友則 和寿氏

テレビの楽しみ方が広がり
大きなチャンスとなる今年
ホームシアターを大展開する
ホームシアターとは
夢や感動をもたらすもの
それをお客様に伝えたい
(株)デオデオ
代表取締役社長
友則和寿氏
Kazutoshi Tomonori

家電とインテリア商品などとの総合提案を図るマリーナホップ店をはじめ、提案型の売り場づくりを積極展開するデオデオ。接客力をさらに向上するための「マイスター制」も採り入れ、人づくりにも磨きをかける。未曾有の不況に陥った昨今の環境の中でも、テレビまわりの豊富な話題性を追い風として、ホームシアター訴求に力を入れていくという同社社長の友則和寿氏が、2009年初頭の意気込みを語る。

困難な経済環境の中でも
家電業界には希望が

―― 日本は昨年9月から未曾有の金融危機状態に陥りましたが、デジタル家電は2011年の地上デジタル放送の移行や、ブルーレイの人気などが追い風となっていますし、生活家電も好調です。

友則氏友則確かに今非常に苦しい状況にあり、お客様の財布のひもは固いですが、家電業界は他の業界に比べればまだいい方ではないでしょうか。こういった不況の中でも、家電商品はまだお客様の欲しい商品に挙げられています。

当社では今プラズマクラスターイオン発生機がすごく売れています。これで空気がきれいになると、音がクリーンになるということで、AVファンのお客様の話題になったのです。もうひとつ、スチームとナノイーを発生させるナイトスチーマーナノケアも売れています。こういったいい商品が支えてくれ、おかげさまで11月の当社の既存店の売上はアップしています。

またご存じのとおり、当社ではマリーナホップ店をリフォーム事業も含めた実験店舗としていますが、こういったことを倉敷本店にも応用したところ、最近ご相談の割合が増えています。単価も上がっておりまして、100万円から150万円ほどの物件が決まって来るという状況になってきました。

昨今はブルーレイが非常に好調で、当社でもレコーダーの直近の構成比で81%を占めるまでになりました。テレビでも、46インチ以上が25%、40インチ以上ですと46%となっており、ホームシアターへの追い風となっています。AVアンプなども含め、メーカーさんからは非常にいい商品を出していただいていますし、今からホームシアターは攻める時期とみて期待しています。

―― 昨今の景気の状況をどうご覧になりますか。

友則この不景気は、2〜3年は続くのではないでしょうか。これまでの不況と違って、回復が遅れると見ていますが、こういった状況で、消費者は癒しを求めていると思います。少々の不況ならストレス発散でパチンコ産業が儲かるのだそうですが、今はパチンコ代さえも皆出し渋るほどの不況だということです。また、飲み屋街も閑古鳥が鳴いているようです。そうなると、家にこもってホームシアターを楽しむということがますます提案しやすくなってくるのです。

またメーカーさんが2.1ch、3.1chという私どもが売りやすい商品をつくってくださっており、そういう商品をお客様が一旦使ってくださると、次は5.1ch、7.1chというレベルアップをお考えになるケースも多々あります。当社ではお客様のデータベースを作って、2.1ch、3.1chの商品をお買い上げくださったお客様の記録を残しておりますから、レベルアップの際のお手伝いが的確にできるのです。これは非常にいいビジネスになるのです。

―― こういうときは、お客様といかに確実にお付き合いをするかですね。お客様のご要望に対して的確な対応をすると、財布のひもを固くして陰に潜んでいるお客様も、表に出てきます。こういう時期ですから、私は“動物商法”を主張しているのです。

動物は自らえさを求めてどこへでも行きます。それに対して植物はじっとそこに動かずにいて、環境の変化によって枯れてしまうこともあります。こういう不況の時期だからこそ、お客様を探してお客様の近くまで行けるということが強みになるのです。

友則特に日本のお客様は、財布のひもが固いといってもお金を持っていらっしゃいますし、欲しい商品というのが必ずあるわけで、そこを見誤ってはいけないのです。

マリーナホップで商売をやっていてつくづく感じるのは、やはり人だということです。ホームシアターのニーズのあるお客様に対して的確に届く接客力を身につけなくてはいけないということで、一昨年から映像と音響のメーカーさんにご協力いただき、人づくりに力を注いでいます。お客様は人につきますから、これは急いでやっていかなくてはと思っています。

お客様がホームシアターをおつくりになる際、いろいろな疑問がおありになるわけですが、そこにお応えするにはただハードを売るだけではない色々な知識が必要になります。今年はそれをじっくりやっていこうと思います。

お客様への新たな提案で
ビジネスチャンスを広げる

オーディオについて、私は今提案しようとしていることがあります。単品コンポは根強い人気がありますが、やはりシステムを強化しなくてはならないと思うのです。そこで、音楽配信を採り入れた新しいシステムコンポの提案です。

音楽配信をFM放送と捉え、チューナーの感覚で配信対応の機器を組み込んで、単品コンポのような本格的な音で聴かせるシステムとして、新しいジャンルとして展開するのです。

友則私も大学生の時は、FM放送を聴いてオープンリールのテープデッキに録音したものです。まさにそういうことですね。

―― 音楽配信を含めて、誰もが音楽を手軽に楽しめる、しかもいい音で聴ける、つまりハイコンポの発想ですね。これで1000億円のマーケットをつくることを目指すのです。こういう意気込みでないと、マーケットは活性化しません。

それから、2.1ch、3.1chホームシアターのところで、もっと音楽を聴いてもらうようにしないとなりません。ホームシアターだけでなく、せっかくのシステムなのですからそれで音楽を聴くということを訴求するべきです。

友則氏友則当社でも、名古屋や大阪、そして広島で、ホームシアターのイベントを行う計画があります。ホームシアターのすばらしさは、店舗ではなかなか表現しきれません。このイベントでは、大きなスペースを確保してお客様にアピールしたいと思っています。

そのイベントでは、最上級の7.1chの音を体験していただくコーナーから、6畳の部屋でも展開できるものまで、さまざまなシステムを用意します。そういう中で、おっしゃるような提案も盛り込んで、お客様にはいろいろな体験をしていただきたいですね。

私も自宅のAVルームで7.1chのシステムを組んでいますが、友人たちが来て映画を見せますと皆驚きます。そういう友人の中で、お子さんたちが巣立ったあとの部屋にホームシアターが欲しいという者がいて、私がシステムを組んだことがあります。すると奥様が大変喜んで、私を食事にまでご招待してくださったくらいです。

その友人というのは、なかなか家庭サービスをしないタイプなのですが、ホームシアターを入れてから、奥さんと昔見た映画のソフトを買って来たというのです。それを二人で観て、奥さんが非常に感激されたそうです。

つまり、そういう感動を伝えるということが必要なのですね。お客様に夢を与える、感動を与える、私どもは本当にいい商売をしているのだと思います。我々はこういうことをやっていこうじゃないかと、社員にも言っているのです。

―― 友則さんご自身がホームシアターで味わえる感動を知っていらっしゃるから、説得力がありますね。こういう世相では、家族の重要性がますます問われてきます。ホームシアターは家族の絆を見直すにも、実にいいアイテムですね。

友則そういう意味でも、我々はお役に立てるのだと思います。家族が全員集まって映画を観る、旅行に行けなくとも風景の美しいソフトを観る、そういうことで家庭の絆を強くできると思うのです。

家族で感動を共有できる、そのお手伝いができる非常にいい商売をやらせていただいていると思います。

人づくりに力を注ぎ
ホームシアターを強化

友則先般御社から発売された「ホームシアターファイル」では、「ブルーレイでつくるホームシアター」をテーマにしておられますが、まさにブルーレイからホームシアターの世界が始まると思います。

しかし、お客様には難しいイメージが先行してまだまだ伝わりにくい。だからこそ、店づくりと接客を我々がしっかりとやらなくてはならないのです。私どもでは、小冊子を作成して、昨年末にダウンロードサービスが始まったアクトビラなどもお客様にわかりやすくご説明できるようにしています。

テレビの楽しみ方はこのようにどんどん増えており、大きなチャンスです。アクトビラも実はとても簡単に楽しめるものなのですが、お客様にとっては、どうしたら観られるのか、何を用意してどうつなげばいいのか、わからないのです。私どもでも、テレビコーナーの担当者だけでなく、まわりの者も勉強できるようにしています。

アクトビラもホームシアターも、こんなに素晴らしい世界があるということを、業界としてきちんとお客様に伝えて、もっと需要創造しないといけません。市場は厳しいですが、きちんと対応してプラスにもっていきたいと思います。

私どもでは、半年に一度、項目ごとに社員やパートに対する表彰を行っています。その中でスカパー!売上げトップのパートと話をする機会がありました。

その方は年配のお客様に強いとおっしゃっていて、まず「最近のテレビ、面白くないでしょう」と投げるそうです。そして「スカパー!なら、落語や時代劇など、本当に面白い番組が見られますよ」と。さらに「囲碁や将棋をされますか?」と続けて、最後に「お孫さんが来られたら、ディズニーチャンネルが喜ばれますよ」と押さえて契約に結びつけるというのです。

今、年配の方にとっては地上波テレビの放送が面白くないそうですね。お笑いの番組が多いですが、本当のお笑いが少なくなっていると。ですからNHKオンデマンドのような過去のコンテンツというのも、大きな武器になります。

こういう風にテレビの楽しみが広がっていますから、ホームシアターと光のコンテンツ配信というのは大きい要素です。あとはそれを活かして、しっかりと売れるかどうかです。

―― 家電アドバイザーの資格をとることを社員の方々に推進されているそうですが、成果はいかがですか。

友則最近のお客様は情報に敏感であり、いろいろなものを求めていらっしゃいますから、それにお応えするということで、社員自身も知識を充実させる必要性を大いに感じています。現在では当社の営業社員の約7割を占める1800名以上の社員が資格を取得し、プロ集団をつくっています。ただ、これは第一ステップなのです。これは基本であり当たり前のことで、次のステップである応用編「マイスター制度」を実施しています。

私どももこれまでいろいろなことをやってみましたが、成果というのはなかなか出るものではありません。そこで、当社の店舗で売上がトップクラスの社員に手当てを支給し、講師を任せたのです。今当社の店舗で、年間約7億円を売り上げる社員がいるのですが、彼をマイスターのリーダーとし、各店に出向いて講義をお願いしています。

そのリーダーが若い社員からの質問に答える場面を見ていたことがあるのですが、その内容はちょっとしたことなのです。しかしアドバイスを受けたものは、あっという間に成果を出しているのです。 

こういうことができるものを、次々に増やしていきたいと思いますし、次にはマリーナホップ店のスペシャリストを、ホームシアターのマイスターとして活躍させたいと思っています。ハードも、放送を含めたソフトも環境は整ってきましたから、今年はホームシアターを大々的にやっていきたいですね。

―― 今年のご活躍もますます楽しみです。ありがとうございました。

◆PROFILE◆

友則和寿氏 Kazutoshi Tomonori
1951年2月28日広島県生まれ。74年東京理科大学理学部卒業、同年バローズ株式会社(現日本ユニシス株式会社)に入社、77年富士ゼロックス株式会社入社を経て、82年第一産業株式会社(現株式会社デオデオ)に入社。89年商品事業本部長、90年取締役営業統括本部長。その後、常務取締役・取締役 副社長を経て、03年代表取締役社長に就任、現在に至る。趣味は映画鑑賞、旅行(遺跡巡り)