巻頭言

負からの脱出

和田光征
WADA KOHSEI

世界同時不況から1年を経て、今まさに年末商戦の只中である。エコポイントに後押しされてテレビは相変わらず絶好調であり、テレビほどではなくともエコポイント対象の省エネ家電も健闘して、流通の決算も上方修正が目立ち始めた。一方では価格破壊が極端に進んでいて、その影響もありメーカーは金額ベースで利がとれていないのが実情である。年末商戦の結果において三月決算の明暗が決まるだろうが、いずれにしても大変な1年であった。

企業経営にとって、また家計等にとってもその影響は容赦のない厳しいものだった。存在し続けるための手を早め早めに打っても破壊されていく、そんな一年であり、マクロ的には経済もプラスに転じたといってもミクロ的にはその実感が沸いてこない。いかに存在し続けていくか、とりわけ中小企業の経営の舵取りの難しさは続く。

世界同時不況はまた政治体制を変える結果となった。

アメリカは昨年11月4日に第44代大統領バラク・オバマ氏を選出し、体制をCHANGEさせた。ブッシュ時代の一国主義、市場原理主義の悪夢から解き放ち国民本位の強い民主主義国家へ、繁栄を復興し平和の大義を進める国へとCHANGEし、1年を経た今世界のムードも様変わりしてきた。

日本ではアメリカの民主革命と連動した形で暑い夏、政権交代が行われた。それも政権党の中のたらい回しにされた総理大臣ではなく、選挙によって選ばれた総理大臣の誕生であり、これを革命と言っても過言ではないだろう。鳩山総理は「日本は140年前、明治維新という一大変革を成し遂げた国であり、無血の鳩山内閣は平成維新である。官僚依存から国民への大政奉還であり、中央集権から地域現場主義へ、島国から海洋国への国のかたちの変革を遂行する」と語っている。

「人は他人のために存在する。何よりもまず、その人の笑顔や喜びがそのまま自分の幸せである人たちのために。そして共感という絆で結ばれている無数にいる見知らぬ人たちのために」アインシュタイン

友愛の政治を理念として掲げ遂行していくという鳩山内閣、施政方針演説では理念ばかりで具体性がないなどの評もあったが、私はそれで良いと思う。今日まで余りにも理念がない内閣ばかりだったからである。

世の中をCHANGEさせる革命内閣は、まずもって理念を明確に国家観をしっかり指し示し、具体的に実行して欲しい。

オバマ大統領も鳩山総理大臣も当面は前政権の負の部分と対峙させ、理念に勝った政策を実行し、成果を出していかなければならない。あの事業仕分けの映像、本当に様変わりだな、変わっていくなと思ったのは私だけではないはずである。

幸い省エネ家電のエコポイントの継続も決まった。住宅エコポイントの案も浮上して来た。業界にとっては追い風だが、価格破壊が過激で利をとれない。利益ある商売に徹して民需の活性化を図らなければ、真の浮揚にはつながらないだろう。

ENGLISH