デジタル全盛の昨今ではあるが、アナログレコードの持つ音の魅力はいまだ色あせることがない。キャリアの長いオーディオマニアは元より、アナログの魅力に触れて新たにシステムの構築を始めた若い人も少なくないことだろう。

そんな皆さんに、少ない投資で大きな効果を挙げる「次の一歩」をご提案したい。




フォノイコライザーの役割を知る

これからアナログを始められる人のために、フォノイコライザーの役割について少し解説しておこう。 CD や DVD などの出力は一般に LINE 出力と呼ばれ、 200mV くらいの電圧で送信されるのに対し、 PHONO 出力と呼ばれるアナログプレーヤーからの信号は 0.1〜5mV ほどしかなく、それを LINE レベルにまで増幅してやる必要がある。またアナログレコードは、音波の振動をモノラルでは横方向、ステレオでは45゜方向に溝として刻むので、低域のレベルが大きいと溝の振幅が大きくなって正確にトレースできなくなってしまう。そのため、音溝にはあらかじめ RIAA カーブと呼ばれる特性で高域を大きめに、低域を小さめに収録してあり、再生時にそれを復元してやらねばならない。以上の 2 点がフォノイコライザーの役割である。



最近はフォノイコライザーを装備しないプリアンプやプリメインアンプが増えたが、そういうシステムにアナログを付加したい人はもちろん、普及〜中級クラス・プリメインアンプの内蔵フォノイコを使っている人にも、単体フォノイコライザーの導入を薦めたい。前述の通り、とりわけ微小な信号を扱う PHONO 段は、大電力を扱うパワーアンプと同居しながら十分な性能を発揮させるのが難しいからだ。そういう人にぜひお薦めしたい製品がある。オーディオテクニカの新作、 AT-PEQ20 である。

ハイコストパフォーマンス・モデル「AT-PEQ20」を聴いた


フォノイコライザー
AT-PEQ20 ¥26,250


一般に安価な単体フォノイコライザーは、ラジカセやミニコンポでアナログを聴くための“簡易型”といったイメージが拭えないものだが、 AT-PEQ20 はそういった製品群とは一線を画した本格派だ。例えば、安価なフォノイコライザーは MM 型のカートリッジのみに対応するものがほとんどだが、本機は MC 型にも対応してくれる。ただでさえ微小な電気信号を扱う PHONO 段の中でも、 2 〜 5mV くらい出力電圧のある MM に比べて MC は 0.1 〜 0.5mV 程度しかなく、歪みやノイズがわずかでもあるとそれを大きく増幅してしまうので、 MC 対応は大変なのである。

しかも、本機は「ただ MC に対応した」というにとどまらない。さまざまなカートリッジを試してみたが、それぞれの持ち味を実に素直に表現してくれた。この表現力でこの価格とは、にわかに信じられなかったものだ。 一例を挙げると、同社の AT33PTG はハイスピードで高域端まで輝かしく切れ込み、オーケストラや歌曲を実に瑞々しく再現してくれる。これはまさに AT33PTG の、そして MC カートリッジの持ち味そのものである。また、 MM ポジションでは同社の VM 型 AT150MLX を聴いたが、こちらも 150MLX ならではの軽やかで明るい表現で、現代のポップスやフュージョン系を生きいきと再現してくれた。この価格でこれだけの表現力を有するとは、全くもって驚くべき製品である。

フォノイコライザー内蔵のプリメインでも、最近の製品は多くが MM のみの対応となっている。しかし、 MC カートリッジには MM で聴くことのできない魅力があるというのも間違いない。本機は“アナログ上級編”への入り口として、広くお薦めできるものと断言していいだろう。



設置環境に合わせて縦置きでの使用も可能

背面端子部には入力、出力、アース、電源を用意

前面にはMM/MCの切替スイッチを装備

カートリッジの MM/MC の違いとは?

ここでカートリッジの発電方式について少し説明しておこう。 MM(ムービング・マグネット)型は磁石を針先に取り付けて振動させ、近くに置いたコイルに電圧を生じさせるものだ。この方式は一般に出力電圧が大きく、フォノイコにとっては優しい。オーディオテクニカの場合は独自開発の VM 型が MM 型とほぼ同等の出力電圧を発揮する。

MC(ムービング・コイル)型は針にコイルを取り付け、磁石の近くで振動させて電圧を生じさせる。針先はあまり重くできないのでコイルをさほど長く巻くことができず、 MC 型は出力電圧が小さいが、コイルの線長が短い分、鮮度の高い音が得られやすいという傾向もあり、根強いファンが多い。


▽ オーディオテクニカ カートリッジ代表モデル

[MC型]AT33PTG ¥42,000
ロングセラーAT33シリーズのノウハウに最先端の技術を加えた受注生産モデル

[VM型]AT150MLX ¥29,400
MM型と同様に使える、同社独自の「VM型」トップモデル

[MC型]AT33R ¥84,000
AT33シリーズのリファレンスモデル。限定1,000台の本機はヘッドシェルを付属する




回転するレコードの安定化もクオリティアップへの一歩

アナログプレーヤーのターンテーブルに載せられているゴムやフエルトのシートを市販の製品に交換すると、びっくりするくらい音質が向上することがある。オーディオテクニカの AT6278 は、硬質表面処理が施されたアルミの面と防振ゴム「ハネナイト」が埋め込まれた面のリバーシブルで、そしてそれぞれ化繊のシートをターンテーブルとの間に挟み込むことで、さまざまな音質チューニングが可能なところが面白い。

また、スタビライザーも再生音の安定性を大きく高めてくれる。同社の AT6274 は真鍮とハネナイトの複合素材で、これもリバーシブルで音の変化を味わえるのが楽しい。 どちらも魅力的な製品だが、合わせて 1,730g にもなる重量級なので、導入前に必ずお使いのプレーヤーが対応可能かどうかをプレーヤーメーカーに確認してほしい。


▽ オーディオテクニカ ターンテーブルシート、スタビライザーおすすめモデル

ターンテーブルシート
AT6278 ¥OPEN
リバーシブル構造を採用したターンテーブルプレート。付属のソフトシートを使うことでさらに細かな音場調整が可能

これまでの筆者リファレンス。スタビライザーは AT618 、シートは何枚かを使い分けているが、メインの 1 枚が AT677(生産完了)だった。カートリッジはメイン・リファレンスの 1 本として AT33PTG を使用、ヘッドシェルは AT-LH13 である(炭山)

スタビライザー AT6274 とターンテーブルシート AT6278 を導入して、さらにクオリティアップした筆者宅のアナログ。 AT6278 は、わが家ではハネナイトの面を上にするのが好相性だった(炭山)




レコードのメンテナンスも音質改善の基本

アナログレコードは素材がビニール系で静電気を蓄えやすく、とかくホコリを吸い寄せがちのものだから、クリーニングは入念に行いたい。オーディオテクニカの湿式レコードクリーナー AT6012 は、一般的な乾式クリーナーとしての使用に加え、付属のクリーニング液をごく少量滴下することでホコリの吸着力を高め、レコードに帯電防止効果も与えるという優れものだ。個人的にもクリーナーはいろいろ使ったが、これに優る製品はなかった。


▽ オーディオテクニカ クリーナーおすすめモデル

レコードクリニカ
AT6012 ¥1,680
湿式、乾式のどちらでも使える2ウェイ設計のレコードクリーナー

スライスクリーナー

AT607 ¥630
カートリッジの針専用クリーナー。キャップに付いたブラシでクリーニングを行える

レコードクリーナーは AT6012 を長く愛用している。ほかにも何か使っていないかと探したら、水準器も同社の AT615 だった。オーディオテクニカにはずいぶんお世話になっているものである(炭山)

まとめ
アナログはごく小さなアクセサリー 1 つで音質が激変するものだ。オーディオテクニカにはアナログの高音質へ直結するグッズがまだまだ数多くある。また、高音質のフォノイコライザーなどを導入したら、同社のハイ CP オーディオケーブルを導入するのもよいだろう。

 




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