金賞受賞インタビュー

節目の30周年を迎えて
アキュフェーズの
記念モデルを高く評価

創業当初からの企業理念を頑ななまでに貫き通すアキュフェーズ。
C−2800が金賞を受賞することになった背景には、アナログに対するこだわりと執拗なまでの探究心にほかならない。
受賞モデルの背景について、杉浦社長、齋藤副社長の両氏にうかがった。

アキュフェーズ(株) 代表取締役社長
杉浦浩司

アキュフェーズ(株) 代表取締役副社長
齋藤重正

アキュフェーズ ・プリアンプ
C−2800
1,100,000円

30周年記念モデルが
金賞以下各賞を受賞

 ―― 今回は、金賞の決戦投票をするにあたり、ノミネートされたなかから審査員ひとり一票の投票で決めることとなりました。御社のC―2800は満場一致で金賞を獲得するに至りましたが、これは過去にないことです。

 杉浦 今年は30周年という節目の年を迎え、当社としては非常に意義ある年に3賞はもちろん、特別賞までいただきまして大変感激しております。ありがとうございます。

 金賞をいただきましたC―2800は、創業30周年記念モデルとして開発した、技術の集大成的な意味合いを持った製品です。それを評論家の先生方、流通の皆様方に認めていただけたということは嬉しいですね。やはり、ユーザーのニーズに合った製品を作るという明確な目的を持ってやってきたことが支持されたのではないかと思います。

 ―― デジタルにも強い御社ですが、30周年記念モデルとしてアナログのトップエンドで新製品を投入するというアイデアはいつごろから出てきたものでしょうか。

 齋藤 オーディオのなかのデジタル技術というのは一つの手段であると考えております。デジタルにもアナログにもそれぞれの役割がありますから、あくまでも両方を見据えながら、両方を育てていきたいと考えております。当社はアナログ・プリもデジタル・プリも持っており、それぞれに最高峰のものを作ってゆきたいという思いがあります。ですから、アイデアはいつでも持っていると言いますか、常に模索していると言って良いでしょうね。

 今回の製品は30周年記念モデルということで、過去を集大成し、次なる飛躍を期して数年前から研究してきた技術を投入できた意義は大きいと思います。

 杉浦 アンプ系の中で、音量可変という問題は必然と同時に、永遠的な要素があります。われわれは創業以来、ボリュームにはこだわり続け、多くの開発をしてまいりました。今回は無接点の音量可変に挑戦、AAVA(Accuphase Analog Vari―gain Amplifier)と命名した電子回路方式を開発し、記念モデルに搭載できたことは大きな収穫でした。

 デジタル時代になり、デジタルは必要になりますが、我々はアナログにかなりのスタンスを置いています。そういう中で、最終的にはデジタルではなく、アナログで実現したという意義は大きいと思います。

 齋藤 また、時代はリモコンでのコントロールも求めております。しかし、当社の最高級アナログ・プリでは、求めた音質性能と構造上からリモコン化は不可能でした。今回のボリュームは音質もリモコン操作も同時解決しております。

 ―― このAAVA方式で最もご苦労された点といいますと。

 齋藤 動作原理は、音楽信号を電圧―電流変換器で、16種類の重み付けされた電流に変換、それぞれを16個の電流スイッチによってON/OFF、その組み合わせで音量を決めるというものです。このON/OFF時のノイズ発生を何処まで小さくすることが出来るか、さらには音質面で初体験のことですので、今までのボリュームをはるかに高い次元で超えられるか、最後まで不安で一杯でした。

 ―― このボリュームは他の製品にも採用されていくのでしょうか。

 杉浦 抵抗体を使ったボリュームは新規開発が不可能です。従ってAAVA方式の将来性からも、何とかコストダウンして下位モデルにも採用したいと技術部にプレッシャーを掛けております。

アナログ再生にこだわり
濃い内容を投入し続ける

 ―― 一方でM―8000が銀賞を受賞しました。

 齋藤 パワーアンプは回路的にはかなり完成されておりますので、目立った革新性を出すのは大変難しいコンポーネントです。そんな中でも、M―8000は数々の新規挑戦をした製品で、同じく30周年記念モデルです。先ず見えない部分では温度安定度を極限まで高める設計をしております。音質面にも重要ですが、この製品は2台使いますので、この2台が何処まで温度的なバランスをさせるか、蓄積したノウハウを注入しています。見える部分では入力部に当社独自のMCS(Multiple Circuit Summing―up)回路を採用し、S/N比、歪み率などの諸特性を大幅に向上させました。

 ―― アナログが熟成する一方で、海外ではデジタルの潮流も出てきています。

 齋藤 デジタル・パワーアンプに関しましては、既に何社かが商品化しておりますが、ハイエンド市場ではほとんど成功していないようです。スタートしたばかりの技術で問題山積ではないでしょうか。

 ソースに関しては、日本は一気にCDになりましたが、欧州などではまだまだアナログ・ディスクの存在は大きいようです。当社の製品はオプションでフォノイコライザーを装備することができますが、装着率は日本の3倍にもなっております。ソース対応は当分アナログ、デジタルの両面が続くと思います。

 記念モデルにつきまして、DG―38のような新しいテクノロジーで挑戦する手段もありましたが、やはり、当社のスタートはセパレートアンプからでしたので、30周年記念モデルもアンプの最高峰でと決めました。しかも、過去の製品のマイナーチェンジ的なものでは意味がないと、違いがわかる挑戦をしたつもりです。

 杉浦 今回、我々の先人たちが築き上げてきたブランド力を改めて思い知らされたのは、30周年記念モデルを出すと発表しただけで、音も聴いていなければ、触れてもいないのに注文していただいたお客様が非常に多かったことです。これはブランド力や、期待感といった部分だけでしょうから、こういったものはこれから大切にしていかなければならないと思います。

企業理念に基づいた
モノ作りが生きる

 ―― 御社は1本の線上で製品を作ってきたと思います。お客様を裏切らず、今までの延長線上のものを見せてくれる。

 齋藤 30周年ということで、デザインを大きく変えるという案もありましたが、そうしますとそれに続く製品を一挙に変えなければなりません。大手メーカーさんなら数ヵ月ですべてを変えることができるかもしれませんが、当社では数年かかります。新デザインと現行デザインが混在しても違和感のないことを条件に、変化と新鮮さを求めて作り上げました。

 ―― そして銅賞を受賞したE―530ですが。

 杉浦 50万円もするインテグレーテッドアンプですから、幾分リスクもありましたが、当社にはA―50V、A―20VというA級アンプを搭載したパワーアンプがありますので、この手法を踏襲して作ってみようとスタートしました。私どもが予想しました量の国内で2倍、海外では3倍ほどのニーズがありました。

 齋藤 お客様の選択肢を広げたいという思いがありました。アンプの動作では、理想アンプはA級、効率とハイパワーの追求はAB級でという一般的なセオリーがあります。A級動作のアンプは、パワーよりも質を重視したいというお客様に支持されており、当然インテグレーテッドアンプにあっても良いわけです。しかし、オールインワンという制約がありますから、なかなかニーズが読めない難しさもあり、投入をためらっておりました。E―530は特別に電源を強化し、パワーのヘッドルームも充分確保しており、かなり大型のスピーカーシステムでも余裕を持って駆動することができますので、国内外で予想以上の評価をいただいている次第です。

 もうひとつ銅賞にDP―77を選んでいただきました。新世代のSACDが市場導入された後もCDは根強いものがございます。CD専用のDP―75Vは高い評価をいただいておりましたが、メカの関係で生産中止になってしまいました。そこで、DP―85のメカを使って、SACDのお客様にはよりお求め安い価格で提供し、CDで最高のものをお求めのお客様にも充分満足いただける、という両面から開発したのがDP―77です。

 ―― プレーヤーは難しい状況になっていて、お客様はCDで満足してしまっているところがあると思います。

 杉浦 DP―85は88万円という価格ですから、もう一段下のところに提案していこうという思いがありました。ユーザーは保守的かつ冷静ですが、我々メーカーには新しいマーケットを作らなければならないという使命もあります。

 ―― しかも2chにこだわっている。

 杉浦 我々はSACDでもフロント2chでやっていきます。この2chがしっかりしていれば、リアは必要ないと思っております。お客様からの要望でも「マルチチャンネルのSACDを早くやれ」というものは皆無です。もちろん映像に関しては必然性がありますので、これは必要だと思います。しかし、音楽のマルチチャンネルは録音も含めてまだまだ問題が多いと思います。これらがこなれてきてからでも良いのでは、と考えております。

 ―― DVDオーディオへの対応はどうお考えですか。

 齋藤 これはSACDを選択した時点でないということです。欧州ではアキュフェーズブランドのDVDビデオプレーヤーを熱望する声もありますが、まだテーブルには上がっておりません。

アキュフェーズを求める
シアターユーザーにも対応

 ―― 今回、VX―700が特別賞を獲得していますが、ホームシアターのユーザーもアキュフェーズブランドに興味を持っています。

 齋藤 VX―700はアキュフェーズらしい音が出せるホームシアター用プロセッサーというコンセプトです。内容は、得意とするデジタルプリの技術を注ぎ込んで、徹底的に使い勝手と音にこだわった製品です。

 杉浦 市場のニーズに沿ってのことです。オーディオファンがホームシアターをお考えになるときに、当社のブランドを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。ホームシアターのハイエンドマーケットも、小さいけれども存在するであろうと考えています。ピュアオーディオと同じように、アキュフェーズとして入っていきたいわけです。

 当然音にはこだわっておりまして、完成度が上がれば上がるほど、他社にはない製品に仕上がってきていると思います。発売が遅れてしまい、お客様にはたいへんご迷惑をお掛けしましたが、絶対に満足していただけると思っております。

 ―― どのくらいとお考えですか。

 杉浦 オーディオはグレードアップしていく商品ですが、ホームシアターは大掛かりな導入の後は買い替えも難しいと思いますので、現状ではハイエンドのマーケットもそれほど大きいものではないと思います。

 映像の場合は一度見るだけで得られる情報量も多いと思いますし、感激する度合いも大きいと思いますが、音楽の場合は何度も聴きます。当社としては、その音楽を聴くということが人々の感性を育てると考えておりますので、ビジネスだけにこだわらず、音楽を聴くという文化を啓蒙していきたいと考えています。

 我々はオーディオという趣味の商品を生業としているわけですし、音楽がある限り、それは絶対に続いていくと考えています。創業時に音楽好きが集まって、小さくても良いから存在感のある企業になりたいと考え、これまで歩んできました。そのために、自信を持ってお薦めできる製品を作ってきたつもりです。

 経営者としては、少しでも大きくなった方が良いわけですが、マーケットはそれほど大きくはないと思っております(笑)。

 ―― マーケットは小さくなってきたのに、創業当初から比べれば存在感はどんどん大きくなっている。

 杉浦 今回も特別賞をいただきましたが、この30年を評価していただけたのは本当にうれしいですね。

 ―― 顧客管理はもちろん修理用の部品を保存しておくなど、ユーザーに対するケアの部分も行き届いていることも評価されていると思います。

 齋藤 それしか生きる道がないと思います。宣伝すれば売れるというものでもないですから。結局、購入していただいたお客様が、また次のモデルを購入していただけるか、あるいは他のお客様に薦めていただけるかという部分が大きいわけですから、お客様を裏切ることはできません。お客様の声が天の声です。

 ―― 当社のオーディオ銘機賞も御社に支えられているようなところがあると思います。

 杉浦 審査員に流通の方々がいらっしゃいますので、我々にとっても心強いものがあります。

 ―― 銘機賞に選ばれたモデルはヒット商品になっています。

 齋藤 流通の方からすれば、売れそうにないものを推薦するわけにはいかないでしょうから、こういう賞をいただけることは大変光栄なことです。

 杉浦 やはり賞をいただくと我々の励みになります。この賞をいただいたことを糧とし、今後もお客様のニーズにお応えすべく、モノ作りに励んでいきたいと思います。御社のご支援と関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

三賞・特別賞受賞モデル

オーディオ銘機賞 デジタルプレーヤー 銅賞
DP-77
600,000円

オーディオ銘機賞 メインアンプ 銀賞
M-8000
1,100,000円

ビジュアルグランプリ開発賞 AVプリアンプ 特別賞
VX-700

オーディオ銘機賞 プリメインアンプ 銅賞
E-530
500,000円