかりか、励ましや以前にもましてのサポートをいただきました。デノンブランド、マランツブランドをお客様が待っていてくださったということなのですね。大変ありがたく、我々の事業の根幹の部分を支えていただけるということであり、気を引き締めて継続しなくてはならないと思います。

オーディオは厳しい環境が続いてきましたが、もう完全に底は打ち、これからは上がるだけ。それに対しては我々がちゃんとした考え方とノウハウをもち、ご販売店様と一緒に売り場づくりを行い、イベント、その他の試聴機会をことあるごとに設け執り行っていく。基本的なことですがこれをいかにできるかということですね。やることは山ほどありますが、楽しい世界です。これからも積極的にやって参りますので、ぜひご期待いただきたいと思います。

◆PROFILE◆

本田統久氏 Motohisa Honda
1957年生まれ。1982年日本コロムビア(株)入社。1996年販売企画部 コンポ担当主幹。2001年東京中央電機営業所所長。2006年(株)デノンコンシューマーマーケティング 営業本部 営業部部長。2007年営業本部 本部長。2009年同社代表取締役就任。2011年(株)マランツコンシューマーマーケティング代表取締役就任(兼務)、2011年7月(株)ディーアンドエムホールディングス国内営業本部本部長に就任。

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