| ウィーンアコースティックからT-3の流れを汲む新しいトールボーイ型スピーカーが到着した。オーストリアでの愛称は「ベートーヴェン」。ウィーンと最もつながりの深い作曲家の名前を用いていることからも、この製品の重要性がうかがわれる。
ユニット構成は5ユニットの3ウェイで、ユニットの強化に対応して、板厚を増すなど、キャビネットも構造的に大幅に強化された。
ウーファーは独自の「XPP」コーンを採用したスパイダーコーンユニットを3個使用し、実効振動板面積を拡大して低域のダイナミックレンジ改善を図る。TPXとポリプロピレン化合物を振動板「X3P」に用いた新規開発のミッドレンジユニット、そしてウィーンアコースティックとスキャンスピークが共同開発した新ドームトゥイーターで構成される。ネットワークも回路基板や配線材を一新してレスポンスの改善を狙ったという。
T-3Gのグリルには構造的に大きな特徴があり、メーカーでは装着したままで聴くことを推奨している。ディフューザーを各ユニット前方のフレーム中央部分に設けて、音の拡散効果を提供し、音場再現力を改善するというのが、その秘密だ。その効果を最終的な音質調整に利用することもできる。フレームの素材にはアルミを採用して共振の発生を抑えている。従来は副作用が指摘されることが多かったグリルを、積極的な音質改善に利用した例として興味深い。ベースは前後独立した構造で、大型スパイクが付属し、設置の安定度は非常に高い。
再生音は従来モデルのエッセンスを受け継ぎ、柔らかい音色の木管楽器、艶やかで潤いを感じさせる弦楽器など、オーケストラの響きにいい意味での個性を感じさせる。弦楽器のピチカートやホルンのアタックなど、音の立ち上がりが従来以上にスピード感を増して、レスポンスがよくなっているのは特筆すべき点である。エネルギーバランスは安定した量感のある低域を基調とし、クラシックファンに好まれそうだ。
音場のスケールは、低域ユニットの増強でさらに大きさを増し、大口径ウーファーを搭載したフロア型スピーカーのような存在感がある。
室内楽では弦楽器が倍音領域まで素直に伸びていることを感じさせ、音色がなめらかでよく歌う。ピアノはタッチをもう少し明瞭に引き出して欲しい気がするが、音色は弦楽器とよく溶け合って美しい。どの楽器もビブラートやダイナミクスの表情を忠実に再現するよさがあり、音楽の楽しさを存分に味わえる。
(文:山之内正 「オーディオアクセサリー」116号より転載)
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