村沢圧司氏

あふれる前向きな気持ちと自信
東芝だからこんな凄いことができる!
(株)東芝
ビジュアルプロダクツ社 映像第一事業部 事業部長
村沢圧司氏
Atsushi Murasawa

超ド級の衝撃を市場にもたらしたCELLレグザに続き、「グラスレス3Dテレビ」「クラウド構想」を発表し、テレビの視聴スタイルに革命を巻き起こす東芝。優れた技術力を提案力あふれる商品に、商品を自信に変える正のスパイラルは、けん引役としてのチャレンジ意欲をますます掻き立てる。テレビの付加価値市場創造へ挑む、新しい年に対する意気込みを、村沢圧司事業部長に聞く。

 

テレビの新しい価値の認識には
映像感動体験の提供が不可欠

テレビを変える
CELLのDNA

── エコポイントと地デジ化による特需に沸いた、2010年の国内テレビ市場を振り返っていただけますか。

村沢 エコポイント半減前の11月には、対前年比で5倍以上という盛り上がりになりました。われわれもある程度の予想はしていましたが、それをはるかに上回るレベルとなりました。12月からはエコポイントが半減になり、さらに年明けからはリサイクルのみの対象と内容が変わっていく中で、どのような影響を与えるのか十分に状況を把握しながら、7月のアナログ停波を見据え、お客様やご販売店に対してご迷惑がかからないよう、対応していきたいと思います。

── メーカーを問わず、2カ月待ち、3カ月待ちといった商品も珍しくないようですね。

村沢 私どもでも12月から11月へ、1月から12月へと相当な生産の前倒しを行ってきていますが、それでも供給が追い付かないのが現状です。

── 2011年はこれまで以上に、テレビの付加価値の啓発へ、業界をあげて取り組んでいく必要も高まってくると思われます。現在、その最先端の可能性を具現化し、象徴となっている商品が、御社のCELLレグザだと思います。夏に発表された第2弾では、価格とサイズのバリエーションも広がりました。

村沢 これから新しくテレビを購入されるにあたり、「今、一番いいテレビが欲しい」と希望されて購入されるお客様や、薄型テレビが出た当初に高額でお買い求めになられた方が、買い替えでお求めになるケースも見られます。また、専門店および、そのお客様であるマニアの方から非常に高い評価をいただくなど、幅広い層からの支持を集めています。

── BDレコーダーも新たにレグザ≠フ名を冠し、AVファン待望のRDシリーズも登場となりました。御社はテレビへの録画機能搭載を早くから提案されてきました。BDレコーダーに対しては、どのような棲み分け、提案を展開されていくお考えですか。

村沢 テレビに録画≠ニいうコンセプトで、テレビへのHDD内蔵や外付けUSB HDDへの対応をひとつの特色として訴えてきました。「気軽に、手軽に録画をして楽しみたい」というお客様にとっては、やはり、テレビのリモコンひとつで録画までできることは、非常に大きなメリットになります。一方では、BDに残したり、編集して楽しみたいなど、用途の違ったお客様もたくさんいらっしゃいます。これからBDソフトも増えていきますから、自ずと再生する機会も拡大していくでしょう。我々としては、このように色々な用途やニーズにお応えしていくためには、どちらかひとつがいいというのではなく、両面から提案していくことが必要だと考えています。

── 3D対応のレグザも満を持しての投入となりました。じっくり構えた分、「ここは!」というアピールポイントが数多く備わっているのではないでしょうか。

村沢 3D対応には、CELLレグザ2シリーズとレグザ2シリーズの計4シリーズを揃えました。市場からの高い期待に応えたCELLレグザの2シリーズはもちろん、レグザ「ZG1シリーズ」でも、4倍速240HzのLED液晶パネルを採用するなど、通常の2Dの映像としても最高レベルの画質を実現しています。

CELLのパワーを使い、色々なことができますので、CELLの中にはいろいろなソフトウェアが書き込まれていきます。そして、それがこなれてくることで、次の世代のCELL以外のチップにも展開することができる。これがわれわれのビジネスモデルであり、強みです。例えば、CELLレグザで実現した高いレベルの2D─3D変換の一部をZG1シリーズにも盛り込んでいることが、ひとつの特色になっています。

── CELLレグザがF1カーだとすれば、その技術がどんどん大衆車のレベルにまで活かされていくということですね。

村沢 CELLレグザは一番いいテレビ、市販しているF1カーとして、考え得る新しい機能や技術をいち早く搭載していきたいと思っています。その答えのひとつとも言えるのが、12月に発売開始した20インチのグラスレス3Dレグザです。CELLのチップを使い、どんどん新しい提案を行っていく。と同時に、いいものは普及モデルにも展開していく。そのスピードが大切だと考えています。

── CELLのアドバンテージはいつ頃まであるのでしょう。

村沢 グラフィックに圧倒的に強いとか、演算速度が速いといった特長を備えていますが、それが3年、5年と優位が続くわけではありません。CELLでどこまでやるか、CELLの次をどうするのかは、社内においても大きな議論のテーマであり、次のチップ、次のエンジンというものはもちろん考えています。

── 3Dテレビでは、コンテンツ不足が指摘される中で、先ほどもお話に出た2D─3D変換は非常に有意義な機能だと思います。ただ、3D市場を育てていくという観点から、単に飛び出せばいいというものではない。御社の2D─3D変換機能は大変、高い評価を集めていますが、その考え方についてお聞かせいただけますか。

村沢 飛び出して見えるというのは、見た目には3D感はあるのですが、われわれはテレビは家の中で長時間見ていただくものであるとまず考えています。奇をてらった、いかにも3Dですというものより、これまで実現できなかった深みのある映像を、3Dで実現できることに大きな意味がある。そうしたリアル感のある3D、いわば奥行き感≠ノ技術的には大変こだわっています。何より、きちんとふつうに見られるテレビでありたいと思っています。これからのテレビの技術を考えると、様々な認識技術が大事になってきます。3Dにしても新しい世界ですし、まだまだ色々な技術の進化の余地があると思います。

率先して提案する
テレビの新しい価値

── 目に負担をかけないという意味から、グラスレス3Dの待望論がありますが、まず第1弾として御社が市場投入されました。画面サイズも値段も、購入いただくまでにはいろいろな提案がまだまだ必要な段階ですね。

村沢 CEATECでも多くの方から高い評価をいただきました。まずは、こんな技術の可能性があるのだということを、一人でも多くの方に実際に見て、ご確認いただきたいと思います。販売面からは決して誰にでも手が出る商品ではありませんから、どういったお客様にご理解、ご購入いただけるのか。次のステップを考えていきたいと思います。

── グラスレス3Dテレビとともに、テレビの2つのイノベーションとして、クラウドテレビの構想を発表されました。機能としては、今実現できるユーザーフレンドリーなところからスタートされた印象ですが、今後、いろいろな展開が期待されます。とりわけ、テレビ特需後には、改めてテレビの個性やその説明が重要になってくると思います。

村沢圧司氏村沢 まず、感動的にキレイであることは、テレビの値段に関わらず当たり前のこと。東芝の変わらぬひとつのポリシーであり、これからもずっとこだわり続けていきます。それに加えて、お客様に価値としてご理解いただけるような新しいテレビの使い方についても、もっと積極的に提案していきたいと思います。

クラウドもそのひとつの答えです。テレビはこれまで、家の中という閉ざされた空間にありました。しかし、クラウドを介することで、家庭内のネットワークだけでなく、いろいろな方と情報をシェアできるなど、使い方が無限大に広がっていきます。特に、東芝はパソコン事業が強いですから、パソコンが考えるクラウドの構想と、テレビが考えるクラウドの構想、それぞれのソフトウェアや技術を共有しながら、新しいテレビの未来をどこよりも早く提案、展開させていただけると自負しています。

3Dやネットワーク、クラウドといった新しいテーマについては、「メーカーにはこんな凄い技術があります」という押しつけのかたちではなく、お客様にどういうものであるかをきちんとご理解いただいた上で、新しい映像の世界を体験していただくことが不可欠になると考えています。そのためには、メーカーと流通が一緒になった店頭づくりにもより一層力を入れていかなければなりません。

── レグザの新しいテレビCMもスタートしました。3Dを意識させる奥行き感≠る内容ですが、店頭では3Dの売り場づくりやその実績には温度差がありますね。

村沢 3Dについては試行錯誤がまだまだ続きます。しかし、テレビを今、買われる方は、それを6年、7年と使い続けるわけです。これから数年後には、放送やパッケージメディアにも3Dが物凄く広がる可能性がある。その時、テレビをすぐに買い替えるわけにはいきませんから、今日か明日かではないけれど、将来的には3Dのテレビを買っておけば、長く安心してお使いいただけますというご提案を行っていきたいと思います。

── DVDの登場以降、東芝のAVは大きく変わったとも言われます。それは、いろいろな面で市場や技術をリードされる立場になられたこと。その背景には、どのような変化があったのでしょうか。

村沢 第1に、組織としてテレビとDVDがひとつの事業部になったこと。例えば、DVDレコーダーのRDシリーズでやってきたことが、テレビのクラウド構想にも展開できる。そうした相乗効果がかなりあります。お客様にとっても、ブランドをヴァルディアからレグザに統一したことは、大変わかりやすかったのではないかと思います。

2つ目は、気持ちが前向きになったこと。この先に何が起こるのだろうではなく、次はこうなる、こういうことができるというように、社内の風土が変わってきました。皆が自信をもって、東芝だからこんな凄いことができる、面白いことができると思うようになってきました。

3つ目は、技術を商品にする力です。技術があるだけではダメなのですね。優れた技術があるのなら、それをまず商品にする。そして、世の中の人にお見せして買っていただく。買ったいただくためには、どうやって売るのか、ということです。これまでの技術オリエンテッドな会社から、マーケットオリエンテッドな会社にどんどん変わってきている途中にあると認識しています。

── 御社に対する期待もますます高まります。

村沢 楽しい商品を出さないと単価アップにもなりません。安い商品ももちろん必要ですが、その一方で、もっと楽しくて夢がある、少し余計にお金を出してでも買いたいと思っていただける商品をつくっていかなければなりません。CELLレグザやグラスレス3Dレグザと同様に、東芝はこれからも、新しいことに率先してチャレンジするメーカーでありたいし、日本で一番元気なメーカーでいたいと思います。世界初、日本初にどんどん、チャレンジしていきたいですね。

次をどうするかと聞かれたら、自転車をこぎ続けるしかありません。休んだらおしまい、満足したらおしまいですからね。大変なビジネスではありますが、やっていて非常に楽しい。先頭に立ち、これからも元気にやっていきたいと思います。

◆PROFILE◆

村沢圧司氏 Atsushi Murasawa
1962年3月16日生まれ。東京都出身。1984年 東芝入社。入社以来26年にわたり、テレビ、ビデオを中心とした映像商品の営業、マーケティングに携わる。海外5ヵ国14年間の勤務を経て、2010年4月に帰国、ビジュアルマーケティング事業部長に就任する。より一層地域に密着した生産・販売・技術体制に縦串を通した同年10月の組織変更に伴い、日、米、欧の3エリアを統括する映像第一事業部の責任者となり、現在に至る。趣味はゴルフ。

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