岡田守行氏

より大画面、より高画質、
より高音質へ価値訴求する
シャープ(株)
執行役員 国内営業本部長 兼 ブランド戦略推進本部長
岡田守行氏
Moriyuki Okada

「亀山ブランド」のもとで、高画質、省エネに加え、ネットワーク対応といった新たな付加価値を打ち出すAQUOS。原点に立ち返り、商品力を強化するとともに、レコーダー、シアターラックなどのラインナップも充実。国内テレビ市場を大きく後押しするエコポイント制度もスタート、追い風に乗り、勢いづく夏商戦に向けて、同社の岡田本部長に話を伺った。

亀山ブランドを国内市場で
さらに強く打ち出していく

経済不況の激動で
得られた気づき

── 岡田さんが本部長になられて1年が経過しましたが、この間に大きな環境の変化がありました。

岡田氏岡田 この1年間は、試行錯誤を繰り返しながら、学ぶべきこともたくさんありました。特に、世の中の変化のスピードを先取りし、タイミングよく手を打つことには苦労していますが、今後も、失敗を恐れず、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

エコポイント制度がスタートし、販売に携わっておられる方々が非常に元気になられました。対象商品の売上げは、前同比もアップし、好調に推移しています。メーカーもご販売店様も、皆が喜べる結果につなげていくことを目指して、夏商戦に臨んでいます。

ヨットレースに例えると、風は皆に平等に吹いてくれますが、良い結果に結び付けるには、日頃からの練習、風をつかまえる技術、先を読む力、クルー一人一人の技量などが大きく影響するだろうと思います。私達としては、いろいろな角度から厳しくチェックし、良い結果が残せるよう取り組みます。

── 昨年アメリカのサブプライムローン問題に端を発した経済不況の中で、年末商戦は各社とも非常に苦しい状況に置かれました。しかし御社は液晶テレビだけでなく、プラズマクラスターイオン関連商品や太陽電池といったカテゴリーで強みを発揮されました。そして今年の夏商戦に向けて主役となるテレビでは、トレンドをリードする強い商品が登場しました。コンセプトも非常にわかりやすいと思います。

岡田AQUOSは豊富なラインナップとサイズバリエーションで、あらゆるお客様のニーズに応えて参りました。しかし、どれを選んだらよいか迷っておられるお客様もいらっしゃいます。そこで、もういちどお客様の声をお聞きし、本当に求められているラインナップに整理し直しました。さらに、お客様への訴求方法や説明話法についても社内で議論を繰り返しました。

6月から発売するDS6シリーズは、そういう中から生まれました。業界トップクラスの省エネ性能を実現するとともに、新開発のエンジンを搭載し、高画質も実現しています。さらに、ネット機能も充実しており、お客様の満足度を高める「ベストバランスモデル」として提案して参ります。お客様に対しては、「感動」と「インパクト」をキーワードに、これらの機能を訴求していくつもりです。

今年の10月には、第10世代のマザーガラスを採用した堺工場が稼働します。堺コンビナートに結集した関連企業様との連携を深め、21世紀型の垂直統合型事業を展開して参りますが、国内で販売するAQUOSについては、今後も「亀山ブランド」をしっかりと貫き通していきます。「亀山ブランド」は、安心と信頼の象徴として、皆様より高いご支持をいただいており、お客様としっかりコミュニケーションしていきたいと考えています。

AQUOSは当初より、リビングテレビとして提案させていただいたこともあり、主にファミリー層を中心にユーザーを拡大して参りました。これからは若年層も含め、すべてのお客様にご支持をいただけるよう、提案活動を強化していきます。

テレビは変わった
その魅力を大いに訴求

── この夏の薄型テレビは、「省エネ」「高画質」「録画機能」「ネット機能」といったポイントがはっきりと打ち出されており、テレビの新しいトレンドがお客様に伝わります。また、「エコポイント制度」を利用すれば、例えば、40インチのテレビも従来の32インチ程度の価格で購入できるケースもあります。
全く新しい付加価値を持つ薄型テレビは、今まさにすべてのお客様がその恩恵を享受できるタイミングだといえます。さらに、大画面時代の本格的な到来で、映像に加え、音への関心も高まってくるはずです。つまり、薄型テレビを核にしたホームシアターシステムを訴求するチャンスでもあると思います。テレビの中身そのものも変わって、お薦めする要素も多岐にわたっているのですから、店頭の売り方も変えなければなりません。

岡田昨年末から年始にかけて、お会いする方々に、『お客様の節約指向が強くなり、家庭内のものへと指向が移っていく』『家の中で楽しむ大画面、ホームシアターの動きが顕在化してくる』、また不景気への対応として『その時に備える消費』と話をさせていただいたのですが、これは今こそ必要なことだと改めて感じています。

「エコポイント制度」により、より大画面、より高画質、より高音質の方向へ進むよう、業界を挙げて努力していきたいと思います。ご販売店様にもご協力いただき、積極的な情報発信をしていかなければなりません。世の中の流れを絶好の販売チャンスに変えていく必要があります。価格だけではなく、より良いものをお薦めしてお客様の満足度を高め、成果を出していかなければなりません。

先ほども申し上げましたが、6月より、AQUOSの「DS6」シリーズを発売しました。原点に戻り、画作りと省エネを両立させたうえ、ネットワークにも対応した新製品です。

機能的には欲張っているかもしれませんが、AQUOSに求められている機能を、お客様の視点で考え、必要な機能を搭載しました。メーカー側からの技術の主張ではなく、原点に立ち返り、お客様がテレビに対して今一番お求めになっている要素は何かということに徹して商品化しました。「DS6」シリーズは、省エネ性能と機能の充実を両立した「ベストバランスモデル」であり、上位機種にも見劣りしないスペックを搭載しており、夏商戦の主力モデルと位置付けています。

また昨年末からブルーレイ内蔵の「DX」シリーズを発売しております。昨年の夏商戦には無かった新規商材という考え方で、売上げの純増を目指すとともに、単価アップにもつなげていきたいと思っています。

「DX」シリーズは使い勝手のよさを店頭できちんとお伝えいただけるよう、今後も継続して販促に力を入れていきます。

──  「DX」シリーズは今年、20型モデルも新たに投入され、パーソナルユースへも用途がさらに広がります。またこのシリーズがテレビ売り場に置かれることによってブルーレイの認知度が一気に高まり、それは据え置きのレコーダーにも広がっていきますね。

岡田氏岡田「DX」シリーズは昨年の発売当初から、予想以上にパーソナルユースへのニーズが大きく、実際、寝室やパーソナルルームでご使用いただいているケースが非常に多いと聞いております。今回20インチをラインナップに加え、今まで以上に幅広い用途での提案活動に力を入れて参ります。

「DX」シリーズは、録画機能搭載という新しいカテゴリーの中で、HDDではなく、ディスクで記録することを提案しております。テレビとBDが一体化したことにより、配線の手間が省け、操作性も格段によくなります。また、ディスクは実際に見ながら扱えるメディアなので、安心感もありますし、ディスクを入れ替えることにより、自分専用の映像ライブラリーも作れます。さらに、録画したディスクを部屋から部屋へ、人から人へとコンテンツの橋渡しができるといった使い方もできます。こういう特長を全てのお客様にお伝えしていくよう取り組んで参ります。

昨年11月の発売当初は、社内でも据え置きのレコーダーと競合するのではという懸念がありましたが、その心配は杞憂に終わりました。テレビのお客様とレコーダーのお客様の両方に、予想以上の相乗効果がありました。中には、「DX」シリーズと据え置きレコーダーの両方を購入されたお客様もいらっしゃいました。本当にありがたいことだと思っています。

私達は以前より、お客様に対しては、大画面へのシフトアップ、ブルーレイやシアターラックとのシステムアップを提案しております。そして、ご販売店様には、インチアップ、ランクアップによる単価アップの提案をさせていただいております。このような提案を今後とも継続し、「エコポイント制度」の追い風に乗り遅れないよう、さらに磨きをかけていかなくてはなりません。

── これだけ技術が進化しますと、各社のテレビの違いはお客様にとって判断がつきにくいかもしれません。だからこそ、店頭での言葉が功を奏するのですね。

店頭で重要視したい
単価アップのためのひと声

岡田そこを伝えられるかどうか、店頭でどういう提案をしていくのかが勝負だと考えています。省エネ性能についても、たとえば自社の新旧モデルで店頭比較などしますときちんとお客様に伝わります。

AQUOSは「明るさセンサー」や「無信号電源オフ」「無操作電源オフ」といった省エネ機能を搭載しており、店頭でもきちんと説明させていただいています。そもそも「液晶だから省エネ」ということをAQUOS第1号機の発売当初からお伝えして参りました。今後とも、ご販売店様のご協力をいただきながら、継続してお伝えしていくつもりです。

昨今、お客様は店頭で商品を見ながら購入されるのではなく、ネット等の情報だけで商品をお選びになられるケースが増えていると思います。お客様には、是非、店頭でテレビの様々な機能をご覧いただいた上で、画面サイズの違いや高画質エンジンの実力を実感していただきたいと思っています。

また、お客様が予め、購入機種を決められて店頭に来られますと、どうしても価格主導の買い方、売り方になってしまいがちです。しかしそれだけでは、販売はできても、お客様に本当の満足をご提供することにはなりません。

やはりこだわりを強く持って、お客様に訴求することが大切です。店頭では手間がかかるかもしれませんが、結果としてお客様に喜んでいただける買い物になるはずです。このような活動をさらに強化し、ご販売店様と一緒に取り組んでいきたいと強く考えています。

── 夏商戦で弾みをつけ、秋以降、年末商戦まで継続したいですね。

岡田今年の夏商戦は、「エコポイント制度」で盛り上がることは間違いありません。加えて、年末に向けて景気も回復してくるという期待もあります。特にテレビについては、省エネ性能や録画機能、ネット機能など新しい選択基準が注目されていることから、今年はAV商品が主役のまま、年末商戦も盛り上げてくれると考えています。

── その認識をご販売店様もしっかり持っていただければ、時間軸を考えて仕事ができます。夏商戦で一気に売ってしまえばいいというのではなく、年末を見据えたスパンで販売活動をすることが大切です。そういう意味でも、省エネ性能、高画質などの新しい付加価値をしっかり訴求していくことが重要です。そういう売り方ができるご販売店様が、実績を残せるのではと思います。

岡田09上期前半の在庫水準は本当にミニマムなレベルで推移しており、中にはタイトな商品もありました。どれだけ販売し、生産し、在庫を持つかという見極めが難しくなります。販売される方々とのコミュニケーションをしっかりとりながら、先を読んでいかなくてはなりません。

── この夏商戦の勢いが、今期の最重点ポイントとなりますね。

岡田夏商戦は「エコポイント制度」で家電製品への注目度は高まっており、ご来店されるお客様は着実に増えるわけですから、そこでお客様と接する機会も増えます。このチャンスを活かすための売り場作り、提案方法は特に重要です。

お陰さまで、AQUOSは、大変多くのお客様からのご支持をいただいていますが、さらにお客様の期待にお応えするためには、何が必要なのか、何をすべきなのかを常に追求し、勉強していかなくてはなりません。日本で作ったものを日本で買っていただけることは本当に幸せなことです。今後も高いハードルをいくつも越えていくことになりますが、原点の気持ちを忘れずに取り組んで参りたいと考えています。今後とも、ぜひご期待いただきたいと思います。

◆PROFILE◆

岡田守行氏 Moriyuki Okada
1977年シャープ(株)入社。1999年7月シャープエレクトロニクスマーケティング(株)取締役 首都圏統轄本部 第三営業統轄部長に就任。2001年10月専務 首都圏統轄本部長。2002年7月シャープ(株)AVシステム事業本部 オーディオ事業部長。2004年4月シャープエレクトロニクスマーケティング(株)副社長。同年10月同取締役社長。2008年5月にシャープ(株)国内営業本部長。同年6月に執行役員に就任。2009年3月、ブランド戦略推進本部長を兼任、現在に至る。