ネイティブコントラスト10万対1を実現したD-ILAプレミアムモデル

自宅のプロジェクターをDLA-X9に変えてから約2ヶ月、特別仕様モデルならではの深みのある表現力が少しずつその全貌を現し始めた。ネイティブで10 万対1という、未踏の高コントラスト性能がもたらす効果は予想以上に大きく、DLA-X7をさらに上回る漆黒表現の威力が明らかになりつつある。

特別仕様とは言っても、X7との違いは心臓部のD-ILAデバイスとワイヤーグリッドなど、光学系パーツの性能差に絞られるという。ある確率で量産工程に出現する高性能部品を抽出して組み合わせ、精密な調整作業を経て仕上げる。厳選したデバイスと手作業に近い繊細な作業を組み合わせることにより、画質に違いが生まれるのだという。

出画までの時間は数分だが、私は電源投入後15分程度待ってから見始めることが多い。その方が色バランスが安定し、本来の性能を発揮できるように思われるからだ。

2D作品はフィルム、シネマ、ステージの3つのモードを主に使い分けているが、本機ではそれぞれのモードでカラープロファイルを作品ごとに選択する楽しみが増えた。特にフィルムモードでカラープロファイルを切り替えると作品の印象が一変するケースがあり、興味深い。ピタリとはまるときもあれば、そうでないこともあるが、最近見たBDでは『バグダッド・カフェ』を「フィルム1（コダック）」で見たときのモハーヴェ砂漠の色調がとても良かった。
　
これからは、見慣れた作品を本機でもう一度見直す作業がしばらくは終わりそうもない。フィルムメーカーはほぼ想像がつくが、IMDbなど映画データベースで探せば大半の作品はオリジナルが確認でき、参考になる。

3D映像を自宅で体験するのは本機が初めてだが、やはり本機の3D映像（3Dモード）は期待通りの明るさがあり、満足度は非常に高い。3Dの映像で臨場感を実感するためには、単に明るいだけではなく、十分に引き締まった黒再現をベースに高いコントラストを実現していることが不可欠だ。本機の3D映像が、鮮明なフォーカス感と同時に質感豊かな立体描写を実現できているのは、黒とハイライトの対比をしっかり確保できていることが大きな理由とみて間違いないだろう。

『アバター』の3D映像は劇場も含めていろいろな環境で体験し、それぞれ長所・短所を確認済みだ。その体験と比べてみると、自宅の環境でDLA-X9が映し出す3D映像の立体感と質感の高さが、他のディスプレイやプロジェクターを大きく上回っていることがわかる。これからの楽しみは、『アバター』を超える 3D作品の登場と、それを劇場と自宅の上映環境で見比べることである。

（text：山之内 正）